地味な変化で気付かない人も多いかもしれないが、最近はスマートフォンでの音声処理技術も大幅に向上している。話題のHi-Fiオーディオだけでなく、普段利用する音声通話などでのクリアな音声など、ノイズ処理技術が格段に向上することで、以前までならノイズの多い環境でまともに通話できなかったものが、より自然な形で通話可能になった。今回のラボツアーでも、時間の半分は音声関連のデモが占めており、それだけQualcommとしても音声技術をアピールしたいことの現れだと考えている。
今回案内されたラボの一室は同社最大の「無響室(Anechoic Chamber)」だった。通常なら機械などが発するノイズを計測するために利用するが、このラボでは人体模型にマイクロフォンを被せ、その周辺に人工的なノイズ発生装置を仕掛けて、各種ノイズ環境でもクリアな音声通話を可能にするノイズキャンセリング技術の開発に生かしている。
風洞実験用の装置も同じラボに設置されており、こちらは風の強い場所で発生する風切り音を極力なくしてクリアな通話を行う実験に利用されている。昔は海辺などでまともに携帯通話ができなかった記憶があるが、最近気にしなくなったのも日々の技術進化があるからだろう。
近年ではスマートフォンだけでなく、ホームオーディオの世界でもQualcommの技術は利用されている。例えば欧米で人気の「サウンドバー」は、家庭用テレビに高級オーディオサウンド効果を追加する。日本ではテレビ内蔵型が一般的なため身近ではないが、ここでもQualcommがレファレンスとなる技術を開発しており、各社に提供しているという。
この他、話題のスマートスピーカーにも同様のレファレンスを提供しており、既にこの技術を採用した製品は多数ある。肝になるのは、家庭での雑多なノイズ、いわゆる生活ノイズにあふれた環境でも、スマートスピーカーのマイクに音声コマンドを届ける技術だ。一般的なスマートスピーカーは話者とデバイスの間の距離が数メートルほど離れている状態で利用されることが多く、マイクが広域の音声を高い感度で拾う必要がある。一方で、これは同時に多数のノイズも拾うことになるため、ノイズの混ざる音から必要な音声を抜き出す技術が重要というわけだ。
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