世界を変える5G

4G周波数の5G転用は「優良誤認」と「速度低下」の恐れあり ドコモの5Gネットワーク戦略を解説石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2020年08月29日 09時20分 公開
[石野純也ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

優良誤認を警戒するドコモ、エリア競争からサービス競争に転換できるか

 速度は4G並みでも、遅延が小さくなるため、周波数の転用には一定のメリットがあると思われるかもしれない。これに対し、ドコモはインターネット区間の遅延が大きくなれば、4Gと5Gで大きな差は出ないと主張する。確かに5G化すれば、「基地局とスマートフォンの間は無線方式が変わるため、最低で1msの低遅延になるが、実際の遅延はスマートフォンからコンテンツサーバの距離で変わってくる」(同)。いくら無線部分の遅延が小さくなっても、インターネットでの遅延が積み上がっていけば、無線区間の低遅延化は誤差になってしまうというわけだ。

ドコモ 低遅延化のメリットはある一方で、実現には「MEC(Multi-access Edge Computing)」の導入が必要になる

 こうした状況に対し、ドコモは危機感をあらわにする。中南氏も「ユーザー目線で考えると、5Gで速度が変わらないのは優良誤認の恐れがある」と語る。ユーザーが高速・大容量や低遅延を期待して5Gのスマートフォンを買ったにもかかわらず、実際には4Gと変わらなければ、だましているのと同じになってしまうというわけだ。そうならないためには、「新周波数による5Gは高速・大容量だが、4G周波数の5Gは高速・大容量ではないと、エリアマップで分けていく必要がある」(同)というのがドコモの主張だ。

ドコモ ユーザー保護のため、エリアマップでの区分けが必要だと主張する

 競争上、転用に積極的な他社をけん制したという見方もできる。KDDIやソフトバンクが4Gからの転用でエリアを一気に広げた場合、5G用の周波数が中心のドコモのエリアが狭く見えてしまう恐れがあるからだ。実際、どちらの周波数をつかんでも、端末には「5G」の文字が表示される。ただ、ユーザーが都度、通信速度やエリアマップを確認するとは考えづらい。4Gと5Gを同時に使って比較することもないため、ある程度速度が出ていれば満足してしまうだろう。

 結果として、マーケティング上、ドコモが不利になってしまうことも考えられる。特に、3社が横並びで採用するiPhoneが5Gに対応し、周波数の転用が始まれば、KDDIやソフトバンクは、エリアの広さを訴求し始めるはずだ。

 中南氏は「われわれとしては、新周波数の帯域での高速・大容量が5Gの価値だと考えている」と言うが、その価値をどう伝えていくのかがドコモにとっての課題といえる。同社は、2021年度に「SA(Stand Alone)」方式の5Gを導入することを明かしたが、一面的なエリア競争に陥らないためには、こうした新技術で実現できるサービスの具体像を、しっかり見せていく必要がありそうだ。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年03月12日 更新
  1. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」は何が違う? 3万円の価格差をスペックから検証する (2026年03月10日)
  2. 「iPad Air(M4)」実機レビュー 「もうProじゃなくてもいい」と思えた性能、だからこそ欲しかったFace ID (2026年03月09日)
  3. 「iPhone 17e」を試して分かった“16eからの進化” ストレージ倍増と実質値下げで「10万円以下の決定版」に (2026年03月09日)
  4. 自分で修理できるスマホ「Fairphone(6th Gen.)」を見てきた わずか10分で画面交換、2033年まで長期サポート (2026年03月10日)
  5. 携帯キャリアの通信9サービス、総合満足度はpovoがトップ サブブランド勢が好調 MMDが調査 (2026年03月10日)
  6. 60ms未満の音声遅延速度で端末をワイヤレス化「UGREEN USBオーディオトランスミッター」が30%オフの2309円に (2026年03月09日)
  7. キーボード付きスマホ「Titan 2 Elite」がUnihertzから登場 実機に触れて分かった“絶妙なサイズ感” (2026年03月09日)
  8. Qualcommのウェアラブル新チップが「Elite」を冠する理由 最新モデム「X105」は衛星通信100Mbpsへ (2026年03月11日)
  9. 【無印良品】ウエストポーチもになる「スリングバッグ」が3990円に値下げ中 植物由来の原料を使用 (2026年03月11日)
  10. 「えっ、地震?」──LINEが安否確認テスト 1日限定で 「紛らわしい」との声も (2026年03月10日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年