今日から始めるモバイル決済

なぜゆうちょ銀行がスマホ決済に参入するのか? 「ゆうちょPay」の狙いを聞く:モバイル決済の裏側を聞く(1/2 ページ)

» 2019年04月11日 06時00分 公開

 2019年5月、ゆうちょ銀行が提供する「ゆうちょPay」がスタートする。まだ具体的な開始日や機能の詳細については語られていないものの、口座数だけで約1億2000万という巨大銀行グループの動向が気になる人は多いだろう。

 同時に、「また○○Payの新しいシリーズか」という冷めた目で見ている方もいるかもしれない。Payシリーズの市場参入としては後発となる同行だが、ゆえに単なる店頭での決済サービスにとどまらない、新しい機能や提案を引き下げてのデビューを目指している。

ゆうちょPay 2019年5月にスタートする「ゆうちょPay」

 今回は、ゆうちょPayが参加するGMOペイメントゲートウェイ(GMO-PG)の「銀行Pay」の概要、これを通じて提供される同サービスの内容、そして狙いについて、ゆうちょ銀行コーポレートスタッフ部門経営企画部担当部長の表邦彦氏に話をうかがった。

ゆうちょPay ゆうちょPayの利用イメージ

なぜQRでスマホ決済なのか?

ゆうちょPay ゆうちょ銀行の表邦彦氏

 小泉純一郎内閣時代に成立した郵政民営化法案を経て2006年に準備会社が設立され、日本郵政グループの金融機関として日本最大級の銀行グループとしての歩みを続けてきたゆうちょ銀行だが、この中で2018年5月に発表された中期経営計画において決済分野への注力が明記され、「お客に新しい便利と安全を提供する」をキーワードに第1弾として提供されるのが「ゆうちょPay」だ。

 問題はなぜQR+スマートフォンアプリという昨今話題の方式を採用したのかという点だが、「利便性」と「お客さまの多くがスマートフォンに慣れ親しんでいるから」という2つの理由を表氏は述べる。

ゆうちょPay ゆうちょ銀行が進める中期経営計画の中でスマートフォン決済への言及がある

 例えばスマートフォンを通じてさまざまなサービスにアクセスするという文化が、若者を中心に既に定着しており、ゆうちょ銀行にとっても大きな可能性のある市場として存在している。そしてQRコード方式を選んだ理由として、導入コストやクレジットカードのような専用端末が不要であり、企業ユーザーにとって導入しやすいという点を挙げている。スマートフォン市場をターゲットにする以上、それを必須とするQRコード方式の選択は自然な流れで、国を挙げてのキャッシュレス化推進の中で、これをバックグラウンドにした“追い風”のようなものへの期待も当然含まれているだろう。

ゆうちょPay 利用者と加盟店側双方にメリットのあるサービスを目指している

 今回ゆうちょPayを展開するパートナーとしてGMO-PGが選ばれ、同社が推進する「銀行Pay」グループの一員となった。問題は、なぜ銀行Payを採用したのかという点だ。

 「組む相手にこだわりはなかったが、できるだけ早くサービスを提供したいという思いがあり、当時既に商用化されている銀行向けのサービスとしては銀行Payしか選択肢がなかったのが実情だ。そうした中、全国規模でネットワークを持ち、既存の取引先を持つわれわれと、地場に強いコネクションを持つ地方銀行が組むことで、両者が異なる加盟店開拓を行うことでのネットワーク拡大を見込んでいる」(表氏)

「銀行Pay」が目指す世界

 ところで、銀行Payとはどのようなものなのだろうか。決済ネットワークの接続サービスであるペイメントゲートウェイを提供するGMO-PGのサービスメニューの1つで、いわゆる銀行同士を接続しての相互決済サービスを実現するものだ。

 GMO-PGは金融機関向けのスマートフォン決済サービスをシステムとしてASP形式でOEM提供し、これをもとに各金融機関が独自の決済サービスを顧客に提供する。最大の特徴は、この金融機関の決済ネットワークが銀行Payを通じてバックエンドで相互接続されている点で、例えば銀行Payに参加するA銀行の加盟店で、同じく銀行Payに参加するB銀行の顧客が決済できる。つまり、これに参加する金融機関が多ければ多いほど加盟店や顧客がさらに増える仕組みで、一種の「銀行Payグループ」のようなくくりが誕生する。

 銀行Payは当初、地銀同士のネットワーク連携を目指していたと思われる。「最新のスマートフォン決済サービスを導入したいが、ゼロから構築したのではコストやリソース面で負担が大きく、ネットワークも貧弱」という悩みを抱えていた地銀らに対し、GMO-PGが導入しやすいシステムをOEM提供。これによってサービス開始までのハードルを下げ、将来的に全国規模で展開して、対抗してくる競合らと渡り合っていこうとしていたと予想する。

 実際、初期のメンバーは横浜銀行や福岡銀行など、地銀の中でも割と大手に属し、最先端の取り組みで知られた著名行がそろっていた。これに熊本銀行、親和銀行、りそなグループ各社、沖縄銀行が加わり、日本地図を埋めるほどではないものの、それぞれの地場での強みを生かしたネットワークを構築しようとしていた。

ゆうちょPay 銀行Payの1つ「YOKA! Pay」を顧客にアピールする福岡銀行

 その意味で、全国のATMと店舗数だけでも万単位の規模を誇るゆうちょ銀行の参画は異色といえる。それまで地方銀行がそれぞれの地域で加盟店開拓を行っていればよかったものが、全国ネットワークを持つ巨大銀行の参入により、加盟店開拓と顧客の両面でいきなり食い合うことになる。

 表氏によれば、もともとゆうちょ銀行の店舗には法人営業に携わる社員がおり、既存のコネクションを生かしつつ、加盟店を開拓していくことになるという。全国区にまたがる大規模な顧客、例えばチェーン店などはゆうちょ銀行の領域であり、それ以外の地方に根ざした加盟店などは地方銀行が開拓していくなど、話し合いのうえで両者がすみ分けていく方向を目指すという。実際、既にそれなりの規模の顧客からは反応を得ており、開始前後のタイミングで発表されるだろう。

ゆうちょPay ゆうちょ銀行を加えたGMO-PG主導による銀行Payのネットワーク

 ゆうちょPayの決済は即時振替に対応し、利用者からは即時決済による引き落としが発生する一方で、加盟店には翌日入金が行われる。マルチバンク対応による銀行間での“またぎ”での決済が発生した場合、2行間での資金の振り分けはGMO-PGが行い、それぞれの手数料を差し引いて取り分とする。ゆうちょPayの加盟店手数料については相対取引となっており、クレジットカードなどと同様にケースごとに異なるようだ。資金分配の詳細もまだ話し合いが続いている段階で、今後サービスインまでに確定するだろう。

 このような仕組みを見る限り、「銀行Payに属するサービスならどれを使っても同じじゃないか?」という感想を抱くかもしれない。ただ、ゆうちょPayの場合は全国の郵便局を含むリアル店舗窓口がある他、サービス開始のタイミングで専用のコールセンターを設置して対応に当たるとのことで、「デジタルだけでは不安」という高齢層や機械に不得手な層も取り込める。表氏によれば、加盟店目標は現時点で公表しないものの、ユーザー数は開始から3年後の2021年度中に1000万口座と、既存の口座数の1割弱をスマートフォンアプリで取り込む計画だ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月01日 更新
  1. 免許証画像が漏れると何が“ヤバい”のか タイムズカーで最大約660万件の個人情報漏えいで考えられる「3つのリスク」 (2026年09月29日)
  2. 「iPhoneのアプリが起動しない」報告相次ぐ 端末再起動やアプリ削除で解決しない理由 (2026年09月29日)
  3. KDDI、楽天モバイルへのローミング状況を公開 9月末から大幅減 10月から新たな枠組み (2026年09月30日)
  4. 「iOS 27.0.1」配信開始、iPhone 18 ProのFace IDやカメラの不具合を解消 「iOS 26.7.1」も (2026年09月29日)
  5. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  6. ドコモが「iPhone 17e」「iPhone 16」を値上げ 17e(256GB)と16(128GB)は残価も増額 (2026年09月30日)
  7. Nothingは経営危機なのか 黒住氏は日本撤退を否定、値上げは「モデルチェンジのタイミング」で (2026年09月29日)
  8. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」どちらが買いか? 2機種を使い込んで分かった“スペック表にない違い” (2026年04月29日)
  9. 20万円超のXperiaを「買い」に変えた3週間 ソニーが「モニタープログラム」を実施した理由 (2026年09月26日)
  10. ドコモが「iPhone 17」を値上げ、19万9793円スタートに MNPは残価増で“2年実質33円”を維持 (2026年09月18日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー