パートナー戦略で“Googleの穴”を埋めるHuawei P40シリーズは「予想を超える売れ行き」SIMロックフリースマホメーカーに聞く(2/2 ページ)

» 2020年07月17日 12時18分 公開
[石野純也ITmedia]
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アプリでは多くのパートナーとの協業を進めている

―― 以前はGMSが使えるようになれば、GMSを使うという方針は変わっていないのでしょうか。

楊氏 今やっていることは変えません。HMSとHMSエコシステムは、これからも継続的に広めていきたいと考えています。協業ができればしていきますが、消費者に対しては、新しい選択肢をご用意していく方針です。

―― HMSやAppGalleryを受け入れるにはまだ時間がかかるとおっしゃいましたが、どのぐらいのスパンを見ているのでしょうか。

Huawei AppGalleryではLINEをはじめ、日本向けアプリも拡充しつつある

楊氏 これについては、2つに分けて考えています。1つ目は、習慣という観点で、消費者の方々はいろいろなアプリをGoogle Playからダウンロードしていましたが、これがAppGalleryに変わります。クラウドサービスや、IDも関わってくることです。使い始めの初期段階として、こういった大きな差分があるため、いかに簡単にできるかを考えています。

 2つ目はアプリの数ですが、今はまだGoogleの方が数は多く、開きもあります。しかしながら、弊社も今は順調にアプリを拡充しています。このペースは速い方だと思っています。10億ドルを投じて「シャイニングスタープログラム」を作り、できるだけ多くの開発者が参加するよう取り組んでいます。さらに、各国でそれぞれの国のエコシステムを推進するためのチームを立ち上げています。これによって、現地の開発者に対し、よりアクティブなサポートができるようになり、実際、各地でアプリの登録が加速しています。

 弊社は、第3の選択肢として、常に公平かつオープンでいることを心掛けています。多くのコーポレートパートナーと協業できるよう、さまざまな取り組みを進めています。例えば、Huawei独自のマップや検索エンジン、Eメールなどのパートナー企業と協力して、これまでと同等のサービスを間もなく開始することができます。そういったサービスは、早急に使えるようにしていきたいと考えています。

―― マップもですか! ただ、マップはかなり鬼門というか、Appleですら立ち上げでつまずきました。今はかなり改善していますが……。

楊氏 マップはそもそも、データの正確さが肝心です。弊社の戦略は、現地の実データを提供するプロバイダーと協業することです。1社に頼り切るのではありません。そうすれば、(現地のプロバイダーと)ともに成長することもできます。現地の会社が提供する地図データは、データの正確度が一番高く、Googleより優秀です。他の大きなプラットフォームと比べても、強みがあると考えています。

―― HMSでもLINEやFacebookなどは利用でき、Googleを除けば最低限のアプリはそろっています。Googleの補完として、キャリアも近いサービスをやっていることがありますが、こういったところと組み、例えばフィーチャーフォンからのマイグレーション用の端末を仕立て上げるという可能性はありますか。

楊氏 それは素晴らしいアイデアですね。新しい方向性として、ぜひ考えてみたいと思います。キャリアに取材する機会があれば、ぜひそれをお伝えください(笑)。

P40シリーズは予想を上回る売れ行き

―― 発売から2週間強たちましたが(インタビューは6月末に実施された)、3端末の反響や売れ行きはいかがでしょうか。

楊氏 反響も売れ行きも、われわれの予想を上回っています。予測を立てる際に慎重になりすぎていたこともあって、発売週には欠品を起こしてしまいました。昨年(2019年)と比べると、ECや実店舗を絞っていることもありますが、SIMフリーで発売した「P30」と比べても、それを上回っています。

―― P30を上回ったというのは、すごいですね。

楊氏 ただし消費者に向け、スマートフォンを販売するときには十分な告知をすることも心掛けています。各販売店では、AppGalleryを搭載したHMSスマートフォンということは、必ず言うようにしています。「それについては問題ない」とおっしゃった消費者だけが買っているというわけです。そのような消費者からは、特にカメラ機能をご評価いただいています。

―― 確かに、自分もECのサイトをいくつか見てみましたが、わざわざHMSであることに同意のチェックをつけなければ買えないようになっていました。徹底していますね。

楊氏 日本は、非常にきっちりしているからです。そこに対しては、常に公正かつ透明でいることを心掛けています。こういったことは、できるだけ漏れがないよう、きちんとやっていこうと思います。

―― 今お話いただいたのはP40 Pro 5Gのことだと思いますが、liteの2機種はいかがですか。

Huawei 5GとLTEに対応する安価な“liteモデル”も2機種用意する

楊氏 P40 lite 5Gも、反響は大きかったですね。一方でP40 lite Eに関しては、同時期にnova 3+というGMSスマートフォンを販売していることもあり、販売数に関しては予想通りです。

―― そのnova 3+ですが、あれはなぜGMSを使うことができているのでしょうか。何かカラクリがあるのですか。

楊氏 カラクリのようなものは特にありません。あちらに関しては、かなり前からGoogleのライセンスを得ていました。いかなる製品の投入についても、きちんと各国の法令を順守するようにしています。

―― ああいった形で出せるGMSの“弾”は、まだあるのでしょうか。例えば、P30のカラーバリエーションを出したりする可能性などはありますか。

楊氏 今のところ、P30のカラーを増やすような計画はありません。やはり、最新技術を消費者の皆さまにお届けしたいからです。今は、次世代のMateシリーズとPシリーズに注力しています。日本というハイエンドの市場で成功するには、継続してどこよりも先に、革新的かつ高品質な製品を出していかなければならないと考えています。

取材を終えて:厳しい状況を覆す秘策あり?

 ついにHMS搭載スマートフォンの投入にかじを切ったHuaweiだが、その慎重な姿勢とは裏腹に、カメラ機能が評価されたP40 Pro 5Gは、売れ行きもまずまずのようだ。もっとも、Huawei自身が予測をかなり低く見積もっていた節があり、GMS搭載スマートフォンを出せていた2019年と比べると、販売数は減少してしまうはずだ。キャリアの取り扱いもなくなっており、厳しい状況は続く。

 一方で、その落ち込みを補うかのように、Huaweiは製品のバリエーションを大きく広げている。タブレットはもちろん、PCやイヤフォンを投入しているが、楊氏の話を聞く限り、まだ準備している製品は多そうだ。P40シリーズにGMSが非搭載になってしまったのは残念だが、HMSのエコシステムを強化しようとする姿勢は伝わってくる。

 無論、現状はHuaweiにとって強烈な向かい風が吹いていることは事実だが、米国の制裁を1年以上耐えてきたHuaweiには、それを覆すような秘策もあるのではないか――。明確な根拠があるわけではないが、インタビューした楊氏の言葉には、そんなことを感じさせるだけの力強さもあった。同社の繰り出す、次の一手にも注目したい。

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