総務省は6月3日、同省が設置した「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の報告書に基づいて、携帯電話事業者3社(NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク)に対して行政指導と要請を行った。また同省は同日、ソフトバンクに対して「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」に基づく行政指導も実施した。
3社に共通して出された行政指導は以下の7つ。それぞれへの対応は、同省への報告も求められている。
「利用者の引き留めを受けない転出(事業者移行)」を実現する観点で、WebでのMNP転出手続きをできるようにすることを求めている。現状で対応していない場合は、2019年5月末までに必要な措置を講ずることも求めている。
加入者管理機能(HLR/HSS)をMVNOが自ら設置することを求めてきた場合、その連携機能に関する協議の過程で「MVNO側が負担する金額」「金額の根拠と適正性」をMVNOに書面で通知するように求めている。
MVNOが提供するメールサービスについて、MVNOが「受信拒否メール扱いをしないでほしい」旨を要請してきた場合は、各キャリアの求めるセキュリティ基準を満たしていることを条件に受け入れることを求めている。その「基準」をMVNOに提示することも求めている。
端末の「ネットワーク利用制限」に関して、確認用Webサイトへの「支払い」「不払い」情報反映を確認の翌々日までに行う措置の開始、または継続を求めている。
この措置を実施していないNTTドコモに対しては、12月末までに対応することを求めている。
自動更新を伴う定期契約について、解約金(違約金)と25カ月目の通信料金のいずれも支払わずに解約できるように、2019年3月末までに対策するように求めている。
なお「25カ月目」となっていることから分かる通り、この指導はいわゆる「2年縛り」を想定したものとなっている。キャリアによってはより短い「1年(12カ月)」、あるいはより長い「3年(36カ月)」の定期契約プランを用意していることもあるが、これらの扱いについては「事業者さんの判断に任せる」(総務省担当者)という。
「利用状況とプランのミスマッチ」を是正するために、2018年3月末までに以下の2つの措置を講じるように求めている。
それぞれの指導内容について、期日までの措置実施が難しい場合は、総務省の担当部署に事前報告・相談をするように求めている。
上記の7つとは別に、KDDIには「MVNOにおけるテザリングの早期実現」に関する指導も行われた。
上記の行政指導と同時に3社に対して行われた要請は以下の通り。
携帯電話事業者がMVNOに貸し出す「帯域幅(データ通信容量)」について、一部のMVNOが「柔軟な変更」を要望している。
そのため「MVNOからの要望状況」「現時点で考えられる検討課題」「対応可能性」について6月末までに総務省に報告することを要請している。今後もMVNOから同種の要望があった場合は、検討課題と対応可能性について総務省に遅滞なく報告するように求めている。
MVNOが音声通話サービスを提供する場合、現状では各携帯電話事業者が用意するプランを卸してもらっている。これについて、一部のMVNOから「料金に合理性がない(≒割高である)」「国内通話の(準)定額プランも卸提供してほしい」といった意見が出ている。
そのため「MVNOからの要望状況」「現時点で考えられる検討課題」「対応可能性」について6月末までに総務省に報告することを要請している。今後もMVNOから同種の要望があった場合は、検討課題と対応可能性について総務省に遅滞なく報告するように求めている。
携帯電話事業者が提供するで電子メールサービスは、携帯電話の回線契約またはISP(ネット接続)サービスとひも付いて提供されているため、MVNOを含む他事業者に転出する際にメールアドレスを引き継げない。このことが事業者変更の妨げになっているとして、一部のMVNOから「キャリアメールの転送サービス」あるいは「引き続きキャリアメールだけ利用できるオプション」の提供を求める声が出ている。
そのため「MVNOからの要望状況」「現時点で考えられる検討課題」「対応可能性」について6月末までに総務省に報告することを要請している。今後もMVNOから同種の要望があった場合は、検討課題と対応可能性について総務省に遅滞なく報告するように求めている。
携帯電話会社が提供する料金プランやオプションサービスを月途中で解約した場合、プランやサービスによって「日割り計算」できたりできなかったりするため、ユーザーから「解約時にいくらかかるか分かりづらい」「必要以上に負担させられている」といった声が挙がっている。
そこで、日割り計算の適用に関してプランやサービスごとに妥当性・可能性を検討し、その結果を6月末までに総務省に報告するように求めている。
携帯電話事業者では、初回の2年定期契約後に利用期間拘束のないプランを選択できる。しかし、KDDI(au)とソフトバンクのそれは、定期契約プランと比べると割高な設定となっている。
そこで、2社に対して定期契約の有無による格差を縮小するように要請し、その検討結果を6月末までに総務省に報告するように求めている。
2017年1月に定められた「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」では、「高額な端末購入補助」に対する規制が強化され、特に端末代金と同額(実質0円)、あるいはそれを上回る(0円を潜る)割引に対しては厳しい制限が課せられている。
総務省によると、ソフトバンクは1月17日、端末代金の割り引きやキャッシュバックに使える「具体的な金額」を販売店に書面で通知していたことが確認できたという。
同省ではこの書面を「端末の販売価格の割引等を実質的に指示するもの」であり、一部の端末について「指針に沿わない不適正な水準の『端末購入補助』の効果を持つ」ものであるとして、同社に対して以下の措置を命じた。
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