5Gが創出する新ビジネス

「mineo」のオプテージがMVNOではなく自らローカル5Gの構築に取り組む理由5Gビジネスの神髄に迫る(2/2 ページ)

» 2020年08月06日 12時25分 公開
[佐野正弘ITmedia]
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FTTHはローカル5Gの展開にも大きなメリット

 無線の経験は浅いオプテージだが、一方で関西地区に限定されるとはいえ、既に固定ブロードバンドの事業を展開していることは大きな利点となるだろう。実際、オプテージは関西において、企業向けにFTTHを用いた監視カメラなど、24時間・265日止めることなく運用し続けるミッションクリティカルなソリューションを提供している実績があり、そうしたアセットを生かしてローカル5Gに参入できることは、同社にとって大きな強みとなるようだ。

 白野氏も「ローカル5Gは無線通信と捉えられがちだが、ラストワンマイル以外はほぼ固定通信であり、固定通信の知見やスキルは十分生かすことができる」と話し、ラストワンマイルをローカル5Gに置き換えるところから事業化を進めていく考えのようだ。実際、製造業などでは、工場の有線ネットワークを5Gで無線化したいというニーズが多いそうで、無線化によって従来1000万円以上の経費がかかっていた工場ラインの組み換えコストを大幅に削減することが期待されている。

 もちろん関西以外ではそうした優位性を持つわけではないが、白野氏は「全国でもどんどん(ローカル5Gの)サービスを提供していきたい」と意気込む。ローカル5Gはクローズドなネットワークとなるため、関西以外でも他の事業者と同じ土俵で競えることから、関西での優位性を生かしながらも全国でローカル5Gの事業展開を進めていくというのが、オプテージの考えであるようだ。

 では、MVNO事業との連携はどのように考えているのだろうか。三宅氏は「顧客がローカル5Gの端末を、外出先でもシームレスに使いたいというニーズはあると思っている」と話し、将来的にそうしたニーズに応える上では、広域でサービス展開しているMVNOとの連携が重要になってくるとの考えを示している。

 そのためにも、テレコムサービス協会のMVNO委員会が提唱している、MVNOがキャリアのコアネットワークを運用できる「VMNO」に関して、三宅氏は「ありだと思っており、重要な検討課題になっている」と答えている。特にコアネットワークに関しては、ローカル5GとVMNOとで技術的に大きく変わるわけではないことから、まずはローカル5Gで実績を積みつつ、VMNOが実現する将来に備える考えのようだ。

取材を終えて:強みをどこまで実績に結び付けられるかが勝負

 多くの企業が参入を表明しているローカル5Gだが、オプテージはFTTHやMVNOの実績を持つ通信事業者であるということが、今後の競争を見る上で優位性につながってくることは確かだろう。事業再編によって情報システムの提案構築などの事業も持ち合わせるようになり、法人向けにサービスを提供するための構えが整っていることも、大きな強みとなりそうだ。

 ただ一方で、同社は無線通信を初めて手掛けるという意味では、他のローカル5Gと同じ土俵に立っているのも事実。しかも多くの事業者がオプテージ同様、4.8GHz帯の割り当て後にSAでローカル5Gの事業を本格化しようとしている状況だ。

 白野氏は「競争は全然余裕ではないが、ライバルと一緒に市場を作る上ではいいと思っている」と話し、ローカル5Gの市場を立ち上げる上で多くの企業が参入することが重要との認識を示す。

 だが今後、ソフトバンクが「プライベート5G」を展開するなどキャリアも同様のサービス提供を進めることで、競争は短期間のうちに大幅に激化する可能性が高い。それだけにオプテージがこの市場で優位性を獲得するには、いかに無線通信のノウハウを早期に蓄積し、強みを生かして早い段階で実績を多く作り上げるかが重要になってくるといえそうだ。

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