iPhone XS/XS Maxは頑丈なステンレスシャシーを採用するが、XRはiPhone 8シリーズなどと同じ7000シリーズのアルミ合金だ。比べればステンレスフレームの剛性や質感はアルミよりも優れているが、では世の中にあるスマートフォンを見渡したとき、見劣りするのかといえば「否」だ。
シャシーをサンドイッチするガラスカバーは、iPhone XS/XS MaxにはiPhone Xよりも強度が向上した素材が使われているが、iPhone XRは画面側にだけ最新の強化ガラスを採用。背面は2017年発売のiPhone Xが採用していた(当時としては最も強いとAppleが話していた)ガラスと同じものになる。
防水機能もiPhone XS/XS Macの水深2mで30分間というスペックに対し、時間こそ同じ30分であるものの水深は1mと半分、内蔵フラッシュストレージの上限も256GBまでと、こちらもiPhone XS/XS Maxの半分だ。
どちらが「最高」かは明らかなのだが、ではiPhone XRの体験レベルが著しく劣るかといえばそういうことではない。
例えば、筆者はiPhone Xを1年近く使い続け、またiPhone XSシリーズも発表会後に使い続けているが、これをiPhone XRに持ち替えても全く違和感がない。それどころか、A12 Bionicを搭載していることもあり、パフォーマンスそのものはiPhone Xよりも上で、Face IDの認識も高速だ。
確かにしばらく使い込んでいると、True Toneによる色温度の調整が、少しだけiPhone XRの方が高めに感じたり、暗部の階調表現に違いを覚えたりするなど、細かな違いに気付く。厚みの違いも使い比べれば、握っただけで認識できるレベルだ。
しかし、いずれもiPhone XRを否定する本質的な部分での違いといえるのかどうか。確かにiPhone XS/XS Maxは、Appleが「最高」にこだわって生産しているのだろう。しかし、費用対効果でみたときにはiPhone XRの方がよりバランスの取れた仕様といえる。
もっとも、費用対効果を求めてバランスを取ったモデルではあるものの、結果的に(ユーザーの使い方次第だが)iPhone XS/XS Maxよりもベターな側面もある。例えば、バッテリー駆動時間だ。
iPhone XRのディスプレイはOLEDではなく、また画素密度もiPhone XSよりも低いが、一方で消費電力も低い。恐らく、この部分の違いが大きいのだろう。iPhone XRはiPhone 8 Plusの1.5倍(結果、iPhone XS/XS Maxよりも電池持ちはよい)とアナウンスされている。実際に使っていても、iPhone XやiPhone XS Maxよりも、明らかにバッテリーの減り方が穏やかだ。
また(好みの範囲ではあるが)6.1型という画面サイズも、iPhone XS Maxの6.5型ほど「デカイ」感はなく、iPhone XSの5.8型ほど「小さい」とは思わない。程よいところだと感じる(もちろん、4型の「iPhone SE」後継モデルを望む人たちには、いずれも大きすぎるのだろうが)。
そしてもう一つ。スペックの面ではマイナスのシングルカメラ仕様は、もちろんコストダウンではあるのだが、結果的に使いやすい面もある。制約はあるものの、26mmと広角なアウトカメラでポートレートモードを利用できるからだ。広角なシングルカメラでのポートレートモードは、iPhone XRにできて、iPhone XS/XS Maxではできない唯一の機能だ。
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