複数の報道にもある通り、米商務省は5月15日(米国東部時間、以下同)、中国Huawei(華為技術、ファーウェイ)とその関連企業68社を同省産業安全局(BIS)の「エンティティリスト(Entity List)」に加えた。これにより、リストに記載された企業に米国から製品やサービスを輸出する場合、BISの承認が必要となった。事実上の「禁輸措置」だ。
一方で同省は5月20日、リスト記載企業に対して「一時的一般許可証」を発布。5月16日までに有効になった契約について、5月20日から90日間に限り、携帯電話のソフトウェア更新やネットワークの保守・運用に必要な一部の取引を認めた。この措置は、延長する可能性も検討されているという。
この記事では、米商務省の動きに伴いHuaweiのスマートフォンやタブレットに起こりうる影響を解説する。
BISは、米国外への製品やサービスの輸出に関して、何らかの懸念がある個人や団体・企業を4つの「懸念先リスト」にまとめている。エンティティリストはその1つで、米国の国家安全保障や外交政策の利益に反する個人、企業、研究機関、または政府機関が記載されている。
リスト記載企業に米国から製品やサービスを輸出する場合、または米国内でリスト記載企業に製品やサービスを譲渡する場合、輸出(譲渡)者はBISから承認(ライセンス)を取得しなくてはならない。米国から第三国を経由した輸出(再輸出)も同様だ。
「売る側が承認を取れば問題なく輸出できるではないか」と思われるかもしれないが、この承認申請は「原則拒否」ポリシーを取っており、よほどのことがない限り通らない。
「米国外で生産された製品やサービスを買えば問題ない」とも思われるかもしれないが、米国原産の部品や技術、ソフトウェアを利用している場合は、その利用比率(金額ベース)次第では国外生産品でも「再輸出」とみなされ規制対象になる。
ともあれ、エンティティリストに記載されると、米国に由来する製品やサービスを買い入れることが難しくなってしまうのだ。
Huaweiと関連企業68社のエンティティリスト追加は、イランへの金融サービスの提供など「国際緊急経済権限法」に違反したことと、その捜査に対する同社による妨害を理由として挙げている。追加対象の関連企業には、日本法人である華為技術日本(ファーウェイ・ジャパン)も含まれている。
エンティティリストに入ったことで、Huaweiは米国由来の製品やサービスの買い入れ(契約)が難しくなる。その影響はどのように現れるのだろうか。
スマートフォンやタブレットに絞ると、ハードウェア(本体)にはさほど大きな影響は出ないと思われる。プロセッサやモデムといった中枢部品は自社グループ内で用意できる上、それ以外の部品も中国内あるいは米国以外の国から調達できるからだ。
一方で、ソフトウェアには大きな影響が出る可能性がある。
Huaweiのスマホやタブレットは、Googleの「Android(アンドロイド)」をOSとして採用。中国以外の市場では「Google Play」「YouTube」「Googleマップ」など、Google純正のサービス用アプリもプリインストールしている。一部の機種にはDolby Laboratoriesの音響技術「Dolby Atmos」も搭載されている。
ただ、GoogleもDolbyも米国企業。両社がソフトウェアをHuaweiにライセンスすることは「米国からの輸出」に該当する。法令を素直に解釈すれば、両社を含む米国企業がHuaweiにソフトウェアを新規ライセンスする場合、BISから事前に承認を取得しなくてはならないということになる。
このことによる影響は、「発売済み機種」「発表済み未発売機種」「未来の機種」に分けて考える。
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