その意味で、ユーザーにとって現実的な選択肢を示したのが、LGエレクトロニクスといえそうだ。同社の「LG V50 ThinQ 5G」は、背面に専用の端子を備え、ディスプレイケースを装着することで2画面端末として利用できるようになる。プレスカンファレンスでは、2画面目をゲームアプリのコントローラーにしたり、2つのアプリを同時に表示させたりする様子が披露された。
価格は公開されていないが、“2画面目”をオプションにしたことで、Mate XやGalaxy Foldよりも安価になる可能性は高そうだ。同様のオプションは、ASUSのゲーミングスマートフォン「ROG Phone」にも用意されていたが、折りたたみ端末の技術が成熟し、価格がこなれてくるまでの過渡期には、こうしたアプローチを取るメーカーが増えるのかもしれない。
「5Gのオンパレードで、ハンドセットも発表され、実物も出てきた」(NTTドコモの吉澤和弘社長)2019年のMWCだが、登場した端末はハイエンドモデルに集中している。現状では、Qualcommの5Gモデム「Snapdragon X50」が「Snapdragon 855」にしか対応していないため、これを採用した端末はどうしても“全部盛り”にならざるを得ない。ラインアップの方向性を決めるうえで、まずハイエンド端末を作るのは王道だが、グローバルで見ると、実際に数を稼ぐのはミドルレンジ以下の端末が中心になる。
ただし、この価格は徐々に落ちていく可能性もある。Qualcommは、MWCのプレスカンファレンスで、5Gモデムを統合したSnapdragonを開発していると発表。同社のクリスチアーノ・アモン社長によると、これを搭載した端末は2020年に発売される見通しだ。単に現行のチップを1つにまとめただけでなく、この新しいチップは普及価格帯の端末向けになることが予想される。端末の価格が落ちてくれば、5Gの普及にも弾みがつきそうだ。
5G端末の第1陣が出そろったMWCだったが、この通信規格は、スマートフォンのためだけにあるのではない。4G時代と違い、規格化にあたってまずユースケースを想定したのは、キャリアが他の産業とのコラボレーションを進めていくためだ。実際、MWCの展示では自動車の遠隔運転や遠隔医療、ロボットの操作など、さまざまな5Gの応用例が展示されていた。この部分は、例年通りといえるだろう。
一方で、それを支えるデバイスは、まだ具体的な形が見えない。MWCでは、Microsoftが「HoloLens 2」を発表したり、HTCがVRで利用することを前提にした「HTC 5G Hub」を展示したりと、スマートフォン以外に5Gが広がる兆しは見えたものの、何が“ポストスマートフォン”になるのかは未知数の部分も大きいと感じた。楽天モバイルネットワークのCTO、タレック・アミン氏はMWCのプレスカンファレンスで「真の5GはSAだと考えている」と語っていたが、デバイスがスマートフォン以外に広がるのは、その本格導入を待つ必要があるのかもしれない。
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