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楽天の強みは「決済のパーツがそろっていること」 楽天ペイメント中村社長に聞くモバイル決済の裏側を聞く(2/4 ページ)

» 2019年05月27日 10時55分 公開

楽天が持つ3つの“強み”

 楽天ペイのアプリが競合他社のサービスと比較して優れている点として、中村氏は3つを挙げる。1つは「簡単にログインできる」こと。楽天IDさえあればそのままアプリへのログインできるため、通常のアプリやサービスのセットアップにかかる手間を省略できる。既に楽天市場など楽天関連のアプリを利用しているユーザーなら、楽天ペイのアプリをインストールして起動しただけで自身の楽天IDのログイン画面が表示され、セキュリティコードを入力するだけですぐに楽天ペイの利用を開始できる。

 セキュリティコードの入力も初回だけで、2回目移行は省略できる。「20ステップなどものすごく複雑な手順を踏んで銀行口座を登録することもなく、『いつも使っているIDをどうぞ』といえるのは楽天ならではの強みだと思います」と中村氏は話す。特に楽天IDは基本的に決済情報がひも付くため、この点で競合サービスよりも優位にあると考えているようだ。

 次に同氏が挙げるのが「楽天ポイント」だ。「2018年の1年間だけで2500億円分のポイントが出ており、これは恐らく世界最大のポイントプログラム。他の追随を許さないと思います」と胸を張る。

 「ポイントプログラムは『どれだけたまってどれだけ使えるか』が魅力だと思うのですが、“たまる”という意味ではクレジットカードを使ってもいいし、楽天市場で買い物をしてもいいし、リアル店舗でポイントカードを出してもいいですし、これが全国何百万箇所で利用できるわけです。重要なのは『自分の生活動線でしっかりたまる』ということです。平日の通勤から週末の買い物まで、いろいろな生活シーンをカバーできるよう店舗網を広げています。

 楽天ポイントは2014年からオンラインの世界を飛び出し、リアル店舗でのパートナープログラムを開始しました。この数年間でリアルの加盟店開拓をやってきたわけですが、普段の買い物や旅行商品といった具合に、オンラインから日々利用する小売やレストランまで、どんどんポイントを使ってくださいということです。昔のクレジットカードであったように、カタログが送られてきて『たまったポイントで対象商品を選んでください』というのとは違うのです」(中村氏)

 実際、このポイント効果は非常に大きいようで、前述の楽天カードがクレジットカード業界取扱高で1位にランクインした原動力となったのが、ポイントプログラムの存在だと日経新聞は指摘している。筆者も、生活圏にあるラーメン屋やコンビニで楽天ポイントが使える場所が日々増えていることを実感しており、ある意味で「楽天ペイが使えます」という表記よりは“響く”のではないかとも思っている。

 中村氏によれば、自社のアンケート調査結果で、仮に楽天スーパーポイントで100円に対し1ポイント、家電量販店のキャンペーンで100円に対し2ポイントのようなケースがあった場合、同じ商品の購入で前者を選ぶユーザーが圧倒的だったという。これは3〜4倍程度の差がなければ縮まらないとのことで、それだけポイントプログラムとしては強力だということを意味している。

 3つ目の強みは「加盟店網」だ。「決済でどんなに最先端で格好いいものを作っても、『じゃあどこで使えるの?』というのがユーザーにとっての認識なのです。楽天ペイ、楽天ポイント、楽天Edyの3つを組み合わせて全国300万箇所で利用できるので、この“かけ算”による総合力でユーザーの皆さんに喜んでいただければと思います」(中村氏)

地方を中心に「いまEdyが熱い」

 どうしても昨今の流れからQRコードやバーコードを使ったアプリ決済に着目しがちだが、実は楽天の「ペイメント戦略」を補完する重要なピースとなりつつあるのが「Edy」事業だ。Edyは日本最初のFeliCa対応電子マネーとして2001年にスタートしたが、コンビニを中心にさまざまな店舗で採用が進んでいく。

 他方で、交通系電子マネーとして独自の商圏を持つ「Suica」や、ポストペイ方式の「iD」「QUICPay」、流通系電子マネーと呼ばれる「WAON」「nanaco」が登場する中、独立系電子マネーとして歩んできたEdyは特色を出せず、Apple Payの国内上陸時にはサービスとして採用されなかったなど、苦労を重ねてきたようにも見える。「Edy天国」と呼ばれ、あちこちに採用店舗やチャージ機が設置された沖縄のような例もあるが、そんなEdyは楽天による買収後にどのようなポジションを得たのだろうか。

楽天ペイメント Edyがメジャーな存在として活躍する沖縄の那覇市。街の至る所で楽天Edyのロゴを見かける

 「Edyですか? 増えていますよ」と中村氏は筆者の疑問にシンプルに答える。「いわゆるコンビニで使える電子マネーといったところから、現在では非常に変わっており、特に地方で『Edyが熱い』です。地方のスーパーマーケットにEdy導入をどんどん推進していて、楽天グループ入りからその戦略が顕著になりました。地方のスーパーマーケットというのはその地方で愛されて何十年も商売を続けていて、いわゆる地方の名士になっています。

 一方で、やはり巨大資本に押されて淘汰(とうた)の波というのが数年前からやってきていて、そこでやむなく資本構成を変えた店というのもあるわけです。ある日、なじみのお客さんがレジにやってきて財布を開くと、そこに巨大資本のスーパーが扱う電子マネーのカードが入っていて、何ともいえない気持ちを抱くようです。僕らが全国をまわるうちにこうした声を聞くようになり、『それなら僕たちも超一流の資本量のあるスーパーマーケットがやっているのと同じような仕組みを提供できますよ』とお声がけするのです」(同氏)

 ただ中村氏によれば、そうした地方スーパーのフロントの部分をそのまま楽天が乗っ取るのではなく、あくまで「自身の足で立って自分たちの手でマーケティングし、武器として使ってください」というスタンスでバックエンドのシステムを提供するのだという。これは楽天市場や楽天トラベルがWebサイト上で行ってきた流れと同様で、基本的な場は提供するけれども、各スーパーが導入するのは券面がそのスーパーのロゴであり、そのブランドを前面に推し出す。

 システム自体もユーザーとなる各スーパーには使いやすい形で用意しているが、AIなどの最新技術も盛り込んでいる。例えば和歌山や大阪を中心に展開するスーパーチェーンの「松源」では券面にでかでかと松源ロゴが印刷されており、その横に小さめに楽天Edyと楽天ポイントのブランドが記されている。その特徴は店舗のハウスマネーとしてポイントプログラムが利用できるだけでなく、ここでためたポイントを松源以外の楽天Edyや楽天ポイントの利用できる店舗でも流用できる点にある。

 「例えば、沖縄にはサンエーというスーパーがあって、そこが楽天提携のカードを発行しているわけです。那覇空港(ANA)のターミナルにある売店ではEdyが使えるので、そこでサンエーのポイントがたまるんですよね。松源の場合は楽天スーパーポイントを採用していますが、サンエーの場合は楽天Edy提携のみで(楽天スーパーポイントは)強制していません。そのあたりは店舗側の選択で、あくまで自分のツールとして使ってもらうことが重要で、空港に行かなくても地域活性化につながっていればいいと思います。

 サンエーの場合は地域の雄ですから、そこでためたポイントがEdyとして周辺地域でどんどん使われるようになり、足腰強く経済圏がまわっていくわけです。こういう例は全国にあって、Edyが地域活性化に一役買っているというわけです。先日は同僚が飛騨に行って地元ファンクラブの『飛騨ファンクラブ』の写真を送ってきたのですが、これも楽天Edyがひも付いていて一種のふるさと納税のような地域貢献に役立っているのです。あと、最近では高知が熱いですね。主要どころのスーパーは網羅しているのではないかと思います」(中村氏)

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