今日から始めるモバイル決済
インタビュー
» 2019年05月27日 10時55分 公開

モバイル決済の裏側を聞く:楽天の強みは「決済のパーツがそろっていること」 楽天ペイメント中村社長に聞く (1/4)

コード決済を中心に、モバイル決済サービスは乱立の様相を呈している。こうした中、モバイル決済業界では古参に当たる楽天は、どんな戦略を描いているのか。2019年4月1日に誕生した楽天ペイメントの中村晃一社長にお話を聞いた。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 日本におけるスマートフォンを使った「キャッシュレス決済」の第2幕が開かれつつある。QRコードやバーコードを使った、いわゆる「コード決済(アプリ決済)」の日本での口火を切ったのは2016年5月にサービスを開始した「Origami Pay」だが、「LINE Pay」や「楽天ペイ」などの参入に続き、2018年には次々とニューカマーが登場したことで、さながら「○○Pay」の怪獣大決戦のような様相を呈してきた。

 2019年前半には銀行各社の新サービスの他、さらにはコンビニをはじめとする流通各社の参入も続き、10月1日に実施されるとみられる消費税増税に付随したポイント還元施策に合わせる形でサービスが出そろうことになる。ポイント還元施策が続く2020年夏までは各社がしのぎを削る形になるが、その後、体力の少ない事業者や戦略転換を迫られた事業者のサービスを中心に統合や撤退が進み、今後1〜2年ほどで大勢が判明すると筆者はみている。

 こうした中、アプリ決済の世界でも先行グループに属し、スマートフォン決済サービスとしては古参にあたる「Edy」ブランドを2009年に買収した「楽天」は、どのような業界地図や将来のマイルストーンを描いているのだろうか。約1年前に実施した「楽天ペイ(実店舗決済)」のインタビューに続き、組織改編で2019年4月1日に新たに誕生した「楽天ペイメント」の中村晃一社長に、楽天グループが楽天ペイメントで目指す「決済」の世界について話を聞いた。

楽天ペイメント 楽天ペイメントの中村晃一社長

「楽天ペイ」だけではない決済ツール

 「これまでいろいろな会社に属していたもののうち、決済ならびにマーケティングのサービスを統合して管理する会社として設立されたのが『楽天ペイメント株式会社』です。楽天ペイ、楽天ポイントカード、楽天Edy、楽天チェックといったサービスが入っており、組織的には『楽天Edy株式会社』と『楽天ウォレット株式会社』という2つの子会社があります。『ペイメント』というのが昨今すごく注目されていますし、今までになかったようなフェーズを迎える中で、一気呵成(かせい)にやっていこうという体制が『楽天ペイメント株式会社』というわけです。意思決定を早くし、機動的に動ける体制を作るというのが、新組織を作った理由です」と中村氏は新会社の全体像を説明する。

 「金融系のサービスをいろいろ持っている会社」という漠然としたイメージを楽天に抱いていた方はいるかもしれないが、このうち「決済」に関するパーツを切り出したのが楽天ペイメントとなる。

 とはいえ、○○Payがちまたにあふれており、派手なキャンペーン合戦が行われている中で埋没してしまう危険性も高い。決済サービスを提供する各社がそれぞれに特色を打ち出したキャンペーンを展開しているわけだが、楽天グループならではの特色として中村氏が挙げるのは「いろいろな決済のパーツを持っている」ことだという。

 例えば2018年1月の日本経済新聞の報道によれば、楽天カードの2017年4〜9月期の取扱高が3兆円に達し、三菱UFJニコスなどの銀行系大手を抜いて日本首位に躍り出たという。電子マネーのEdy、2002年からスタートしたポイントプログラム、そして実店舗決済を担う「mPOS(エムポス)」事業、QRコードの楽天ペイまで、幅広い「決済に関する“ツール”」を持っている。中村氏は直前までは楽天カードに在籍していた他、楽天市場や楽天トラベル、そして各種パートナー事業を歴任してきた経緯もあり、比較的決済畑が長い。その同氏は「単一の決済手段を提示して『さぁ使ってください』と言っても、なかなか使ってもらえるものではない」と述べている。

 「決済というのは国ごとに特色があります。ある地域ではQRコードを使った決済がものすごく爆発的に伸びていますが、欧州はそうではありません。デビットカードやクレジットカードの利用が多く、それを使った非接触決済も日本とは違うNFC方式が主流であり、少しずつ違いがあるわけです。昔からあった慣習や国民性があるかは分かりませんが、当時出てきた最新のテクノロジーみたいなものをそのタイミングで融合するかで決まると思っています。

 とはいえ、新しい決済手段が出てきたからといって、既存のインフラを全部捨ててそちらに移行した方がいいというのは乱暴な理論だと思っています。キャッシュレス推進を政府が掲げており、(決済比率約20%)という50兆円のキャッシュレス決済マーケットを2025年までに倍の100兆円(決済比率約40%)にする目標がありますが、過去数十年かけて作ってきた50兆円の市場を後わずか数年で倍にするというのは生半可なことでは難しいと思います。

 思い切ったことをやらなければいけないわけですが、(単一の手段にこだわらず)あらゆるものを使ったほうがいいわけです。なるべく既存の競合たちが敷いてきたインフラを生かしつつ、(楽天が持つ全ての資産を生かしながら)進めていくことが重要、かつキャッシュレス推進に一番貢献できるのではないかと考えています」(中村氏)

「楽天ペイ」アプリをリニューアル

 そこで意味を成すのが、2019年3月に大幅にリニューアルされた「楽天ペイ」アプリだ。「使える資産は全て使う」というスタンスの楽天だが、「ユーザー視点ではなるべくインタフェース上は統合していった望ましい」(中村氏)ということで、1つのアプリに「楽天ペイ(アプリ決済)」「楽天キャッシュ」「楽天ポイントカード」「楽天Edy」の機能を包含し、“タブ”を切り替えるように機能を簡単に呼び出せる仕組みを採用している。

楽天ペイメント 2019年3月18日に「楽天ペイ」アプリをアップデート。楽天キャッシュを使った個人間送金に対応する他、楽天ポイントカードをより簡単に表示できるようになった

 ただ、「やりたいことの少ししか実現できていない」(同氏)というように、まだ開発中の途中段階であり、例えばEdyは同アプリ上では利用できず、ディープリンクで呼び出す状態になっている。今後はEdyの仕組みをSDK化してより統合していく予定だというが、「楽天の決済」と呼べるサービスは全て1つのアプリで利用可能になる方向だ。

 楽天ペイの新アプリで特徴的なのが楽天ポイントと楽天キャッシュだ。前者はアプリ内の機能切り替えのみでポイントカードを呼び出せるようになったため、2つのアプリに分離していた頃より相互利用が進んだという。同様に、楽天グループ内に10年以上前から存在していた電子マネー「楽天キャッシュ」を改めてピックアップすることで、その活用を促していく考えだ。

 このサービスは以前より楽天が取得していた、資金決済法における「資金移動業免許」と「前払い式支払い手段の免許」の2つを利用したサービスだが、これに対人送金用のインタフェースを付与することで「送金サービス」としての活用が可能になる。

 楽天IDのユーザー同士の他、同IDを持たないユーザーでもSNS経由などでリンクを送ることで送金が可能になる。単体のサービスとしてはなかなか活用されなくても、決済や送金関連機能を1つに集めることで、より活用が進みやすくなるというのは、新アプリリリースから1カ月程度で楽天が学んだことだ。

楽天ペイメント 楽天キャッシュをリンクから受け取ったところ
       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう