モバイル通信の最新技術やサービスの展示会「ワイヤレスジャパン 2018」と「ワイヤレス・テクノロジー・パーク」が、5月23日〜25日に東京ビッグサイトで開催されている。ここでは、次世代通信規格の「5G」にまつわる展示や講演が行われている。その中で、NTTドコモの吉澤和弘社長は23日に「5Gでより豊かな未来を」と題してプレゼンテーションを行った。
ドコモは、2020年とその先を見据えた中期戦略として6つの「beyond」宣言を掲げており、そのうちの1つに「5Gで共に革新する 産業創出宣言」が含まれる。「5Gはコンシューマーだけでなく、さまざまな産業に影響を与え、ネットワークとパートナーとのサービスが融合することで新たな価値が生まれる」と吉澤氏は期待を寄せる。
ドコモは2020年に5Gの商用サービス提供を目指して準備をしているが、「その前にプレサービスをエリア限定でやることも考えていきたい」と吉澤氏。ただ、これは商用サービスが前倒しになるというよりは、試験的に実施するものを想定しているようだ。
5Gが持つ「高速・大容量」「低遅延」「多数の端末との接続」という特徴を生かし、ドコモはさまざまな実証実験を行っている。
例えば、時速300kmでの移動中でも、基地局間のハンドオーバーを経て4K映像をライブ配信することに成功した。28GHz帯で実験したところ、スループットは上り1.1Gbpsまで出たという。これなら、新幹線での移動中でも5Gの通信が途切れないことが期待される。
5Gを活用した海上での4K映像伝送も実施した。ウインドサーフィンのワールドカップのパブリックビューイング会場にて、船のカメラやドローンで撮影した4Kの競技映像をライブ配信することに成功。この時も、28GHz帯で上り最大1.1Gbpsほどの速度が出たという。
ドコモはサービスを提供するにあたり、外部パートナーとの協創を重視しているが、これは5Gでも同様だ。
「(5Gは)3Gや4Gの時に『そんな速い速度を出して、誰が使うのか』よく言われた。ただ、ストリーミングやSNSのサービスが普及したのはLTEがあったから。いわばサービスが追い付いたものだが、5Gではネットワークを提供するだけではなく、サービスと融合させた上で提供していく」と吉澤氏は見通しを語った。
ドコモは5Gサービスの創出に向けた「オープンパートナープログラム」を2018年2月に発足し、5Gの技術や仕様に関する情報の提供や、パートナー間の意見交換を行う。同プログラムには、既に1300を超える企業・団体が参加表明をしている。また、一般ユーザーが5Gサービスを体感できる場として「トライアルサイト」も2017年に開始している。
実際にパートナー企業との協創は着々と進んでいる。「新体感プロジェクションマッピング」は、「Kirari!」という技術を使って大容量の競技映像を伝送し、遠隔地でも臨場感あふれるスポーツ観戦を可能にするもの。Perfumeと実施した「距離をなくせ」プロジェクトでは、東京、ニューヨーク、ロンドンの3都市でのライブ映像を同期してYouTubeにリアルタイムで配信した。
人型ロボットを遅延なく遠隔操作できるのも5Gならではだ。Mobile World Congress 2018では、人間の動きに応じてロボットが書道をするデモが話題を集めたが、災害時や人が行けないところなどにロボットを派遣して人命救助するといった活用法も想定している。
建設機械の遠隔制御では、高精細な映像をコックピットに伝送することで、現場の状況を細かに把握し、5Gの低遅延を生かしてスムーズな遠隔操作を可能にする。ワイヤレス・テクノロジー・パークの会場では、コックピットから千葉市美浜にある建設機械を操作するデモを行っている。
クルマ関連では、自動運転車両の遠隔監視などの実証実験も行っている。ソニーと共同で開発した「ニューコンセプトカート」は5Gのアンテナを内蔵しており、カートに備えているカメラで撮影した4K動画をリアルタイムで遠隔地に伝送し、遠隔地で自動運転を監視する。会場で実際に試乗したが、カメラで捉えた映像がリアルタイムで表示され、あたかも窓から景色を見ているかのようだった。
ワイヤレス・テクノロジー・パークの「G Tokyo Bay Summit 2018」では、ここで紹介した以外にもさまざまな5G関連のデモを実施している。興味のある人はぜひ足を運び、5G技術の一端を体験してほしい。
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