一方、Samsung Electronicsの「Galaxy A」シリーズ2019年モデルと、Xiaomiが分社化した「RedMi」の新シリーズは、Huaweiのスマートフォンのサブブランド「Honor」をライバル視した製品を多数擁している。ミッドレンジモデルだけではなく、ハイエンド製品もそろえていることが大きな特徴だ。
2019年のGalaxy Aシリーズは、「Galaxy A10」から「Galaxy A80」まで半年の間に9モデルが一気に登場した。最上位のGalaxy A80は4800万画素と800万画素のデュアルカメラをポップアップ&回転式とし、ディスプレイのノッチを廃止。以下「Galaxy A70」「Galaxy A60」とカメラスペックやディスプレイサイズを落としたモデルを並べつつ、エントリーモデルとなるGalaxy A10まで隙間なく製品がそろっている。2019年のGalaxy AシリーズはGalaxy S/Noteシリーズの下位モデルではなく、全く別ラインとしてラインアップが構築されているのだ。
Xiaomiが分社化した「RedMi」(紅米)は、Xiaomiのスマートフォンポートフォリオの大改革といえる。Xiaomiはもともとハイスペック・低価格のスマートフォンを中心に展開していたが、より価格を引き下げた「超コスパモデル」として登場したRedMiがXiaomiの販売台数の大半を占めていった。しかしその結果、Xiaomiのイメージは「iPhone対抗製品」ではなく「安いスマホ」になってしまったのだ。
Xiaomiはメインラインの「Mi」シリーズの性能を追求し、新しい機能を取り入れ、5Gに対応させることでプレミアムモデルに引き上げ、価格勝負のRedMiはあえて別会社にすることでユーザー層を切り分けようとしている。それだけではなく、RedMiのラインに上位モデルも加えることで、RedMiそのもののブランド力を高めようとしている。
メインラインのP/MateとNovaだけではなく、別のラインとしてHonorを加えたHuaweiの製品ポートフォリオは鉄壁ともいえる。SamsungとXiaomiはGalaxy AとRedMiを強化することで、第二第三のHonorの座を狙っている。Huaweiにとって怖い存在は、実はこの2つの製品群となるかもしれない。
Huaweiがもしも失速すれば、今のスマートフォン各社の販売順位は大きな影響を受ける。それにより新たな競争が引き起こされるのならば、それはそれで業界にとってプラスの要素になるだろう。しかしHuaweiがここ数年のスマートフォンの技術を高めた功績は無視できない。Huawei問題の長期化は、スマートフォン業界全体の技術停滞を引き起こしかねないのだ。政治や経済の駆け引きが技術革新を妨げぬよう、早期の決着を祈りたいものである。
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