“サブブランド攻勢”を強めるKDDIとソフトバンク ドコモも対抗策が必要石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2018年02月10日 08時32分 公開
[石野純也ITmedia]

 サブブランドの台頭や、大手キャリアの割安な料金によって、MVNOの成長にブレーキがかかりつつある。このトレンドは第2四半期の決算で顕在化したが、第3四半期も、この傾向が大きく変わることはなかった。ドコモの吉澤和弘社長は純増数が当初の年間予想に達しない理由の1つとして、「MVNOが少し弱含みで、昨年度(2016年度)に比べると落ち着いてきている」と語る。

 一方で、MVNOとY!mobileの板挟みにあっていたauは、ユーザー数の減少幅が改善。UQ mobileやBIGLOBEモバイルなどのサブブランドがモバイルID数の伸びをけん引し、反転に出つつある。対するソフトバンクは、LINEモバイルを傘下に収め、サブブランド戦略を加速させようとしている。ここでは、ドコモ、KDDI、ソフトバンクグループ3社の第3四半期決算から、モバイル業界の最新トレンドを読み解いていきたい。

ユーザー流出に歯止めをかけ、サブブランドで反転攻勢をかけるKDDI

 一時はドコモ系MVNOとY!mobileの間で板挟みになり、草刈り場になりつつあったau。2017年12月時点でも、ユーザー数の減少に完全に歯止めがかかっておらず、全四半期と比べて8万ほど契約者数がマイナスになっている。一方で、流出に歯止めがかかりつつある傾向もみてとれる。KDDIの田中孝司社長は「auの契約者は減り、(サブブランドの)MVNOが増えているが、同時に解約率も減っている」と改善傾向を評価しながら、要因を次のように語る。

KDDI 傘下のMVNOも含めたモバイルID数は拡大

 「1つは昨年(2017年)入れた新料金プランが非常に効いてきていること。500万契約という数字が出ていて、auのスマートフォンの4分の1の方が短期間で入られた。これは大きなドライバー。もう1つは地道な方だが、au STARや三太郎の日もそうだが、CX(カスタマー・エクスペリエンス=顧客体験)を高めることや店頭改革も相まって、第3四半期はいい結果になった」

KDDI 新料金プランが好調だと語る田中社長

 実際、auの解約率は第3四半期で0.78%に低下し、1年前の水準に戻りつつある。「auピタットプラン」「auフラットプラン」と2つの新料金プランを導入した第2四半期から、その効果が顕著に出ていることが分かる。1利用者あたりの収入を示すARPA(1アカウントあたりの平均売上高)は、新料金プランでデータ容量が大きなauフラットプランを選ぶユーザーが増えていることもあり、5910円に成長。この伸びと、MVNO収入の増加によって、モバイル通信料収入は前年比でプラス0.5%の成長を果たせた。

KDDI 新料金プラン効果で、解約率が過去の水準に戻りつつある
KDDI 収益面では、新料金プランの影響を、MVNOの伸びがカバーした

 通信料収入の減少を新料金プランや傘下のMVNOで食い止める一方で、上位レイヤーのサービスから得られる収益は増加。付加価値ARPAは前年同期比で15.7%増の590円と大きく伸びた。auスマートパスプレミアムの増加や、au WALLETカードの発行枚数増加が、その要因。収益の屋台骨となる通信料収入を回復させ、新規領域での収益を積み上げていける構造になった。ただし、auユーザーの流出はまだ完全には止まっていない。傘下のMVNOでなんとかモバイル通信料収入もプラスになったが、特にソフトバンクとのサブブランド競争も激化しそうな気配があり、予断を許さない状況だ。

KDDI 付加価値ARPAは590円に増加。前年同期比で15.7%増になった
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月05日 更新
  1. 飲食店でのスマホ注文に物議、LINEの連携必須に批判も 「客のリソースにただ乗りしないでほしい」 (2025年12月04日)
  2. 「楽天ポイント」と「楽天キャッシュ」は何が違う? 使い分けのポイントを解説 (2025年12月03日)
  3. 楽天ペイと楽天ポイントのキャンペーンまとめ【12月3日最新版】 1万〜3万ポイント還元のお得な施策あり (2025年12月03日)
  4. 「スマホ新法」施行前にKDDIが“重要案内” 「Webブラウザ」と「検索」選択の具体手順を公開 (2025年12月04日)
  5. 三つ折りスマホ「Galaxy Z TriFold」の実機を触ってみた 開けば10型タブレット、価格は約38万円 (2025年12月04日)
  6. 楽天の2年間データ使い放題「バラマキ端末」を入手――楽天モバイル、年内1000万契約達成は確実か (2025年11月30日)
  7. サイゼリヤの“注文アプリ”が賛否を呼ぶ理由──「使いやすい」「紙メニュー前提」など多様な意見 (2025年11月23日)
  8. Z世代で“友人のInstagramアカウント乗っ取り”が流行? いたずらで済まない不正アクセス禁止法違反 保護者が注意すべきこと (2025年12月04日)
  9. NTT系初の耳をふさがない集音器「cocoe Ear」発表 補聴器でない理由、AirPods Proとの違いは? (2025年12月03日)
  10. 鉛筆デザインのiPad用スタイラスペン「Nelna Pencil」発売 物理ボタンに9機能を設定可能 (2025年12月03日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー