世界を変える5G

auは「iPhone 12」でどう攻めるのか? 既存周波数を5Gに使う意義は? 高橋誠社長インタビュー(1/3 ページ)

» 2020年10月19日 11時07分 公開
[石野純也ITmedia]

 iPhone 12、12 Proの発売に合わせ、KDDIは「au 5Gエクスペリエンス」を導入する。これは、端末とネットワーク、さらに料金プランが密接に統合された仕組みのこと。iPhone 12シリーズに導入されるAPIを使い、5Gエリアでかつデータ容量無制限のプランに入っている場合のみ、動画などが高画質化・低遅延化されるという。

 発売当初は、Apple自身のサービスであるApple MusicやFaceTimeが対応。さらに、KDDI自身も関わる「TELASA」や「SPORTS BULL」「smash.」といったサービスも順次対応していく予定だ。

 同時にKDDIは、4Gからの周波数転用を活用して、5Gのエリア拡大のペースを上げていく方針だ。周波数転用は新周波数の5Gより速度が出ない“なんちゃって5G”との見方もあるが、iPhoneや無制限のデータプランとの組み合わせでユーザー体験が変わるというのがKDDIの主張だ。iPhone 12シリーズの投入に合わせ、KDDIは5Gのネットワークで競争を仕掛けようとしているようにも見える。

 その意気込みや今後の戦略を、代表取締役社長の高橋誠氏と、パーソナル事業本部 パーソナル企画統括本部 副統括本部長の松田浩路氏がグループインタビューで語った。

高橋誠 グループインタビューで意気込みを語ったKDDIの高橋社長

Appleとキャリアが一緒に取り組む意義

―― Appleとの取り組みについての印象や気づいたことを教えてください。

高橋氏 iPhoneで5Gのよさを出そうと思ったとき、やはりキャリアと一緒にとなったのではないでしょうか。通信の世代が変わるごとに問題になりますが、スピードを出そうとすると、バッテリーの消費も速くなります。ああいった取り組み(5Gから4Gに自動で切り替えるスマートデータモードのこと)は、キャリアとやらないとなかなか難しいですからね。

松田氏 5Gということで、(ネットワークと)インテグレートしていきたいという意思は感じましたし、われわれもそれをやってきました。ネットワーク側にも、結構なチューニングを入れています。

スマートデータモード スマートデータモードに対応し、5Gが必要ない場所では自動で4Gに切り替える

―― KDDIとして、iPhone 12シリーズでどのように攻めていくのでしょうか。

高橋氏 スマートデータモードは、恐らく3社そろい踏みになるのではないでしょうか。その意味で、日本のキャリアは頑張っていると思います。他国と違い、5Gに真摯(しんし)に取り組んでいるからこそ、100のキャリアの中の15キャリアとして(Appleのイベントで)紹介されたのだと思います。ここには、楽天モバイルは付いてくることができませんし、差別化はきっちり図れています。

 au 5Gエクスペリエンスの方は、ドコモやソフトバンクが(データ容量無制限の)定額をやるかどうかにかかっていますが、今のところ、その話は聞こえてきません。このモードを使えるのは当面うちだけになると思うので、これは活用したいと考えています。

松田氏 自動でというのがポイントです。手動でやろうと思えば(5Gでの高画質化は)できないことはありませんが、無制限の定額プランに入っていると、これが自動でオンになる仕組みです。

高橋氏 よくできている仕組みで、端末側からはプランが何かを聞いてきて、うちからはコンビニエントなプランと返すだけです。そのAPIが、オープンになります。

au 5Gエクスペリエンス 5Gエリアで、かつ使い放題のプランだと判定されると、自動で高画質モードに切り替わるという。KDDIはこれをau 5Gエクスペリエンスと呼ぶ

―― やはり、5Gになって、キャリアでiPhoneを買うというのが主流になるのでしょうか。

高橋氏 端末価格を見ると、結構面白いと思います。うちは頑張ったので、Apple Storeで買うとのあまり価格差がなく、しかも「かえトクプログラム」もあります。Appleとしても、キャリアに売ってもらいたいのではないでしょうか。われわれも、できるだけ卸価格に乗せないで販売する方法を選びました。

iPhone 12 端末の本体価格は、Apple Storeと大きな差が出ないよう、努力したという

東名阪の“5G昼間カバー率”は2021年3月までに50%へ

―― 5Gの人口カバー率が2022年3月までに90%になるというお話がありました。そこに至る過程は、どのぐらいのペースで拡大していくのでしょうか。

高橋氏 東名阪で昼間の人口カバー率という見方だと、年度末(2021年3月)で半分ぐらいまではいけるのではないでしょうか。“昼間カバー率”というものですが、これを言い出すと訳が分からなくなってしまうので言いませんが(笑)。

―― 転用する周波数帯に800MHz帯がありませんでしたが、これはキャパシティーを考えてのことですか。

松田氏 800MHz帯の5Gは、iPhoneには載っていないので。

高橋氏 既存周波数の開設計画は終わっているので、どこを使うかは徐々に見せていきたいと思います。

5G 転用も活用し、2022年3月には人口カバー率90%を達成するという

―― ちなみに、切り替えは簡単にできるのでしょうか。基地局ベンダーからはソフトウェアだけでできるという話もありますが、実際にはいかがですか。

高橋氏 古い設備がまだ残っているところがあるので、それは置き換えが必要になりますが、最新のものはすぐにできます。

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