ソフトバンクの常務執行役員である藤長国浩氏は、アフターコロナの時代に向けた企業のデジタルトランスフォーメーション推進に向けた取り組みについて説明。ソフトバンクはネットワークからデバイス、ソリューションまでワンストップで提供できることと、多数のソリューションと263のグループ会社を持つという先端テクノロジーの総合力を生かし、企業のIT導入状況に応じて適切なソリューションを提供し、デジタルトランスフォーメーションの推進を図りたいとしている。
中でも人手不足が叫ばれる工場や工事の現場など、生産労働力を創出する上で欠かせないのが5Gだと藤長氏は話す。ソフトバンクは2020年3月に5Gの商用サービスを開始しており、法人部門でもパートナー企業らと、産業界が抱える課題解決に向け実用化を前提としたユースケースの創出を進めている。
そうしたことからソフトバンクでは、「5G×IoT Studio」のお台場ラボを2020年6月にリニューアルし、商用環境と同等の設備で技術検証ができるようにする。9月には大阪にもラボを設立する予定であることを明かした。
だがその実用化のためには、5Gのネットワークを高度化していく必要があると藤長氏は説明。現在、同社の5Gネットワークは、4Gと5Gを一体で運用し高速大容量通信を実現するノンスタンドアロン(NSA)だが、2021年度の後半ごろには5G単体で動作するスタンドアロン(SA)での運用に移行することで、低遅延・多数同時接続といった残りの特徴を生かせるようになる。
そうしたことから藤長氏は「5Gが高度化したタイミングでユースケースの実用化を進めていくと思う」と説明。現在はパートナー企業らとユースケースの開発や整備をする、準備段階に位置付けている。
藤長氏はもう1つ、ソフトバンクが5Gの法人活用を進めるための新たな取り組みとして「プライベート5G」を打ち出している。これは通信事業者が全国に展開する「パブリック5G」と、通信事業者以外の企業や自治体が場所限定で5G環境を構築する「ローカル5Gと」の中間に当たるものだという。
より具体的には、ソフトバンクが同社に割り当てられた周波数帯を使って、ローカル5Gと同じく顧客の敷地内にネットワークを個別に構築・運用する。ローカル5Gを利用するには電波免許の取得や、ネットワークの構築・運用などに手間がかかってしまうが、プライベート5Gではそうした部分を全てソフトバンクに任せながらも、ローカル5Gと同じ感覚で5Gを活用できるのがメリットになるとのこと。
同社が顧客企業にヒアリングしたところ、プライベート5Gには85%の企業が導入に興味を示すなど、高い関心が持たれているという。ただ提供に当たっては、ネットワークスライシングを活用してその企業の要望に応じたコアネットワークを提供することも検討しているそうで、提供のためにはSAへの移行が必要になるなど環境整備が必要なことから、実際の提供時期は2022年を予定しているとのことだ。
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