世界を変える5G

ソフトバンクの5G戦略を読み解く エリアが“超限定的”なのはなぜ?石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2020年03月07日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

エリアの拡大は「DSS」の対応待ちか、夏時点でもエリアは「限定的」

 実際、ソフトバンクが公開した5Gのエリアマップを見ると、3月27日時点で利用できる場所は、驚くほど少ない。例えば東京23区では、東京駅から新橋駅、浜松町駅周辺までや秋葉原駅周辺は4月末までにエリアになる予定だが、それ以外は全て「夏以降」になっている。夏以降のエリアもまだまだ“まばら”な状況で、新宿駅周辺や渋谷駅周辺などの副都心や、お台場など、ごく一部だけで利用できる状況は変わっていない。

ソフトバンク 東京23区でも、サービス開始当初のエリアは非常に狭い

 東京23区以外の首都圏までスコープを広げただけで、エリアの密度はさらに低くなる。神奈川県、千葉県、埼玉県でも、スポット的に5Gエリア化する場所はあるものの、非常に限定的だ。ソフトバンクのネットワーク本部 本部長の野田真氏も「全国面積のような見方をした場合、五輪時点ではまだ限定的になる」と言い、エリアの拡大には時間がかかることを明かす。

ソフトバンク 夏ごろには新宿や渋谷、お台場にエリアが広がるが、首都圏レベルで見ると、圧倒的に4Gのエリアの方が広い

 周波数が低く、エリア構築に向くといわれるSub-6だが、それはあくまでミリ波と比較してのこと。4Gのときに局地的な容量対策で使われていた2.5GHz帯や3.5GHz帯よりも、ソフトバンクの導入する5Gの3.7GHz帯は高い周波数になる。周波数は高ければ高いほど直進性が強くなるため、1つの基地局でカバーできる範囲は狭くなってしまう。3.7GHz帯は衛星との干渉もあり、基地局展開が難しいという事情もある。サービス開始当初のエリアが超限定的になるのは、規定路線だったといえそうだ。

 一方で、ソフトバンクは2021年に人口カバー率90%を目指す。現状とは大きなギャップがあるように見えるが、鍵になるのが4Gで使われている既存の周波数帯だ。榛葉氏は4月8日の正式サービス開始を発表した楽天モバイルを意識しつつ、「4000とか8000とか数万というレベルではなく、この段階で既に23万の基地局がある。これがプライオリティを付けられた形で、効率的に5Gの基地局に転換されていく」と語った。人口カバー率90%には、4Gから転換した基地局も含まれているというわけだ。

ソフトバンク 4Gとして設置した23万局の基地局を、5Gに転換していく方針だ

 菅野氏は、「既存の周波数が使えるかどうかが見えてくれば、立ち上げが早くなる」と語っていたが、ソフトバンクはここを5Gの“本命”と考えていることがうかがえる。基地局の中にはソフトウェアの切り替えで5Gの電波を吹けるものも多いため、総務省からの認可が下りれば、垂直的にエリアを拡大できる可能性がある。

 同じ周波数に同居する4Gと5Gの割り当てを動的に変える技術の「DSS(Dynamic Spectrum Sharing)」も、4Gの頃からの基地局ベンダーであるEricssonが導入済み。5Gで採用を拡大するNokiaも、2020年にDSSを採用する方針で、エリア拡大のピースはそろいつつある。ソフトバンクが5Gのエリア拡大に本腰を入れるのは、このタイミングからになりそうだ。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月24日 更新
  1. 「iPhone 16e」が突然登場 「iPhone SE」とは微妙に違う立ち位置【2025年2月を振り返る】 (2025年12月22日)
  2. 「楽天カード」は2枚持てる? 2枚持ちのメリットや注意点を解説、持てない組み合わせもあり (2025年12月23日)
  3. “やまぬ転売”に終止符か 楽天ラクマが出品ルール改定予告、「健全な取引」推進 (2025年12月23日)
  4. 「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2025」開催 ハイエンド/ミッドレンジで10機種を選定 (2025年12月22日)
  5. シャープのAIロボ「ポケとも」と暮らしてみた スマホよりも自然に会話ができる“もう1人の家族”だ (2025年12月22日)
  6. メルカリで詐欺に遭った話 不誠実な事務局の対応、ユーザーが「絶対にやってはいけない」こと (2025年04月27日)
  7. 「iPhone 16e」の価格が出そろう Appleと4キャリアで最安はどこ? 一括価格と実質負担額を比較 (2025年02月21日)
  8. 「HUAWEI WATCH GT 6」レビュー:驚異のスタミナと見やすいディスプレイ、今買うべきスマートウォッチの有力候補だ (2025年12月24日)
  9. 「スシロー」アプリはスマホのバッテリーを消費しやすい? 無駄な動作を抑える方法 (2025年12月23日)
  10. 最長14日駆動のスマートウォッチ「GARMIN Venu 3」がセールで13%オフの4万8309円で販売中 (2025年12月22日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー