5Gが創出する新ビジネス
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» 2020年07月21日 06時00分 公開

5Gビジネスの神髄に迫る:ソフトバンクが「プライベート5G」を打ち出す狙い、ローカル5Gに対する優位性は? (1/2)

自社が免許を保有する周波数帯を活用して自営型の5Gネットワークを構築・運用する「プライベート5G」を打ち出したソフトバンク。これはパブリックの5Gとローカル5Gの中間と位置付ける運用形態となる。海外では自営の4Gネットワークを構築・運用する「プライベートLTE」が既に活用されていることから、同様の取り組みとしてプライベート5Gを推進するに至った。

[佐野正弘,ITmedia]

 自社が免許を保有する周波数帯を活用して自営型の5Gネットワークを構築・運用する「プライベート5G」を打ち出したソフトバンク。これはパブリックの5Gとローカル5Gの中間と位置付ける運用形態となる。そのプライベート5Gを含めた同社の5Gビジネス戦略について、法人事業統括 法人プロダクト&事業戦略本部 デジタルオートメーション事業第2統括部 統括部長の梅村淳史氏に話を聞いた。

NSA環境下でも期待されるテレワーク需要

 商用サービスの開始とともに、携帯電話大手各社が5Gを活用した法人ビジネスの開拓を推し進めている昨今。大手の一角を占めるソフトバンクも、商用サービス開始前からさまざまなパートナー企業と5Gを活用したビジネス開拓に向けて取り組みを進めてきている。

 梅村氏によると、法人の5G活用に関するニーズは大きく2つ存在し、1つはIoTやAIなどを組み合わせた自動化の基盤に5Gを活用したいというもの。そしてもう1つは、スマートフォンやタブレットなどで従来以上に大容量のデータを扱い、地図や設計図の3D化、あるいはARやVRなどを組み合わせた活用など、より高度な取り組みをしたいというものだという。

ソフトバンク ソフトバンクは製造業などを中心に、5G商用開始前からさまざまなパートナー企業と実証実験を実施するなどしてユースケース創出を進めてきた

 そうしたことから同社では、さまざまな企業と実証実験を進めてきたそうだが、その中で感じたのは「スタンドアロン(SA)運用の方が強い」ことだと梅村氏は話す。モバイルエッジコンピューティング(MEC)を活用した低遅延による遠隔操作や、ネットワークスライシングでコアネットワークを分けてクリティカルな情報伝達に活用するなど、従来は技術的にできなかったことが可能になることが、その大きな理由になるという。

 しかし同社の5GネットワークがSA運用に移行するのは2021年度からとされており、当面はノンスタンドアロン(NSA)での運用となる。ではその間、ソフトバンクでは5Gのビジネス活用をどのような形で進めようとしているのだろうか。

ソフトバンク ソフトバンクの5Gネットワーク展開スケジュール。SAへの移行は2021年を予定しており、しばらくは高速大容量通信のみが可能なNSAでの運用となる

 この点について梅村氏は、「高速大容量通信だけでもビジネス支援に活用しようという動きはある」と回答。ARやVRなどを活用したエンタテインメント系のソリューション、や、カメラとAI、そして5Gの高速大容量通信を組み合わせた監視カメラなどのソリューションが、2020年から2021年の間には大きく伸びるのではないかと梅村氏は推測している。

ソフトバンク ソフトバンクは子会社の日本コンピュータビジョンが提供する、「AI検温ソリューション」などを既に提供しているが、そうした映像とAIを組み合わせたソリューションは、高速大容量通信が生きることからNSA環境下でも広がる可能性が高い

 そしてもう1つ梅村氏が挙げているのが、新型コロナウイルスの影響で注目されるようになったテレワーク関連のソリューションだ。アフターコロナ時代には在宅や小規模なオフィスを拠点として、サテライト的に働くスタイルが増えることからモビリティが従来以上に重視されるようになるというのだ。

 ソフトバンクは米ウィワーク・カンパニーズとの合弁による日本でのオフィス事業を展開していることから、そうした新しいオフィス環境と合わせる形で、5Gを活用したセキュアで柔軟性のあるオフィスコミュニケーション環境の開拓を進めたいという考えもあるようだ。Zoomなどのビデオ会議は4Gでも利用はできるが、より快適なコミュニケーションを実現するには5Gの高速大容量通信が重要になると見ており、今後はそれを生かして「アバターやロボットなどを活用した新しいビジネスコミュニケーションが出てくるのではないか」と梅村氏は話している。

ソフトバンク ソフトバンクは緊急事態宣言下で急速に利用が伸びた「Zoom」など、テレワークに関する多くの商材を持つことから、それらと5Gを組み合わせたソリューションが期待される

本命はSAによるプライベート5Gの展開

 またアフターコロナ時代に向け、同社には離れた場所から業務をこなすなど、遠隔制御や自動化に関する顧客からの声は増えているとのこと。現場に行くことなく業務の対応をする上では「自動化の基盤として5Gには高い期待が抱かれていると思う」と梅村氏は話しており、それだけにSAへの移行には強い期待感を示しているようだが、そのSAをビジネスに活用する重要な存在となるのが、2022年度からの提供を予定している「プライベート5G」となる。

 プライベート5Gとはソフトバンクに割り当てられた5Gの周波数帯域を用いて、ローカル5Gのように特定の場所だけをカバーする専用の5Gネットワークを提供するというもの。ネットワークの構築や運用はソフトバンクがする形となるため、モバイル通信に詳しくない企業も簡単に自社限定の5Gネットワークを活用できるのが特徴になる。

ソフトバンク プライベート5Gはソフトバンクに割り当てられた5Gの周波数帯を活用しながら、ローカル5Gのように場所を限定したネットワークを構築・運用する取り組みになる

 梅村氏によると、ルール上ローカル5Gを携帯電話会社が直接手掛けられない中、同社が通信事業者としてどのような取り組みをすべきか試行錯誤した結果、プライベート5Gが生まれたとのこと。海外では自営の4Gネットワークを構築・運用する「プライベートLTE」が既に活用されていることから、同様の取り組みとしてプライベート5Gを推進するに至ったのだそうだ。

 しかしなぜ、プライベート5GにSA運用が必要なのだろうか。梅村氏はその理由について、「MECやネットワークスライシングが絶対的に必要と判断したため」と答えている。特にプライベート5Gではセキュリティを担保するため外部に情報が出ないよう閉じたネットワークを利用するニーズもあることから、ネットワークスライシングによって企業ごとのコアネットワークを提供できることが大きなポイントとなったようだ。

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