5Gが創出する新ビジネス

5G時代に大きく変わるMVNO カギを握る「VMNO」とは?5Gビジネスの神髄に迫る(1/2 ページ)

» 2020年05月14日 11時05分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 スマートフォンの通信を低価格で利用できることにより、提供で人気を獲得してきたMVNO。参入障壁が低い一方、キャリアのネットワークに依存する部分が多く自由度が低いことから、サービスの差異化が難しいことが課題とされてきたが、5GではMVNOの形が大きく変わる可能性がある。5G時代のMVNOはどのような姿になろうとしているのだろうか。

MVNOが長年抱える自由度の低さという課題

 キャリアからネットワークを借り、モバイル通信サービスを提供しているMVNO(仮想移動体通信事業者)。自ら基地局を設置する必要がないなど、低コストでサービスを提供できることから多くの企業がMVNOとして参入し、低価格のモバイル通信サービスを提供。「格安スマホ」「格安SIM」などの名称で認知度も急速に高まり、一時はキャリアから大量に顧客を奪うなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長していたことは記憶に新しい。

 最近ではキャリアが低価格サービスを強化したことで、MVNOの再編が進むなどその勢いはかつてほどではなくなっているが、現在も市場で一定の存在感を持つことは確かだろう。だがMVNOは参入障壁が低い一方、キャリアからネットワークを借りているため、サービス内容の多くの部分をキャリアに依存する形となり、あまり自由なサービスを提供できないことが長年課題とされてきた。

 もちろん、総務省がMVNOの競争力強化に力を注いできたこともあり、年を追うごとにMVNO側のサービスの自由度が高まってきてはいる。実際、MVNO側がキャリアのネットワークに直接接続し、ネットワークの一部をコントロールできる「レイヤー2接続」が2009年に導入されたことで、MVNOが料金や通信速度などを自由に決められるようになった。

 また2018年には加入者管理機能をMVNO側が持ち、自らSIMを発行できる「フルMVNO」も登場。いち早くフルMVNOとなったインターネットイニシアティブ(IIJ)は、それを活用したeSIM向け通信サービス「データプラン ゼロ(eSIM)」を提供して話題となっている。それでも、自らネットワークを持ち自由に制御できるキャリアと比べると、その自由度が低いのは明らかだろう。

VMNO IIJはフルMVNOとなり自らSIMを発行できるようになったことで、法人向けだけでなく個人向けのeSIMサービスも提供。2020年3月19日にはiPhoneなどのeSIM対応機種で利用できる「データプラン ゼロ(eSIM)」の提供を開始した

 そうしたMVNOの自由度の低さに業を煮やし、自らインフラを持つキャリアへと転身を図ったのが楽天モバイルだ。同社は企業買収などにより約230万契約を持つ最大手のMVNOとなったが、それにもかかわらずキャリアへと転身を図った理由の1つとして、MVNOの制約の多さを挙げている。

 実際、同社の代表取締役会長兼CEOである三木谷浩史氏は、かつて日本のMVNOは技術的な自由度が低く「奴隷のようなもの」と発言。ネットワークを構成する機器を汎用(はんよう)のサーバとソフトウェアで実現する「ネットワーク仮想化」(NFV)技術を全面的に導入したネットワークを構築するなど、自らの技術で独自性を打ち出せるネットワークを求めたことが、キャリアになった要因の1つであることを示していた。

VMNO 楽天モバイルの三木谷氏は参入前、日本のMVNOは「奴隷のようなもの」と話し、ネットワークに自社技術を活用する自由度が低いことが携帯電話事業参入への契機になったと話していた

コアネットワークを制御し高い自由度を実現する「VMNO」

 だが5Gでは、そうしたキャリアとMVNOとの関係が大きく変わる可能性がある。それが、MVNOの団体であるテレコムサービス協会MVNO委員会が提唱している「VMNO」(仮想通信事業者)だ。

 現在の5Gは、4Gの通信設備の中に5Gの基地局を設置するノンスタンドアロン運用となるため、キャリアのネットワーク設備は4Gと大きく変化しているわけではない。だが、これが5G専用の機器だけで構成されるスタンドアロン運用へと移行すれば、ネットワーク設備が大きく変化すると考えられている。

 その1つがNFVの本格導入であり、楽天モバイル以外でもモバイルのコアネットワークへのNFV採用が大きく進むとみられている。そうなればコアネットワークはクラウド化、つまりどうしても物理的な設備が必要な基地局などの無線設備と、コアネットワークが必ずしも一体である必要がなくなってくるのだ。

 また5Gでは、高速大容量通信の他、低遅延、多数同時接続といった5Gの特徴を生かすため、用途によってネットワークを仮想的に分割する「ネットワークスライシング」の導入が進むと考えられる。これを応用すれば、キャリアの無線設備から先のコアネットワークをスライスして他社に使わせることや、他社のコアネットワークを直接接続することなども可能になるだろう。

 そうなれば現在でいうところのMVNOが、コアネットワークに匹敵する設備を自ら持てるようになり、キャリアの制約をあまり受けることなく独自のサービスを提供できるようになる。そうした新しい形態の事業者を、テレコムサービス協会MVNO委員会では「VMNO」と呼んでいる。

 そしてこのVMNOには「ライトVMNO」と「フルVMNO」の2つの形態があるとしている。前者はキャリアがコアネットワークの機能をスライスして提供し、APIなどを経由して制御できるようにするというもの。従来のMVNOと比べ、コアネットワークの多くの部分を制御できるようになることから、かなり自由度の高いサービスを提供できるようになると考えられる。

VMNO 「ライトVMNO」のイメージ(テレコムサービス協会MVNO委員会「5G時代における二種指定制度に係る課題に関する意見」より)

 フルVMNOはより踏み込んで、自ら仮想のコアネットワークを持ち、直接キャリアの基地局に接続してしまうというものになる。これが実現すれば、VMNO側が、無線設備以外のネットワークをほぼ自社で運用できるようになるわけだ。

VMNO フルVMNOのイメージ(テレコムサービス協会MVNO委員会「5G時代における二種指定制度に係る課題に関する意見」より)

 そしてVMNO、特にフルVMNOが実現すれば、ある意味特定のキャリアの無線設備に縛られることもなくなるので、1つの仮想コアネットワークで複数キャリアの無線設備をシェアして活用する「RANシェアリング」も可能になる。さらに言えば、携帯電話のネットワークに限らず、Wi-FiやLPWAなど、他の無線通信ネットワークも組み合わせたサービスも提供することも検討されているようだ。

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