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» 2018年05月10日 13時50分 公開

「楽天の新規参入」「サイトブロッキング」――ソフトバンクグループ決算説明会 一問一答

事業の主軸を「通信」から「戦略的持株」に移す姿勢を鮮明にしたソフトバンクグループ。国内の通信事業を担う子会社ソフトバンクを取り巻く環境は大きく変わろうとしている。この記事では、ソフトバンクグループの2017年度通期決算説明会で行われた質疑応答のうち、国内通信事業に関するものを抜粋して掲載する。

[井上翔ITmedia]

 ソフトバンクグループが5月9日、2017年度(2018年3月期)の通期決算を発表した。その説明会で、同社の孫正義社長は「これからのソフトバンク(グループ)は群戦略に基づく『戦略的持株会社』になる」と改めて発言。事業の主軸を「通信」から「持株(投資)」に移す姿勢を鮮明にした。

 とはいえ、国内通信事業を統括するソフトバンクは、同社にとって重要な子会社であることに変わりはない。この記事では、今回の決算説明会におけるソフトバンクに関する言及と、質疑応答の模様をお伝えする。

孫正義社長 国内通信事業の概況を説明する孫正義社長
宮内謙取締役 宮内謙取締役。ソフトバンク社長としての業務に専念するため、ソフトバンクグループの代表権と副社長の肩書を返上した

2018年度は「反転」の年に

 ソフトバンクが主幹する国内通信事業の2018年度の営業利益は、前年度比で366億円減の6830億円となった。「ウルトラギガモンスター」「SUPER FRIDAY」に代表されるソフトバンクブランドにおける顧客還元施策の拡充やY!mobileブランドの強化が減益の主な原因だ。

 この減益について、孫社長は「(ソフトバンクの株式上場を見越した)顧客基盤や経営基盤を強化するための先行投資である」と説明。「今年度(2018年度)は反転(増益)する見通しが立っている」とした。

 2017年度時点でフリーキャッシュフローを5115億円確保していることや、格安SIM・格安スマホ攻勢が強まる中でもソフトバンクブランドのユーザーを純増数を上乗せできたことが“自信”の背景にあるようだ。

国内通信事業営業利益 国内通信事業は減益となったものの、反転に自信を見せる孫社長
国内通信事業FCF 2017年度のフリーキャッシュフローは5115億円。これを元手に2018年度は反転攻勢に入る
国内通信の純増 国内通信事業では、横ばい傾向の続いていたソフトバンクブランドで有意な純増の上乗せがあったようだ。ただし、グラフの縦軸がないため、どれくらい増えたのか分かりづらい

質疑応答

 発表会における、国内通信事業に関連する主な質疑応答は以下の通り。

―― 国内の携帯電話市場に楽天が参入することになった(参考記事)。孫社長としては、どう迎え撃とうと考えているか。

孫社長 三木谷さん(楽天の三木谷浩史社長)は、大変優れた事業家。高く評価している。ですから、(携帯電話事業を)やるからにはそれなりの成果を出すと思うし、そのための準備もしているはずだ。

 情報革命は、いろいろな人がいろいろな役割を果たすことで成果を出していくもの。日本における重要な役割を果たす1人として、(三木谷社長の)健闘を祈りたい。

 我々は我々として、(ソフトバンク社長としての)宮内を中心に、他の2社(NTTドコモ、KDDI)も含めて切磋琢磨することになると思う。

―― 日本の携帯電話料金は「高いのではないか?」という指摘がある。孫社長も「日本の携帯電話料金は高すぎる」ということで携帯電話事業に取り組むようになったと思うのだが、ここのところの料金は高止まりしているようにも見える。この点についてどう考えているか。

孫社長 実際に米国で携帯電話事業者を経営している立場からすると、日本の通信料金は米国とくらべて随分安いと思う。米国大手のAT&TやVerizonは(日本と比べて)はるかに高い料金ではるかに(品質面で)劣ったサービスをしている。日本(の携帯電話事業者は)はるかに高品質なサービスをはるかに安い値段で提供していることが事実だ。

 我々が携帯電話事業に参入する直前は、女子高生も含めて「1人あたり1万〜2万円」という料金で、はるかに少ないパケット(データ通信)容量しか使えなかった。それと比べると、我々が参入してから、「ホワイトプラン」や「パケットし放題」などを投入した結果、米国よりも安価にサービスを使えるようになった。これは我々が仕掛けた「競争」の結果だと思っている。

 また、我々が参入する前はガラケー(フィーチャーフォン)全盛の時代だった。そこにiPhoneを中心とするスマートフォンを導入して、その普及率を上げたとも自負している。

 話はさておき、楽天が新たに参入して新しい角度から競争を仕掛けてくることは、いろいろな意味で刺激があって良いと思う。我々も負けないように頑張りたい。

質疑に応じる孫社長 質疑に応じる孫社長

―― (マンガやアニメの海賊版サイトに関する)サイトブロッキングに関して、先日NTTドコモの吉澤和弘社長が「コンテンツビジネスをやっている者としてブロッキングする」という旨のコメントをした。この問題についてどう考えるか。

孫社長 この件については、宮内から回答する。

宮内取締役 著作権侵害コンテンツは、放置できない非常に重要な問題だと思っているが、「通信の秘密」を含めた法制度上の問題もある。現在、業界団体と連携して法制面、運用面や技術面を考慮しつつ、何ができるのか検討を進めている。

 NTTさんは「ブロックする」と発表した。我々も社内でいろいろ議論したが、(「ブロッキングすべき」という意見と「ブロッキングすべきでない」という)両方の意見が強い状況にある。

 現在(政府が名指ししたサイトは)アクセスできない状況にあるが、(ブロッキング対象サイトの)“線引き”は非常に難しい。これから、国として法案化するなど議論が出てくると思うので、それに従って対応していきたいと考えている。

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