長期契約ユーザーへの優遇も禁止する総務省――吉澤社長「感謝の意味があり、補助には当たらない」石川温のスマホ業界新聞

» 2019年08月02日 18時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 「端末割引上限2万円」「解除料1000円」など、総務省による改正電気通信事業法の中身はやりすぎの感がある。そんななか、もうひとつ波紋を呼んでいるのが、長期契約ユーザーへの優遇の見直しだ。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年7月27日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


 長期契約者に対しては、NTTドコモがポイント付与を適用している。当然のことながら、NTTドコモには契約して10年、15年を超えるユーザーが多い。

 しかし、総務省では「長期契約ユーザーを優遇することは、競争上の観点からよろしくない。長期契約ユーザーの優遇を辞めるべし」というスタンスだ。

 だが、ここ最近、長期契約ユーザーの優遇が強化されたのは、数年前に総務省の有識者会議で「同じ携帯電話会社を使っているのに、優遇されないのはおかしい」という指摘があったからだ。当時も競争政策を議論している中で、本来であれば長期契約ユーザーを優遇するのは競争政策とは逆の方向性になるのは明らかだった。しかし、そうしたことは配慮せず、長期契約ユーザーを優遇するように各キャリアを促したのは総務省なのだ。

 にもかかわらず、たった数年で、全く逆のことを言い始める総務省の朝令暮改っぷりには本当に理解に苦しむ。

 長期契約ユーザーの優遇を辞めることで、一番、被害を被るのは間違いなくNTTドコモだろう。

 そこで7月26日に行われたNTTドコモの決算会見で、吉澤和弘社長に「総務省による長期契約ユーザーの優遇阻止についてどう思うか」というのを聞いてみた。

 すると「パブリックコメントも出したが、ユーザーが同じキャリアをずっと使い続けているのは、料金、ネットワーク、サービスを信頼してもらっているからだ。その感謝としてポイントなどを付与している。長く使っていただいている感謝の意味があり、補助には当たらないと考えている。このまま、進めていきたいと思う」(吉澤社長)とのことだった。

 ギガホ・ギガライトによって、だいぶ長期契約優遇がショボくなった感があるが(毎月、割引もしくはポイント付与から誕生月に最大3000ポイント付与に変更)、それでもあるに越したことはない。

 そもそも「キャリアを変える気はない。同じキャリアを使い続ける」という人のほうが圧倒的であるため、そうした人が同じキャリアを使い続け、優遇されるのは、企業が提供するサービスに於いては至極、当たり前のことではないか。

 総務省は料金競争を起こさせようと躍起になっているが、結果として優遇策をすべて奪い、ユーザーの不利益にしかなっていないのではないか。

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