高橋氏は「リスクがあっても前に進める力を持っている」 KDDI社長交代の舞台裏

» 2018年02月01日 15時27分 公開
[井上晃ITmedia]

 KDDIは1月31日に開催された取締役会において、4月1日をもって現代表取締役執行役員 取締役副社長を務める高橋誠氏が、新たに代表取締役社長に就任することを決定した。同じく、現代表取締役社長である田中孝司氏は代表取締役会長に就く。

 KDDIが31日に開催した会見では、田中氏が社長交代の経緯を説明するとともに、高橋氏が今後の抱負について語った。

次の中期経営計画は新社長が主導していく

 新社長を務める高橋氏は、現在KDDIで新事業を担当し、経営戦略本部長とバリュー事業本部長を兼務する人物だ。

KDDI KDDI田中孝司社長(左)と高橋誠氏(右)

 田中氏はまず、「日本の通信業界においては、携帯電話事業の競争がさらに厳しくなる一方、通信事業はライフデザイン事業等の非通信事業と一体になって、新しい形にトランスフォームする方向にあると予想している」と現状を分析した。

KDDI

 その上で、高橋氏を選んだ理由について、「副社長の高橋はKDDIの前身である第二電電株式会社の創業時のメンバーとして、会社を立ち上げ、以後の会社の成長に貢献してきた。また、KDDIになってからは高い付加価値を生み出す新規事業の開発推進を常に先頭に立って引っ張ってきた。直近においては、経営戦略本部長として、私を支えてくれている。その経験から、これからライフデザイン企業に変わっていくKDDIのかじを取る社長として、最適の人材だと考えている」と語った。

 田中氏は2012年の12月に社長に就任し、7年2カ月を迎えた。また、4月には新年度は2015年に策定した3年間の中期経営計画の最終年度を迎える。こうした背景を元に、この時期に新人事を発表した理由については、「次の中期計画の戦略を決定する、非常に重要な1年だと思う。新しい中期計画は新社長が主導していくことが望ましい」と説明した。

高橋氏は通信とライフデザイン事業の融合を狙う

 第二電電が創業したのは1984年。翌85年には電気通信の自由化により、通信事業者間の競争が促進された。2000年には、同社がKDDIへと変わった。高橋氏は、当時普及し始めたモバイルインターネットの開発に携わり、その後は新技術、新サービスの立ち上げに従事してきた。

 その後、J-COM(ジュピターテレコム)のM&Aなども経験。2016年から戦略本部の幹部役員として、翌17年からは経営戦略本部 本部長として、中長期計画の策定、実行に携わった。

KDDI

 高橋氏は「大きな変革期が訪れているので、こういう中で重責に就かせていただくのは身の引き締まる思い」と心境を語る。一方で、「IoT、5G、AI、ビッグデータなどいろいろなワードが飛び交っている。これをお客さまに対して何が実現できるのかを考えると、ものすごくワクワク感がある。また新しいことにチャレンジできるという思いもある」と述意気込みを語った。

 現在、中期計画は2年目に相当。来年度(2018年度)で3年目を迎える。「ライフデザイン企業」への変革というテーマについて、高橋氏は「ライフデザイン企業への変革だけでは足りない。いろんな産業、ビジネス、サービスそのものが、通信、インターネットと組み合わさり、皆さんが思っている以上の大きな変革期となっている。産業自体がごろっと変わってしまう時代になってきている」と考えを述べた。

 「これを田中の言葉でいうと“トランスフォーム”となるわけだが、すなわち通信とライフデザインの訪れるだろうと思っている。ここにおけるサービスプロバイダーとして、またわれわれが大事にしているプラットフォーマーとして、お客さまと一緒に、企業と一緒になりながら、新しいサービスを提供していきたい」(高橋氏)

正直頭が真っ白になった

 新人事はいつごろから考えていたか、という報道陣からの質問に田中氏は「定番だが、社長になると、なったときから“次誰にするの?”といういわゆるサクセッションというのは常に考えた」と答えた。「7年もやると、世の中が変わってきたことを感じられた。今のタイミングだろうと思い、昨年(2017年)11月末に話をした」(田中氏)。

 高橋氏を選んだ理由について再度尋ねられると「(経営には)いろいろな課題があって、右側へ行くか左側へ行くかという選択肢がある。高橋は必ず、行く方を選んできた」と評価。「これからチャレンジしていかなければいけない時期にある。あまり深く考えずに、といったら怒られるかもしれないが、ある程度リスクがあっても前に進める力を持っている。今の時代に本当に適任だと思う」と太鼓判を押した。

 一方の高橋氏は、新人事の打診を受けた際に「一緒に中期計画をやった関係で、来年度(2018年度)が最終年度なので、そこまでは当然(田中氏が)社長を続けると思っていた。正直頭が真っ白になった」と驚いたことを明かした。その上で、「その場で引き受けさせていただいた。(中略)まずは来年度の中期計画の3年目を乗り切らなくてはならない」と堅実に述べる。

 「僕の場合、新規事業をずっとやっていたので、新しいことばかりに飛びついて、そっちのことばかりをやってしまうのではないかな、と社内でも思われがち。しかし、今日の話のように、ライフデザインというものをトランスフォームさせていくうえで、通信が肝になる」と、高橋氏はあらためてインフラの重要性を説いた。

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