世界を変える5G

“感覚”の伝達も可能に 5Gで変わるコミュニケーションの手法特集・ビジネスを変える5G(1/2 ページ)

» 2019年02月03日 06時00分 公開
[田中聡ITmedia]

 モバイル通信が進化するに従って、コミュニケーションの手法も変化してきた。携帯電話は元来、通話をするためのデバイスだったが、今や通話が脇役になるほどコミュニケーションの手段は多様化した。3G通信によってケータイメールが普及し、ケータイから写真や動画を送ることも可能になった。その次世代規格のLTEでは、送受信できるデータがよりリッチなものになり、SNSやチャットアプリを中心に、写真や動画でのコミュニケーションを加速させた。

 2019年〜2020年にかけて日本でサービスがスタートする「5G」では、コミュニケーションの手法はどう変わるのか。電話、メール、チャットといった既存の枠を超えるトレンドやサービスは生まれるのか。2019年に5Gのプレサービス開始を予定しており、現在もさまざまなパートナー企業と5Gのソリューションを開発している、NTTドコモに話を聞いた。

ドコモ、5G 左から、経営企画部 5G事業推進室 企画担当部長の鴻池庸一郎氏、経営企画部 5G事業推進室長の太口努氏、5Gイノベーション推進室 5G方式研究グループリーダー 担当部長の奥村幸彦氏

 ドコモは外部パートナーと5Gの新規ビジネスを創出すべく「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」を提供しており、現在は2000社を超える企業が参加している。この中で、5Gの技術検証環境を無償で利用できる「ドコモ5Gオープンラボ」や、そこにドコモのクラウド基盤を直結させ、画像認識やAI技術なども利用できる「ドコモ5Gオープンクラウド」を提供している。

 経営企画部 5G事業推進室 企画担当部長の鴻池庸一郎氏は「5Gはドコモ1社だけでは広げられません。パートナーとどう組んで世の中を変えていけるかが重要。事例作りが幾つか立ち上がってきたところです」と話す。

ドコモ、5G 外部パートナーと新たなビジネス創出を目指す「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」を提供

 こうした取り組みの中で、情報を伝達する新たなビジネスのヒントが生まれつつある。経営企画部 5G事業推進室長の太口努氏は、「LTEで(送受信できる)情報量が増したことで、SNSが普及しました。5Gでも情報量が増えることは変わりません」とした上で、「体感できる要素が増える」とみる。具体的には、遠隔地から「実感」「臨場感」「没入感」などが得られるというものだ。「情報量が増えて低遅延になることで、あたかもそこで実感できるようなことが可能になる」ことが期待される。

 「一般のお客さまに実感いただける、5Gの分かりやすい特徴は、『高速』と『低遅延』。SNSは瞬時というよりは、ある程度時間をかけながら密にやりとりをしますが、5Gではインタラクティブ性が高まるでしょう。低遅延の良さを生かせるようなサービスが出てきてもおかしくありません」(太口氏)

 ドコモはH2L(Happy Hacking Life)と5G事業での協業を2019年1月9日に発表しており、「BodySharing技術」を開発する。この技術は、筋変位センサーを活用し、手や腕などの身体情報を遠隔地から伝達可能にするもの。つまり遠隔地にいる人の感覚を、リアルタイムで他のユーザーに伝えることが可能になるのだ。光学式筋変位センサーを内蔵したVRゴーグル「FirstVR」、遠隔地のユーザーに触覚を伝えるリストバンド「UnlimitedHand」、2本のベルトに電気刺激を与えて手指の動きをコントロールする「PossessedHand」といったデバイスを用意。

ドコモ、5G 身体情報を伝える「BodySharing技術」をH2Lと共同で開発

 H2Lとの取り組みでは、沖縄県国頭郡東村で撮影されたマングローブカヤックやスタンドアップパドルボードの映像をFirstVRで楽しめるコンテンツを用意。実際にパドルをこぐ動作を、遠隔地のユーザーがVRゴーグルを通じて、あたかもその場にいるかのような臨場感を味わえる。ここにUnlimitedHandを組み合わせれば、オールをこぐときの感触も楽しめるはず。LTEならオールをこぐ映像を後から共有する形だが、5Gでは、今まさにオールをこいでいる様子をリアルタイムで共有し、しかも感覚まで伝えられる――というわけだ。

 遠隔地にいる人同士が仮想的な握手をしたり、離れて暮らす家族に子どもを抱きかかえた感覚を伝えたり……。これまでの「見る」「聞く」に加えて「触る」を伝えられるようになれば、コミュニケーションの密度が増す。

 感覚を伝えるだけでなく、コントロールできることも注目すべき点だ。例えば東京に有名なバイオリンの先生がいるけれど、地方から上京して教わることが難しいという場合。BodySharing技術を用いれば、手首に装着したPossessedHandを介して、先生が生徒にバイオリンの弾き方を教える、といったことが可能になる。BodySharing技術は外部パートナーに開放しているため、さまざまなサービスの創出が期待できる。

 ヤマハが開発した、音楽のリアルタイムセッション「NETDUETTO」も、それ自体がモバイル通信を介した新たなコミュニケーションだといえるし、他のシーンで応用もできる。例えば、ブラスバンド部が全体練習をしたいが、メンバーの1人が欠席しているとき。LTEなら遅延が大きいため、モバイル通信を介した遠隔合奏は厳しいが、遅延の少ない5Gなら“遠隔練習”が可能になる。

ドコモ、5G ヤマハの「NETDUETTO」に5Gを活用。離れた場所で遅延なくセッションができる、
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