須賀氏は今回のイベントに際して、「広い公園なので、1箇所にとどまるのではなく、健康のためにも歩いて全て見てほしい」狙いがあったと話す。場所ごとに異なる種類のポケモンが登場するなど、複数の場所で楽しめる仕掛けが用意されていたのはそのためだ。
そしてもう1つ、須賀氏は今回のイベントで「同じ体験ができること」も重要な要素として挙げている。会場では同じ場所に同じポケモンが現れることから、その場所にいる全ての人が同じ体験を共有できる。ポケモンGOはそうした体験の共有こそが人気となった要因の1つであることから、家族や友達などとゲームをしながら共通の体験をしてもらうことを、今回のイベントでは重視しているようだ。
この共通体験に貢献しているのがポケモンGOの新機能だ。実は今回の「スペシャルリサーチ」の中には「フレンド機能」を使ったタスクが用意されており、実装されたばかりの新機能を生かしてトレーナー同士が共有体験しやすい内容となっているのだ。
須賀氏も「新しい機能をユーザーに遊んでもらい、確信を得た上でイベントに活用することを考えた」と、その狙いを話す。一方で「ポケモンGOは世界展開しており、多くの利用者を抱えているため、慎重に取り組まないといけないことから、実装に時間がかかってしまった」と、フレンド機能や交換機能の実装には入念な前準備が必要だったことも明かしている。
そしてもう1つ、今回のイベントで注目されたのはネットワークである。実は2017年シカゴで実施されたイベントでは、会場からポケモンGOへのアクセスが集中したことで、サーバやネットワークに不具合が生じ大きな混乱が発生するなどして、Nianticが批判されたという経緯がある。
そうした2017年の経験、さらに日本などでこれまで世界各国で実施してきたイベントの経験から、今回のイベントではモバイルネットワークを一層強化すべく、キャリアとの事前調整を進めてきたとのこと。実施している施策そのものは、移動基地局車を設置したり、会場内にある基地局をさらに増強したりするなど基本的なものだが、「詳しい内容は話せないが、来場者の予測がより詳細になっており、余裕のある環境を作り上げている」と須賀氏は話している。
実際、筆者が会場内で確認した限りでも、フェンスなどで隠されており詳しい様子を見ることはできなかったが、米国キャリアの移動基地局と思われるものや、会場内に設置された基地局設備に対して増強を施している様子なども確認できた。そうした対策の成果もあって、今回のイベントでは会場内では特にストレスを感じることなく、ポケモンGOを楽しめたのは確かだ。
では、日本で開催される「Pokemon GO Safari Zone in YOKOSUKA」は、一体どのような内容になるのだろうか。実は横須賀市は古くから、Nianticが提供するもう1つのゲーム「Ingress」と連携した取り組みを実施しており、両者のつながりは深い。
位置情報を活用したゲームに理解があり、Nianticと思いを共有できることが、2018年のポケモンGOのイベント実施につながったとのこと。それゆえ、イベントではポケモンGOが持つ「外に出て、他の人と時間を共有する」という方向性を生かし、「横須賀の町全体を楽しんでもらえる設計にしている」と須賀氏は話している。
一方で、リアルイベントは場所が限定されるため、遠方に住む人はよほど熱心でないと参加が難しいという弱みもある。この点に関して須賀氏は、「今回は並行して同時開催のイベントも実施しているし、グローバルチャレンジ(指定されたエリアのトレーナーが協力して課題を達成するイベント)達成で、世界中の人たちがイベントの一部を共有できる内容も用意している」と答える。ただ、イベントへのニーズに対し、供給が足りていないとの認識は持っており、「今後より多くのイベントが実施できるよう、チャレンジを続けていきたい」とも話している。
(取材協力:ナイアンティック)
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