品川女子学院が英語の自主学習に「AI」導入 その狙いは?(2/2 ページ)

» 2017年06月14日 17時30分 公開
[井上翔ITmedia]
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時代に合わせたことによる「課題」

小池志穂教諭 小池志穂教諭

 先述の通り、品女は積極的にIT教育に取り組んでいる。英語科の指導においても例外ではない。

 同校の英語科主任である小池志穂教諭によると、英語科におけるiPadの活用は、Evernoteで小テストの予定表や過去の小テストを共有するところから始まったという。

 その後、「Quizlet」を使って単語の自主学習環境を構築した。当初は教師が単語カードを作成していたが、途中から生徒が分担して作るように切り替えたという。カードの共有者(生徒)もカードを自由に編集できるというQuizletの利点を生かした形だ。

 現在は、単語帳に合わせたアプリを使って自習環境を構築している。他にもディスカッション授業におけるテーマの事前調査、洋書の多読においてiPadを活用している。

2017年度の取り組みの一部 2017年度は高1で「キクタンBasic 4000」用のアプリを使った単語の自主学習環境を構築。ディスカッション授業のテーマ事前調査もiPadを活用
遠山裕美子教諭 遠山裕美子教諭

 ICT(iPad)導入以外の面でも、品女の英語科は指導方針を時代に合わせて変更している。

 例えば、生徒に受験を推奨する外部検定試験を「TOEIC」から英検と「GTEC」に切り替えた。スピーキング(会話)とライティング(文章作成)といったアウトプット能力を客観的に知るためだ。ネイティブスピーカーの英語に触れる機会を増やすため、英語を母語とする教員の増員、英会話学校の講習やSkypeを活用した「セブ島マンツーマン講習」にも取り組んでいる。

 日本人教師による授業も大きく変えた。従来は私立中高一貫校で導入例の多い検定外教科書「NEW TREASURE」(Z会出版)を使ったインプット主体の授業だったものを、検定教科書にあるスキット(寸劇)を活用したアウトプット主体の授業に切り替えたのだ。

検定変更 スピーキングやライティングといった生徒に受験を推奨する外部検定試験をGTECと英検に切り替えた
ネイティブ拡充 ネイティブスピーカーの英語に接する機会を増やす取り組みも実施
日本人教師による授業も変化 日本人教師による授業もアウトプット主体に

 「アウトプット主体に切り替える」と言うだけなら簡単だ。しかし、課題もある。

 同校の英語科教諭で、国際交流・グローバル教育部長でもある小池志穂教諭によると、英検準2級(高校中級程度)以上の2次試験を受験する希望者に対して個別の面接指導を行っているという。

 しかし、指導に対応できる教師の人数と時間の制約で、各生徒の状況に応じた指導を十分に行えないという問題が発生した。結果、面接指導の対象者全体への告知を控え始め、「生徒側が相談してきた時のみ指導に応じる」という運用にせざるを得なくなってしまった。

面接指導の課題 英検準2級以上の受験者に対する面接指導は、人と時間が足りないという課題を抱えている

 スピーキングの練習をする機会をもっと増やしたい――その方法を検討している中で、ジョイズの井口一真COOと出会い、テラトークの試験導入を決めたのだという。

生徒にプラスになることは100%の確信がなくても取り組む

澤本圭一教頭 品川女子学院の澤本圭一教頭

 「少ない予算をやりくりして、何とか工夫して、生徒のために少しでもプラスになりそうなことがあれば100%の確信がなくても取り組む」

 記者向け説明会の冒頭であいさつに立った澤本圭一教頭は、品女の教育方針についてこう語った。

 生徒の将来の可能性を広げ得るものには、安全面に配慮しながら外部企業と協力して積極的に取り組んでいく――このような学校としての考え方がITの積極的な導入につながっている。テラトークを自習教材として試験導入することも、その延長線上にありそうだ。

 夏休みが終わり、品女の生徒のスピーキング能力は上がるのだろうか。結果に注目したい。

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