IIJはなぜ音声特化の「ケータイプラン」を提供するのか? 「eSIM」とのつながりもMVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2019年02月27日 15時58分 公開
[石野純也ITmedia]

 IIJmioが、音声通話とSMSに特化した「ケータイプラン」を2月1日に開始した。料金は月額920円(税別、以下同)。ここに、通話料金が30秒で20円かかる仕組みで、中継電話サービスの「みおふぉんダイアル」や、3分、10分の通話定額も利用できる。ただし、クーポン未購入の状態だと、低速でもデータ通信は利用できない。これが「音声通話とSMSに特化した」といわれるゆえんだ。

IIJmio 音声通話専用のサービス「ケータイプラン」

 ただ、IIJはもともとインターネット接続を提供することを目的に生まれた会社で、データ通信は同社の本業ともいえる。そんなIIJが、音声通話やSMSしか提供できないプランを提供するのは、一見不思議なことのようにも見える。では、なぜIIJはケータイプランの提供を開始したのか。そこには、サービスインを控えるeSIMとの、隠れたつながりもあるという。

 同社でMVNO事業を率いるMVNO事業部長の矢吹重雄氏と、MVNO事業部 MVNOセールス・プロモーション部 事業統括室 担当部長の佐々木太志氏が疑問に答えた。

「電話番号だけを使いたい」というニーズ

IIJmio IIJの矢吹重雄氏

―― なぜ、このタイミングでケータイプランを出されたのでしょうか。狙いや背景を教えてください。

矢吹氏 背景は2つあります。1つは、解約時にアンケートを取っていますが、その回答に「海外に行くから解約する」というものが結構な比率を占めていたことです。海外に行くからやめるというのはどういうことかを分析しましたが、長期間海外に赴任する際にケータイを使わないから休止にしたり、待受けだけのために電話番号を維持したりする人が一定数いることが分かりました。

 もう1つの理由は、ほとんど使わないケータイでも、電話番号がいることがあるというものです。私ぐらいの世代だと、会社のケータイを持っていて、自分のケータイはほとんど使わない。自分のケータイに届く連絡は実家と古い友達だけですが、いまだに古い番号に電話やSMSが来ます。データ通信をほとんどしないのに、1000数百円払っているんですね。

 じゃあ、電話だけのプランがあってもいいじゃないか。一定数のニーズもありそうだということで始めたのが、ケータイプランのバックグラウンドになります。

―― nuroモバイルの「0 SIM」も似たように、データ通信費がかからない状態で電話だけ使えて、料金も安くなっています。競合というと、このプランでしょうか。

矢吹氏 このプランは競合分析をして設計したというより、自分が欲しいものを出した感じです(笑)。ただし、それと並行してeSIMの話もありました。ケータイプランだけを持っていて、臨時にデータ通信したいときはeSIMを使うというシーンも出てくる。将来、そういうシーンを作れたら面白いという考えもありました。

―― 確かに、もうかるプランではなさそうですし、どこかにぶつけてというわけではないということですね。

矢吹氏 全然もうからないですね(笑)。自分たちが欲しいというところと、技術の組み合わせが面白そうという2つの観点で出しています。メインの商材というよりも、とにかくやってみようという感じです。

チャージしないとデータ通信はできない

―― 実際に出されてみて、反響はいかがでしたか。

矢吹氏 反響は思ったより大きく、想定よりも申し込み数は多かったですね。夏以降に向け、プロモーションもかけようかと考えています。

―― 実際に海外赴任する人などが申し込んでいるのでしょうか。

矢吹氏 まだ属性まではきっちり見られていませんが、メインターゲットの30代、40代男性が多いですね。そういうこと(海外赴任)もあるかと思います。

―― データ通信が、クーポンをチャージしないとできません。少量付与するという考え方もあったかと思いますが、これはなぜでしょうか。

佐々木氏 あえてチャージしないとできないようにしています。普通のSIMの場合は(クーポンを使い切っても)低速通信ができますが、それができません。使えると困ってしまう方も一定数いるので、あえて能動的にチャージしないようにしました。電話として使うのであれば、そちらの方がご安心いただけるというのもあります。

矢吹氏 そういう意味では、限定的なターゲットでリリースしています。

―― ゼロレーティングと同じように、チャージするサイトにだけつながるようにしてもよかったのではないでしょうか。

佐々木氏 やることはできますが、今回はそれもやっていません。これだけを単体で契約するというより、お父さんがIIJmioの契約を持っていて、お子さんに持たせるときにチャージしてあげるようなイメージですね。

矢吹氏 ちょうどeSIMの話もあったので、このような仕様になりました。

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