Samsung Electronicsが2月21日に発表した折りたたみ(フォルダブル)スマートフォン「Galaxy Fold」。閉じた状態で用いる4.6型「カバーディスプレイ」と、開いた状態で用いる7.3型「Infinity Flexディスプレイ」を備えていることが大きな特徴だ。
中でも、最大で3つのアプリを同時起動する「マルチアクティブウィンドウ」は、大画面を生かす良い機能。カバーディスプレイで表示している内容をFlexディスプレイ側に引き継ぐ機能も、スムーズに動けば非常に便利なことは間違いない。
だが、これらの機能はアプリ側が対応してこそ生かせるもの。特にサードパーティーアプリの対応状況は気になるところだ。
そこで、Samsungがグローバルニュースサイトに掲載した、Executive Vice President(EVP)を務めるEui-Suk Chung氏へのインタビューを参考にしつつ、対応への課題をまとめてみた。
結論からいうと、独自機能を使えるかどうかは、あくまでもアプリ次第。アプリの開発者が対応してくれるかどうかが鍵を握る。
まずマルチアクティブウィンドウは、Android 7.0以降の「マルチウィンドウ」に対応しているアプリならそのまま、あるいは多少の手直しで対応できると思われる。しかし、マルチウィンドウ非対応の現行アプリは意外と多い。
マルチウィンドウに対応していないアプリが、マルチアクティブウィンドウには対応する……ということは想像しづらい。まずはここをどうにかしなくてはならない。
一方、2画面間のアプリ継続利用については、アプリが「描画解像度の切り替え」を想定しているかどうかが問題となると思われる。
解像度の切り替え機能自体は、一部のAndroidスマートフォンにはすでに実装されている。2画面スマホの「M Z-01K」はこの機能を最大限活用しているし、普通のスマホでもハイエンド機種では「省電力」「負荷軽減」の観点から描画解像度の切り替え機能を備えていることがある。
もちろん解像度が切り替わっても正常に動作し続けるアプリもあるが、解像度が切り替わった瞬間に強制終了してしまうアプリは少なからず存在する。強制終了には至らなくても、解像度切り替え後に表示がおかしくなるアプリもある。異常な表示については、描画解像度の変更後も変更前の解像度の“つもり”で動作を続けてしまうために発生するものと思われる。
Galaxy Foldの機能をフルに生かせるかどうかは、「マルチ(アクティブ)ウィンドウ」と「描画解像度の変更」の双方を考慮に入れたアプリを充実させられるかどうかにかかっているといえる。
このような問題は、Samsungにとって“百も承知”。先に挙げたインタビューでChung氏が「アプリがGalaxy Foldに最適化され、ユーザー体験が向上し続けられるようにAndroidの開発者コミュニティと協力していく」と発言していることからも、それは十分に伝わる。
そこで、同社はGoogleやAndroid開発者コミュニティと協力して、Galaxy Fold独自の機能をサードパーティー製アプリでも使えるように取り組んでいるという。とりわけ、著名なアプリ・サービスを開発している企業とは、同社が立ち上げた「テストラボ」を通して共同で最適化を進めているという。「Googleマップ」や「YouTube」など、Googleが提供するアプリにおける最適化はその成果の好例であるようだ。
このテストラボ、あるいはそれと同等の試験を行える環境が中小のアプリ開発者にも開放されれば、マルチアクティブウィンドウや2画面間のシームレスな動作引き継ぎのできるアプリが増えて、ユーザー満足度が高まるだろう。
Samsungは今後「折りたたみ」の次に来るであろう「巻き取れる(ローラブル)」「引き伸ばせる(ストレッチャブル)」ディスプレイを持つスマートフォンの登場を見越した取り組みを続けていくという。
Galaxy Foldの特徴的な機能に対して、同社がどれだけ“本気”で対応し続けるのか、注目したい。
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