世界を変える5G

“感覚”の伝達も可能に 5Gで変わるコミュニケーションの手法特集・ビジネスを変える5G(2/2 ページ)

» 2019年02月03日 06時00分 公開
[田中聡ITmedia]
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 自分の分身を使ったコミュニケーションも可能になるかもしれない。ドコモは凸版印刷と東京大学暦本研究室との共同研究として、「IoA仮想テレポーテーション」を開発。IoAとは「Internet of Abilities」の略で、さまざまなモノがインターネットにつながることを表す「IoT(Internet of Things)と異なり、人の能力がインターネットにつながることを示す。

 大画面の有機ELディスプレイが備えられた「伝送ルーム」に人が立つと、分身ロボットに搭載された360度カメラの映像がディスプレイに送られることで、現地にいるかのような体感ができる。この伝送ルームに搭載されたカメラで映し出された自分の映像をリアルタイムで分身ロボットに投影することで、自分の存在を遠隔地の人にアピールできる。これが仮想テレポーテーションといわれるゆえんだ。

ドコモ、5G 「IoA仮想テレポーテーション」のデモ。伝送ルームに立つと、遠隔地にある分身ロボットからの360度映像を大画面ディスプレイで見られる
ドコモ、5G 分身ロボットは、上部の360度カメラで撮影した映像を伝送ルームに送る。伝送ルーム内のユーザーをディスプレイに表示するので、その場にいるかのような演出ができる

 例えば自宅にいながら、社内の会議室にいるかのような感覚で会議に参加したり、遠隔地からの映像や音声を通じて旅行を楽しんだりできるようになる。ここに、先述したウェアラブル端末を組み合わせて感覚も伝えれば、その場にいるかのような体験も夢ではない。自宅に伝送ルームを設置するのが難しければ、VRゴーグルを介した仮想空間で代用するという手もある。

 「“遠隔○○”は、固定の光回線で大容量通信ができれば、今でも同じような機能は実現できます。5Gではここにモバイルの要素を足すので、動き回った状態で、同じような遠隔体験ができます」と太口氏は期待を寄せる。その手法も、物理的なディスプレイやロボットを介する方法もあれば、VRゴーグルを使って仮想空間で実現する方法もある。太口氏は「現実世界と仮想空間の組み合わせも重要になる」と言う。「現実世界には距離や場所の制約があります。仮想空間で補うことで、現実と仮想の間で新たな価値が生まれるでしょう」

 ちなみに、携帯電話の基本である音声通話は、5Gではどう変わるのか。5Gイノベーション推進室 5G方式研究グループリーダー 担当部長の奥村幸彦氏は「品質は改善していきますが、音声はLTEベースなります」と話す。音声にVoLTEを使うことは、5Gでも変わらないようだ。映像に関しては「eLTE(enhanced LTE:LTE/LTE-Advancedを進化させたもの)のネットワークで収容して、より大きな情報量を必要とする映像などは、5Gで対応します」と同氏。

 5Gの世界では情報の伝達量が増大し、リアルタイムで感覚も伝達、制御可能になる。こうした変化を起こすにはデバイスの進化も欠かせない。“感覚”を扱うことは、既存のスマートフォンでは限界がある。先述したVRゴーグルやウェアラブル端末の普及は必須だ。5Gではスマートフォンの周辺デバイスも拡張するだろう。いや、ひょっとしたら、コミュニケーションの場では、スマートフォンは主役ではなくなっているかもしれない。

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