2月上旬に米カリフォルニア州サンディエゴにある米Qualcomm本社で開催された「Snapdragon 845 Benchmarking Workshop」にて、Snapdragon 845を搭載したレファレンスモデルに触れた。これと同時に来訪したメディアを対象としたラボツアーも実施された。
Qualcommはサンディエゴ空港から車で30分ほどの場所に本社キャンパスを構えているが、このキャンパス内に散在するラボの一部が特別に開放されたのだ。説明によれば、こうした記者向けのツアーが開催されたのは非常に久しぶりで、貴重な機会だという。ここでは最新プロセッサを使った各種技術デモの他、現在の同社の取り組みについて報告する。
今回のツアーでは主にSnapdragon関連のデモやラボが紹介され、特に2018年中にも搭載製品が登場するSnapdragon 845を交えたデモが広く行われた。Snapdragon 845の特徴は、現行モデルのSnapdragon 835と比較しても電力効率が大幅に向上しており、バッテリーの長時間駆動が可能になったこと。そして「AI」で表現されるディープラーニング系の処理機構の強化により、スマホで「できること」が広がっていることが挙げられる。
前者については、3D CGを用いたベンチマーク(GFXBench 4.0 Manhattan)と4K(UHD)の60FPSコンテンツ再生で電力消費を比較。両コンテンツを845と835のプロセッサで同時に稼働し続けた場合、845は835より2〜3割ほど電力効率が高く、それだけバッテリー駆動時間が伸びる傾向がみられるという。
基本的にスマートフォンでは同じタイプのボディーでプロセッサを世代ごとに載せ替えているため、同じサーマルデザインを採用する限りは同一TDP(熱設計電力)での運用が行われることになる。つまり、同じバッテリー消費ならパフォーマンスが増大し、同一パフォーマンスならバッテリー駆動時間が伸びるという関係だ。3Dゲームのようにピークパフォーマンスを求める傾向のアプリを除けば、汎用(はんよう)的なアプリや動画再生では求められるパフォーマンスはそれほど変化しないため、その分長いバッテリー駆動が可能になるわけだ。
より興味深いのはAI側の説明だ。Qualcommは835を「(AI搭載の)第2世代」、845を「第3世代」と表現しており、できることがより大きく進化しているという。例えば、ディープラーニングの機構を使って撮影した写真の背景をワンボタンでくり抜いたり、音声認識によるコマンド入力処理をスマートフォン内部だけで完結させたりと、845はクラウドに頼らずにプロセッサ内部だけで複雑な処理機構を実行できる。
既存の835でも、超音波(Ultrasonic)を使った「Double tap in the air(空中でダブルタップしてカメラのシャッターを起動する)」の実現や、カメラから入力した映像に毎秒5〜10フレームでのリアルタイム画像加工、そして中国Tencent QQのゲームで既に採用されているインカメラを使ったモーション認識ゲームなど、さまざまなアプリが実現する。なお、超音波を使った仕組みは既存の近接センサー(Proximity Sensor)を代替できるので、ディスプレイ周りのデザインに影響を及ぼさない。
写真では紹介できないが、スタンドアロンのVR HMDは最新世代でより進化している。会場では宇宙ステーションでドック周辺を歩きながら、手持ちのコントローラーでシューティングを行うゲームのデモを体験したところ、エレベーターでの移動時の振動や反応速度など、非常に没入感が強かった。シースルー用のインカメラも搭載されており、これを使ったハンドジェスチャー入力やARを絡めたアプリケーションも実現可能と思われ、補助デバイスなしで本格的なVR HMDが体験できる世界が実用化しつつある。
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