5Gが創出する新ビジネス

ソフトバンクが新たな法人戦略を発表 新型コロナ対策や「プライベート5G」など(1/2 ページ)

» 2020年05月20日 21時26分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 ソフトバンクは5月20日、同社の法人事業に関する説明会をオンラインで実施。新型コロナウイルスの影響を受けた企業への取り組みや、同社に割り当てられた周波数帯を使って場所を限定した5Gネットワークを構築する「プライベート5G」など、法人向け事業に関する新たな取り組みについて説明した。

ソフトバンク 法人事業説明会に登壇するソフトバンク今井氏。新型コロナウイルス感染予防のためオンラインでの開催となった

新型コロナでテレワーク需要が劇的に増加

 ソフトバンクは法人事業を成長領域の1つと位置付けて力を注いでおり、法人事業に関する説明会を実施するのは2019年7月に続いて2度目となる。これまでも企業のデジタルトランスフォーメーションを軸に法人事業拡大に取り組んできた同社だが、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響が企業にも直撃し、働き方そのものを大きく変える必要が出てきている状況だ。

 そうしたことから、ソフトバンクで法人事業を統括する代表取締役副社長執行役員兼COOの今井康之氏は、2020年3月下旬に約1000社の顧客企業に対し、新型コロナウイルスの影響を受けていま何を必要としているか緊急のアンケートを実施したとのこと。その結果、9割近くの企業から挙がったのがテレワークに関する要望だったという。

ソフトバンク 新型コロナウイルスの影響を受けた企業からの要望は、テレワークに関するものが87%と圧倒的に多かったという

 多くの企業ではテレワークによりコミュニケーションが取りづらくなっただけでなく、社内システムへのアクセスができない、固定電話への対応や契約書への押印などで出社を余儀なくされるなど、テレワークを実現する上で整っていないことが多く課題として挙がったという。そうしたことから、ソフトバンクでは、それらの課題を解消してテレワーク需要に応えられる環境を、顧客に提供することに力を入れてきた。

 その結果、スマートフォンやWi-Fiルーターなどのモバイル端末販売が前年比で1.2〜1.5倍に伸びたが、それ以上に伸びているのがテレワークに欠かすことのできないリモート、クラウド関連の契約だ。実際、リモートアクセスに必要な統合型VPNサービスの「SmartVPN」は前年比で18倍、Web会議サービスの「Zoom」に至っては2020年3月と4月の新規契約ID数が、2020年1〜2月と比べ41倍と、大幅な伸びを見せた。

ソフトバンク テレワークで大きな注目を集めたWeb会議サービスの「Zoom」は、2020年3〜4月の新規契約ID数が、前2カ月の41倍にまで急拡大したという

 さらにソフトバンクでは、テレワークに必要なサービスを1つ1つ個別に提供するのではなく、包括的に提供する「Softbank Telework Support」を2020年3月から展開している。Zoomなど複数のサービスを期間限定で無償・割引提供することで、顧客の要望に応えながら新しい働き方の実現をサポートしていく構えだ。

2つのソリューションで“アフターコロナ”に備える

 また今井氏は、テレワーク以外に関しても、新型コロナウイルスの影響下で企業が事業継続するための取り組みを幾つか紹介した。中でも新たな取り組みとして打ち出されたものの1つが、子会社の日本コンピュータービジョンが提供する「SenseThunder」である。

 これはAIによる顔認識と、赤外線のサーモグラフィーカメラを組み合わせることにより、体温検知と顔認証を0.5秒で同時にできるというソリューション。AI技術を活用した顔認識などに強みを持つ中国のセンスタイム・グループの技術を活用し、マスクを着用したままでも認証できるのが大きな特徴だ。

ソフトバンク 「SenseThunder」は赤外線カメラとAIを活用し、検温と顔認証を短時間で同時にこなすのが特徴。マスクを着用したままでも認証できるのが強みだという

 SenseThunderは既にソフトバンクが社員の健康管理のため東京・汐留本社に試験導入しており、2020年秋に移転を予定している東京・竹芝新本社では顔認証と連動した取り組みが検討されている。2020年5月19日には全国のソフトバンクショップとY!mobileショップ約3000店舗へ順次導入することも発表したが、今回新たにイオンが、イオンモールで導入することを発表。主に従業員の健康管理に用いる。

ソフトバンク SenseThunderは既にソフトバンクや、官公庁などいくつかの企業・団体が採用しているが、今回イオンがイオンモールでの採用を明らかにしている

 そしてもう1つがデータ活用に向けた新取り組みである。ソフトバンクではグループのヤフーやAgoopなどが、位置情報や人流変化などのデータを政府などに提供して新型コロナウイルスの感染拡大防止に役立ててきたが、新たな取り組みとして打ち出されたのが米国のMapboxと、2020年3月に日本で合弁会社を設立したことである。

 Mapboxは地図上に天気や交通、人口流動などのデータ、さらには企業が持つデータなどを載せることで、企業の目的に応じたカスタマイズができる地図プラットフォームを提供する企業。日本では既に日本経済新聞が、世界の新型コロナウイルス感染状況を示すのにMapboxのプラットフォームを活用しているという。

ソフトバンク Mapboxは、さまざまなデータを追加してカスタマイズできる地図プラットフォームを展開する企業。ソフトバンクは同社との合弁会社設立で、新技術を活用したサービスへの地図活用を進めていく考えを示している

 そのMapboxと合弁会社を設立した理由について、今井氏は「5G・IoT時代に向け、自在にカスタマイズできる地図が必要になる」と説明。ドローンや災害救助ロボットなどを自律走行させる上で必要な、リアルタイムに位置情報を取得するための地図作成に取り組む他、今後ソフトバンクが展開するとみられている、MaaSやAI配車などといったサービスと連携した活用も進めていきたいとしている。

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