「AppleやSamsungのハイエンドと同じ性能で価格は3分の1以下」というコストパフォーマンスで人気を高めていったXiaomi。同社のビジネスモデルは1年間1モデル、オンライン販売に特化し限定販売で飢餓感を与えるというものだった。しかし今やその手法はすっかり影を潜めている。
中国国内では実店舗展開も行い、家電量販店でもXiaomiのスマートフォンの取り扱いを始めた。またオンラインでも以前なら予約のための特殊なコード番号を取得する必要があり、そのコードが無ければ予約すらできなかった。だがそれも今では不要だ。
スマートフォンの製品もフラッグシップモデル「Mi(小米)」シリーズではなく、より低価格なモデルの「HongMi:RedMi(紅米)」シリーズの展開が中心となっている。2015年に入ってからは「紅米2」「紅米2A」と2モデルを投入。どちらもカラバリ豊かなボディーが特徴のカジュアルな低価格のエントリーモデルだ。しかしこれはXiaomiを追いかけるMeizu(魅族科技)が2014年の年末に発表した低価格なカラバリモデル「M1(魅藍)」シリーズの後追いモデルとも見られており、市場を開拓してきたXiaomiが逆に他社に追従したという印象を受ける。
2015年8月にはその紅米シリーズの大画面モデル「紅米Note2」を発表。プロセッサにMediatek HelioX10、1300万画素カメラ、5.5型フルHDディスプレイを搭載し価格は799元から。低価格モデルとして大きな魅力の製品だが、この価格とスペックは同社のフラッグシップの小米シリーズの潜在客を奪う可能性もある。実際、Xiaomiの売れ筋はすでに1年以上前から小米シリーズではなくなっており、販売数を伸ばしているのは圧倒的に紅米シリーズなのだ。
毎年夏に開催されていたハイエンドモデル、小米シリーズの発表会も今年はキャンセルされた。2014年7月に発表された「小米4」の後継モデル「小米5」は年末に発表されるとうわさされており、その登場は大きく遅れる予定だ。しかもフラッグシップで同社の顔となるべく発売された小米4も、2カ月後の2014年9月にMeizuが発表した「魅族MX4」に価格もスペックも惨敗、人気も急落してしまった。2015年1月には大画面の「小米Note」を発売し、また小米4の価格引き下げも行ったがこれらも後追い感が強い。
一方、海外向けには小米4のプロセッサと外装を変更し価格を下げたマイナーチェンジモデル「Mi4i(小米4i)」を2015年4月に発売した。小米4ではなく4iを投入した背景は、前述した「AppleとSamsungの3分の1の価格」という小米4ですら、中国外では売れないと判断したからだろう。筆者の居住する香港でも小米4iを使っている人を見たことはなく、学生や年配者が紅米シリーズを買っているのをたまに見る程度だ。先進国市場の場合、低価格な紅米なら一定の需要があるが、ハイエンドとなると小米を買うくらいならiPhoneやGalaxyを買う消費者が多いのだ。
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