ニュース
» 2020年08月18日 10時30分 公開

米商務省がHuaweiに対する「輸出一時許可」を延長せず スマホやタブレットへの影響は?

米商務省が、中国Huaweiに対する制裁措置を強化する旨を発表した。その中で、既存取引のメンテナンスを許容する「一時的一般許可証」の延長が行われなかったことにも言及されている。今後、Huaweiのスマホやタブレットにはどのような影響が出るのだろうか。【追記】

[井上翔,ITmedia]

 米商務省産業安全保障局(BIS)は8月17日(米国東部時間、以下同)、「エンティティリスト(Entity List)」に掲載されている中国Huawei(華為技術)および同社の関連企業について、米国由来の技術やソフトウェアへのアクセス制限を強化した旨を発表した。合わせて、BISはエンティティリストの対象企業を38社追加したことも公表した。

 さらに、同省は5月15日に実施した「一時的一般許可証(TGL)」の有効期限が切れたことも発表した。TGLが無効になったことにより、ネットワーク設備やスマートフォンやタブレット端末のソフトウェア更新やネットワークの保守・運用に必要な商取引についても、BISの承認が必要となる。

【追記:17時50分】本件を受けたHuaweiの対応と、米国Semiconductor Industry Association(SIA)の対応を追記しました

発表文 米商務省のニュースリリース

これまでの経緯

 BISは、米国外への製品やサービスの輸出に関して、何らかの懸念がある個人や団体・企業を4つの「懸念先リスト」にまとめている。

 Huaweiとその関連企業は2019年5月15日、懸念先リストの1つである「エンティティリスト(Entity List)」に登録され、米国企業との新規取引が事実上不可能となった。このリストには、Huaweiの日本法人であるファーウェイ・ジャパン(華為技術日本)も記載されている。

 一方、米商務省は同年5月20日、エンティティリストに記載されたHuaweiと関連企業に対するTGLを発布。同年5月16日までに有効になった契約について、ソフトウェア更新やネットワークの保守・運用に必要な一部の商取引に許可を与えた。

 この許可は、同年8月19日と11月18日に各90日間、2020年2月13日に45日間(※)、そして5月15日に90日間延長されてきた。

(※)2月18日付で5月15日まで延長するように修正された

恐らく最後の延長 5月15日付のTGL延長に関するニュースリリース。わざわざ「Expect Final 90-Day Extension」(恐らく最後の90日間の延長)とつけ加えている

今後の影響は?

 2020年5月15日付で行われたTGL延長について、同省は「恐らく最後の延長」とわざわざ言及し、これ以上の延長を行わないことを示唆していた。また、BISは同日付で、エンティティリスト掲載企業に対する半導体輸出規制を発表している。

 今回(8月17日付)の発表によって、どのようなことが起こるのか、簡単にまとめる。

半導体の輸出規制:定義を「洗練」→海外からの調達がさらに困難に

 5月15日付で行われた半導体輸出規制では、Huaweiやその関連企業が米国由来のソフトウェアや技術を使って半導体を設計し、海外(米国外)にある米国産の設備を用いるファウンドリ(受託製造者)に生産を委託することを制限した。しかし、「海外(米国外)の第三者が米国由来のソフトウェアや技術を使って設計し、海外にある米国産の設備を持つ工場で作られた半導体を調達する」という“抜け道”があると指摘されてきた。

 今回の発表では、半導体やそれを使った部品や機器の調達プロセスにおいて、Huaweiやその関連企業が何らかの形で当事者として関わる場合は輸出規制の対象となることが盛り込まれた。

 エンティティリストに掲載された企業や団体との取り引きは、BISから承認を得ることで行える。しかし、BISは「原則拒否」のポリシーを取っており、承認を得ることは非常に難しい。

 Huaweiは、何らかの形で米国企業が関与している高性能な半導体を調達することが困難となる。

半導体規制の強化 半導体の取引過程で、Huaweiとその関連企業がプロセスに関わる場合は輸出規制の対象となることに

TGL失効:Android端末のソフトウェア更新に影響が出る可能性

 エンティティリスト掲載によって、Huaweiやその関連会社と米国企業との新規取引(契約)は、原則として禁止された。

 一方で、ソフトウェア更新やネットワークの保守・運用などに必要な一部の商取引については、TGLによって認められてきた。米国企業であるGoogleが提供する「GMS(Google Mobile Services)」を搭載するHuawei製Android端末が、ソフトウェア更新やOSバージョンアップを継続できたのは、このTGLがあったからともいえる。

 しかし今回、TGLが更新されず失効となった。今後、Huawei端末におけるGMSやそれに含まれるGoogleアプリの更新、OSバージョンアップに何らかの影響が出る可能性がある。

 Googleが取引の承認を得られれば問題を回避できるが、先述の通り申請は原則拒否のポリシーを取っている。短期的には、問題を解決することは困難だと思われる。

Huaweiは「声明の発出を検討中」

 今回の措置を受けて、Huaweiは自社やグループ企業、取引先への影響を精査した上で、何らかの声明を発表することを検討しているという。

Semiconductor Industry Associationは声明を発表

 今回の措置を受けて、米国の半導体の業界団体「Semiconductor Industry Association(SIA)」はジョン・ニューファーCEOの名義で声明を発表している。原文と、筆者による日本語訳を合わせて掲載する。

(原文)
We are still reviewing the rule, but these broad restrictions on commercial chip sales will bring significant disruption to the U.S. semiconductor industry. We are surprised and concerned by the administration’s sudden shift from its prior support of a more narrow approach intended to achieve stated national security goals while limiting harm to U.S. companies. We reiterate our view that sales of non-sensitive, commercial products to China drive semiconductor research and innovation here in the U.S., which is critical to America’s economic strength and national security

(日本語訳)
私たちは(新しい)規則を見直している所ですが、商用半導体の販売に関する広範な規制は、米国の半導体業界に重大な混乱をもたらすでしょう。私たちは、規制当局が米国企業への危害を抑制しつつ安全保障の目的を達するためにより小規模な措置を取る方針から転換したことに驚きと不安を覚えています。私たちは、機微に富まない商用製品の中国への販売が、ここ米国における半導体の研究や革新につながり、それが米国の経済や国家安全保障に必要不可欠であるという見解を繰り返します。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう