2月25日から28日に渡り、スペイン・バルセロナで「MWC19 Barcelona」が開催された。同イベントはもともと「GSM World Congress」だったが、3Gの開始に合わせて「3GSM World Congress」に名称を変更。2008年にはこれをMobile World Congressに改称したが、2019年からは略称としてのMWCが正式名称になっている。通信の世代とともに名称を変更し、徐々に役割を変えてきたMWCだが、2019年のイベントは、まさにそれを象徴するかのように展示内容は「5G」一色だった。
もちろん、5Gに関しては過去にも出展がなかったわけではない。標準化に先駆け、チップベンダーや基地局ベンダーは5Gの実験結果などをアピールしていたため、数年前から5GはMWCでの主要なテーマの1つだった。特に2018年は5G前夜ということもあり、商用化予定の基地局やユースケースの展示が多かった印象も受けた。2019年のMWCがそれと大きく違うのは、実際にコンシューマーが手にできる、発売前提の5Gスマートフォンが出展されたことだ。
しかも、5Gスマートフォンを手掛けたのは1メーカーだけではない。Samsung、Huawei、LGエレクトロニクス、Xiaomi、OPPO、ZTEなど、Android端末を手掛ける主要メーカー各社がこぞって5G対応のスマートフォンを出展したのだ。Wikoなど、廉価端末が中心のメーカーを除けば、ほぼ全てが何らかの形で5Gスマートフォンを発表、展示していたといっても過言ではない。
Huaweiを除く端末にチップセットを供給するQualcommのブースには、各メーカーの5G端末が一堂に会し、会場内に設置された基地局と実際に通信を行い、動画やゲームなどが実機の上で動いていた。同社は「5G is here(5Gはここにある)」というメッセージを打ち出し、ブースの説明員もそれが書かれたTシャツを着用していたが、5Gスマートフォンがズラリと並んだQualcommのブースは、まさにその言葉がウソでないことを証明していた。
一気に登場した5Gスマートフォンだが、これは欧米や中国、韓国など一部アジアの商用展開に合わせたものだ。いずれの端末も、早ければ「数カ月後」に発売される見通しで、LGエレクトロニクスのプレスカンファレンスには米Sprintが、OPPOには豪TelstraやスイスのSwisscomなどの幹部がそれぞれ登壇。それぞれのスマートフォンを導入することが明かされた。残念ながら、日本での商用展開は2020年を待たなければならないが、サービス開始時には、少なくともスマートフォンやWi-Fiルーターは出そろっている形になる。
いずれのスマートフォンも、4G版とサイズ感が大きく変わらないのが印象的だ。ドコモのプロダクト部長、安部成司氏は「FOMA(3G)を最初に提供したときは、すごく大きかったり、厚かったりしたが、(今の5Gスマートフォンなら)切れ目なく4Gから5Gに移っていける」と、各社の端末を評価する。
「アンテナ特性もあり、6.7型より小さくするのは難しかった」(Samsung Electronics関係者)とサイズはやや大きいものの、スマートフォンそのものが大型化していることがそれをカバーする。より高精細な映像を見られる5Gでは、むしろ画面が大きい方がいいという考え方もある。
ただ、裏を返すと、スマートフォンの形状自体は変わっておらず、単に通信速度が速くなっただけとも受け取られかねない。5Gならではの機能の提案はまだまだ少なく、通信方式だけを何とか5Gに対応させた端末が多かった印象も受ける。ユーザーをスムーズに5Gへ移行させていくためには、“現行モデルそのまま”であることも重要だが、端末を普及させるには、5Gならではの提案も必要になりそうだ。
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