NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3キャリアが、相次いで夏モデルを発表した。ラインアップを見渡すと、2018年の夏商戦にはいくつかの傾向があることが分かる。「Huaweiの躍進」「ミドルレンジモデルの拡大」「デュアルカメラの多様化」などがそれだ。ここでは、こうしたキーワード別に、3社の夏モデルを振り返っていきたい。
ドコモの発表会で最も話題を集めた端末は、Huaweiのトリプルカメラ搭載モデル「HUAWEI P20 Pro」(以下、P20 Pro)だった。同社はかつて、ドコモやソフトバンクにスマートフォンを提供していたが、結果は鳴かず飛ばずで、長いブランクが空いていた状態だった。ドコモでいえば、「Ascend D2」以来、実に5年ぶりのスマートフォンになる。
その間、Huawei自身も端末を強化。ライカとカメラを共同開発し、デュアルカメラで他社を先駆けたことで、グローバルでは着実に販売台数やブランド力を上げていった。日本では、黎明(れいめい)期にSIMフリー市場に参入。コストパフォーマンスの高さが評価され、この市場ではシェア1位を取るに至っている。
とはいえ、ミドルレンジ以下の端末は薄利な上に、市場規模がキャリア市場の10分の1程度のSIMフリー市場だけでは、ビジネスが成り立ちにくい。SIMフリー市場に参入した当初から、そこで培った評判を糧にして、キャリア市場に食い込む狙いがあったとみていいだろう。SIMフリー市場では、地道に種まきをしていたというわけだ。その花が開いたのが、2018年のこと。手始めに、KDDIが春モデルとしてミドルレンジモデルの「HUAWEI nova 2」(以下、nova 2)を導入した。
Huaweiの存在感には、ドコモも注目していたようだ。執行役員 プロダクト部長の森健一氏は「SIMフリーでかなりプレゼンスが上り、ご利用の方も増えていた。スマートフォンはなかったが、dtabなどはあり、技術的な可能性は模索していた」と語る。Huaweiも、このドコモのラブコールに応え、P20 ProにFeliCaやVoLTEといった“ドコモ仕様”に対応させた。結果、P20 Proは「国内ではドコモ限定」(吉澤和弘社長)と三顧の礼をもって迎え入れられ、夏モデルのラインアップの“顔”になった。
ハイエンドモデルの販売方法については、Huawei側に課題もあった。月々サポート等の端末購入補助が付かないか、付いても少額のSIMフリー市場では、高額な端末が売れづらく、人気は「HUAWEI P10 lite」(以下、P10 lite)のような3万円前後のミドルレンジモデルに集中する。徐々にハイエンドモデルが増えてはいるものの、1年に何機種も投入できるほどの規模はない。
Huaweiはフラグシップモデルを2つに分けて展開しているため、その数はさらに増え、年間で4モデルになる。P20シリーズであれば、ドコモが導入したP20 Proに加えて、無印の「HUAWEI P20」も存在する。その全てをSIMロックフリースマートフォンとして発売するのは、現実的な選択肢とはいえない。
実際、Huaweiも2017年はフラグシップモデルで苦い経験をしている。同社は夏モデルとして、「HUAWEI P10」「HUAWEI P10 Plus」を2機種発売したが、売れ行きが分散して、コストも上ってしまったのだ。こうした失敗を踏まえ、Mate 10シリーズは、最上位モデルの「HUAWEI Mate 10 Pro」(以下、Mate 10 Pro)のみに絞り、「HUAWEI Mate 10」の導入を見送っている。
ただ、これではHuaweiがグローバルで持つラインアップを生かしきれない。ドコモ限定でP20 Proを出す一方で、SIMロックフリーモデルをP20だけに絞れば、それぞれの端末の市場を分けることができる。最上位モデルを出すのであれば、キャリア経由の方がいいと考えるのは自然な流れだ。ドコモからP20 Proを発売するのは、ハイエンドモデルの販売方法に対する1つの答えといえるだろう。「P20にもいくつかレベルがあるが、一番いいものをというのがドコモの考え」(吉澤氏)と、ドコモ側のニーズにも合致した。
P20 Proをドコモから発売するHuaweiだが、ソフトバンクもこの動きに対抗。半周遅れながら、SIMロックフリースマートフォンとして発売されたMate 10 Proを、夏モデルのラインアップに加えた。SIMフリー市場での人気を受け、開発期間が短ったのか、ドコモのP20 ProのようにFeliCaなどのカスタマイズが施されていないのは残念だが、実質価格の安さも相まって、滑り出しは上々だという。
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