LINEモバイルは、なぜソフトバンク傘下になったのか 嘉戸社長に聞くMVNOに聞く(2/2 ページ)

» 2018年04月24日 14時44分 公開
[石野純也ITmedia]
前のページへ 1|2       

ARPUは1000円や1500円というレベルではない

―― LINEモバイルはARPUが高いというお話もうかがったことがあります。これについては、いかがですか。

嘉戸氏 高いというより、他のMVNOが低いのではないでしょうか。価格.comなどで、ユーザーがどのプランを使っているのかを見たとき、随分低いプランが選ばれていて、ビックリしたことを覚えています。LINEモバイルのARPUは1000円や1500円というレベルではありません。

―― LINEフリープランよりも上のプランを選ぶ人が多いということですね。

嘉戸氏 もっと上ですね。若い人は3GBでは収まらないので、5GB、7GBというプランが選ばれます。でも、(ソフトバンクのような)50GBまではいらないというところとの、バランスが取れているのだと思います。

―― といっても、Y!mobileはもっとARPUが高い。ソフトバンクにとっては、そこにもう一段安い選択肢が用意できることになります。

嘉戸氏 Y!mobileはもっと高いですね。データ容量の在り方や、サービス設計の仕方、音声通話をどう扱うかというところも、われわれと違います。音声通話についても、いらないというお客さんもそれなりにいますからね。高校生ぐらいだと、音声通話はほとんど使いません。

ソフトバンク回線でもカウントフリーはやる

―― データ容量の在り方が異なるという点では、LINEモバイルはカウントフリーを提供しています。ただ、ここには、MVNEのNTTコミュニケーションズのノウハウも入っていたとうかがっています。これは、ソフトバンク回線でも提供できるのでしょうか。

嘉戸氏 (NTTコミュニケーションズと)一緒にやっていたということは、ノウハウはどちらにもたまっているということです。カウントフリーは、技術的に大変というよりも、運用の方が大変です。アプリの動きをどう追っていくか、その検証をどうするかというところですね。最初のカウントフリーをどうやるかというところから、品質保証のところのフルチェックまで、一緒にやってきています。

LINEモバイル LINEモバイルの大きな特徴となっている「カウントフリー」。「コミュニケーションフリープラン」では、LINE、Twitter、Facebook、Instagramの通信量がカウントされない

―― カウントフリーについては、ソフトバンク側も理解を示しているのでしょうか。

嘉戸氏 理解というか、「いいね」という感じですね(笑)。ソフトバンクはSprintもあるので米国市場もよく見ていて、T-Mobileの施策や、(米規制当局の)FCCがどんなことを言っているのかというところまで含めて考えていると思います。

今の価格では収益を原価が超えてしまう

―― 他のMVNOを見ると、サブブランドの影響を大きく受けているところもあります。LINEモバイルはいかがですか。

嘉戸氏 サブブランドの影響は、多かれ少なかれ、みんな受けていると思います。特に、サブブランド対抗のようなブランディングをしたところは、一番つらいのではないでしょうか。逆に、うちのサービスは、あまりサブブランドの影響を受ける作りになっていません。これは事業者によるところも大きいのではないでしょうか。

 サブブランドと同じ速度を出すにはどのくらいの帯域が必要なのかは、LINEモバイルでも計算しています。ただ、今の価格では収益を原価が超えてしまいます。MVNOも全て同じ条件にするというのが、やりづらくなっているのではないでしょうか。

―― とはいえ、御社もソフトバンクのサブブランドに位置付けられてしまうので、今後、他のMVNOからの風当たりも厳しくなりそうですが。

嘉戸氏 厳しくなるでしょうね。でも、やるだけです。

取材を終えて:LINEモバイルの色をどう打ち出すか

 MVNO参入時は台風の目になると思われていたLINEモバイルだが、やはり後発だったこともあり、上位の事業者にキャッチアップするのは簡単ではなかったようだ。資本力を強化し、端末やマーケティングで協力できるという意味では、MNOであるソフトバンクとの資本・業務提携は理にかなった戦術といえるだろう。ソフトバンクの力を加えれば、成長にドライブをかけることができるはずだ。LINEモバイルが支持されている市場は、これまでソフトバンクが開拓できていなかったこともあり、シナジー効果が期待できそうだ。

  とはいえ、資本比率のうえでは、LINE色が薄くなっているのも事実だ。単なるソフトバンクのサブブランドになってしまっては、LINEモバイルならではの魅力が失われてしまう。ソフトバンク側の論理に引きづられすぎると、ユーザーが離れてしまう恐れもありそうだ。LINEが手掛ける通信サービスとしての“色”をどう打ち出していくのかは、今後も注視しておきたいポイントといえるだろう。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月06日 更新
  1. NHK受信料の“督促強化”に不満や疑問の声 「訪問時のマナーは担当者に指導」と広報 (2025年12月05日)
  2. 飲食店でのスマホ注文に物議、LINEの連携必須に批判も 「客のリソースにただ乗りしないでほしい」 (2025年12月04日)
  3. 「スマホ新法」施行前にKDDIが“重要案内” 「Webブラウザ」と「検索」選択の具体手順を公開 (2025年12月04日)
  4. 「健康保険証で良いじゃないですか」──政治家ポストにマイナ保険証派が“猛反論”した理由 (2025年12月06日)
  5. 楽天の2年間データ使い放題「バラマキ端末」を入手――楽天モバイル、年内1000万契約達成は確実か (2025年11月30日)
  6. 三つ折りスマホ「Galaxy Z TriFold」の実機を触ってみた 開けば10型タブレット、価格は約38万円 (2025年12月04日)
  7. ドコモが「dアカウント」のパスワードレス認証を「パスキー」に統一 2026年5月めどに (2025年12月05日)
  8. ドコモも一本化する認証方式「パスキー」 証券口座乗っ取りで普及加速も、混乱するユーザー体験を統一できるか (2025年12月06日)
  9. 楽天ペイと楽天ポイントのキャンペーンまとめ【12月3日最新版】 1万〜3万ポイント還元のお得な施策あり (2025年12月03日)
  10. 「楽天ポイント」と「楽天キャッシュ」は何が違う? 使い分けのポイントを解説 (2025年12月03日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー