4Gよりはるかに高速・大容量で、なおかつIoTへの備えも万全な5Gの登場によって、モバイルネットワークの在り方は大きく変わろうとしている。簡単に言ってしまえば、モバイルネットワークが道路などと同じ、社会インフラになろうとしているのだ。
実際、5Gの利用が想定される分野の1つとして、IoTによるセンシング技術を活用したITS(高度道路交通システム)やスマートシティーなどが挙げられている。これらの事業を実現する上では、街の至る所にセンサーを設置し、人や車、環境などのさまざまな情報を取得して動向分析をする必要がある。そうした多数のセンサーをネットワークにつなげる上で、5Gの存在が必要不可欠とされているわけだ。
また先にも触れた通り、5Gは低遅延の特性を生かして、遠隔地から手術などをする遠隔医療や、遠隔で自動車や重機などを操作する遠隔運転、さらには自動運転を制御するためのネットワークに活用されることも想定されている。
例を挙げると、ソフトバンクは2018年3月に、5Gのネットワークを用いて、ドライバーが運転する先頭車両の動きを2台目以降の無人車両が自動的に追従して運転する、トラックの隊列走行の実証実験を実施している。こうした取り組みが本格化すれば少子高齢化による人手不足や地方の過疎化などを解消する一助にもなるだけに、5Gは日本が抱える社会課題解決のために役立つ存在にもなろうとしている。
エンタテインメントの分野にも、5Gは大きな影響を与えようとしている。この分野に力を入れて取り組んでいるのがドコモだ。2017年11月には5Gの高速大容量通信などの特性を生かし、車いすフェンシングの試合を、専用のタブレットを用いて視点を切り替えながら楽しむ取り組みを公開。さらに2017年12月にはスマートグラスを活用し、ラグビーの試合の様子を手の動きで視点を変えながら楽しめる「ARライブ映像視聴システム」などを公開するなど、5Gを活用した新しいスポーツの楽しみ方を提案している。
そして5Gの進展は、もちろんわれわれが利用するデバイスにも大きな影響を与えるとみられている。5Gでは4G以上の高速大容量通信が実現するが、現在のスマートフォンにとってその通信速度はオーバースペックだ。そこで今後は、5Gの特性をより生かすことができるVR(仮想現実)やAR(拡張現実)に対応したスマートグラスのようなデバイスが、再び盛り上がってくると考えられている。
実際、KDDIは2018年4月に、米国でスマートグラスを開発するOsterhout Design Group(ODG)との提携を発表。5Gの時代を見据え、VR、AR、MR(複合現実)を総称した「xR」に対応したスマートグラスの開発を両社で共同開発することを発表している。近年、ARやVRなどの技術は急速に進化しているだけに、スマートグラスのようなデバイスの普及によって、5G時代にはわれわれの生活を大きく変えるコンテンツやサービスが増えると考えられそうだ。
ここまで触れてきたように、5Gはデバイス、サービス、そして社会インフラに至るまで、われわれの生活に大きな影響を与える可能性が高い。それだけに5Gの進展は、新たな技術革新とビジネスの種を生むことにもつながっていく。
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