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楽天の強みは「決済のパーツがそろっていること」 楽天ペイメント中村社長に聞くモバイル決済の裏側を聞く(4/4 ページ)

» 2019年05月27日 10時55分 公開
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完全キャッシュレススタジアムの効果は?

 キャッシュレス普及という視点でもう1つ難しいことに「先入観」が挙げられる。「難しいのではないか?」「メリットはあるのか?」「安全なのか?」といった不安が邪魔して、そもそもサービス利用のスタート地点に立ってもらえないという現象だ。

楽天ペイメント 楽天生命パーク宮城とノエビアスタジアム神戸では、2019年開幕戦から完全キャッシュレス決済を実施(写真は楽天生命パーク宮城)

 幸い、楽天は自身がグループで保有する野球団とサッカーチームがあり、そのホームとして楽天生命パーク宮城とノエビアスタジアム神戸の2つがある。両スタジアムともに今シーズンからキャッシュレス化を推進しており、その模様は大々的に報じられた。完全キャッシュレスをうたう2つのスタジアムだが、反発も予想される反面、人海戦術によって万全の体制を備えてオープンを迎えた。押しつけというよりも「まずは体験してもらう」ことを主眼に、クレジットカードからEdyまでさまざまな形での「現金を使わない世界」を体験してもらい、「予想以上に簡単だった」という感触を得たようだ。

 単純に現金の受け取りを拒否するのではなく、例えばEdyでビールを買うと50円引きや100円という形で明確なメリットを出せるようにしたり、子ども利用を想定して小銭でEdyチャージが可能な専用の機械を用意したりと、チャージ機と残高照会機の計1000台体制で臨んだという。

 実際にどの決済が使われたかはスタジアムごとの特色が出たということだが、物販ではノエビア神戸ではGIANT KILLINGとのコラボレーションカードを発行したり、楽天生命パーク宮城ではファンクラブとポイントカードを組み合わせて選手ICカードのコレクターズアイテムにしたりといった工夫を凝らしたという。全体に飲食は会計がスムーズになる効果があったとのことで、これをきっかけに「キャッシュレスもいいかもしれない」と考える層が出てくるかもしれない。

業界の健全な成長が必要

 以前にPayPay社長の中山一郎氏に話をうかがったとき、同氏は「(○○Payのライバルらは)競合ではなくキャッシュレス市場を切り開く戦友」のように表現していた。ライバル他社も同様のコメントを出しているが、これは中村氏も同様で「コード決済はまだ取り合うようなマーケットではない」と念を押す。2割程度といわれるキャッシュレス決済のうちの、さらにわずかな市場に競合がひしめく状況だが、まずはこれを拡大していくのが重要という点で一致している。

 また同時に中村氏は市場の健全な成長にも触れており、「決済は3つの大きなステークホルダーである『利用者』『加盟店』『事業者』の三角形で成り立っており、どこかに負荷がかかると崩れてしまう」とも警告する。現在サービス各社は拡大のためのマーケティング活動に一生懸命で、さまざまなキャンペーンを展開しているが、その1つに加盟店負担が少ない(もしくはゼロ)というものがある。

 だが実際にはクレジットカードの専用端末を置く負担を「利用者が高機能なスマートフォンを持ち込むことで代替している」にすぎず、実際のコスト負担を広く薄く分散しているだけだ。「日本の高いクレジットカード手数料は悪」という風潮も聞こえてくるが、相応のメリットを加盟店に提供できるのであれば問題ないというのが同氏の認識だ。

 加盟店からカード手数料を徴収し、ビッグデータを分析する形でよりカードを活用してもらえるよう工夫をし、さらに利用者がカードを加盟店で使うという形で三角形のサイクルがまわる。これは楽天カードというクレジットカード事業を持つ楽天グループがビジネスとして10年以上にわたって続けてきたものだ。実際、この決済手数料だけで楽天グループの金融事業は成り立っており、決済関連だけで2000億円規模の売上があるという。

 中国で盛り上がった新しいタイプの決済サービスでは、利用者の行動データをマーケティングに活用して新たな収益源とする……というインターネット時代のビジネスモデルの展開が始まっているが、「データの扱いに気を付ける」「変な使われ方をされない」を念頭に、その信頼性で楽天の決済ビジネスは成り立ってきたと中村氏は強調する。

 もしこの三角形が健全な循環を維持できない場合、その外でマネタイズを考えざるを得ず、“議論の余地のある”ビジネスモデルに目を向けることになるというわけだ。インターネットの発展とともに歩んできた楽天だが、それになぞらえる形で黎明(れいめい)期にあるこのモバイル決済業界の今後の発展を望むのであれば、「無責任なことをすべきではない」と同氏は述べる。

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