武田良太総務大臣は2月9日、閣議後に記者会見を開催した。その中で、MNOに対して2021年度以降(2021年4月から)の「データ接続料」をより一層低廉化するように要請する旨を事務方(総務省の担当部署)に指示したことを明らかにした。テレコムサービス協会MVNO委員会が1月18日に行った要望を受けた措置であると思われる。
自ら無線通信設備を持たないMVNOは、MNOから無線通信設備を借りて携帯電話サービスを提供している。その際、データ(パケット)通信について「データ接続料」が課金される。MVNOサービスの普及を一層図ることを目的として、総務省では2020年度(2020年4月)からデータ接続料の計算方法を改め、向こう3年度分の接続料を予測して提示する「将来原価方式」とすることをMNOに義務付けた。
この方式に基づき、NTTドコモ、KDDI(※)、ソフトバンクの3社が2020年に提出した2020年度から2022年度までの予測接続料は、年度を追うごとに低廉化していく見通しを示していた。
(※)KDDIの接続料は、沖縄セルラー電話(沖縄県でau携帯電話サービスを提供するMNO)との合算で算出される
しかし、2020年12月から2021年1月にかけて、MNO各社は「オンライン専用」をうたう新しい料金プラン(ブランド)を相次いで発表した。従来のプランよりも手頃な価格設定だ。
MVNOがこれらのプランとデータ通信容量や通話オプションの条件をそろえてサービスを提供しようとすると、月額料金が5000円を超えてしまう。一方で料金面で条件をそろえると、データ通信容量が月間6GB程度とMNOの新プランと比べて見劣りしてしまう。つまり、MNOとMVNOの「イコールフッティング」が困難な状況にあるということだ。
そこで、MVNOの業界団体であるテレコムサービス協会MVNO委員会は1月18日、データ接続料や音声卸料金の一層の低廉化やイコールフッティングを担保するルールの策定を求める要望書を提出した。
2月8日、総務省で「接続料の算定等に関する研究会」の第41回会合が行われた。この会合では、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社に加え、MVNOを代表してインターネットイニシアティブ(IIJ)とオプテージの2社からヒアリングを実施した。
MNOからは、主にオンライン専用ブランドに関する説明と、MVNOに対して課しているデータ接続料や音声卸料金についてさらなる低廉化を進める旨の説明が行われた。ドコモはそれに加えて、現行の条件でもMVNOはMNOのオンライン専用プランと容量、料金の両面で同等のプランを提供できるという説明も行っている。
MNOが打ち出した新プラン(ブランド)について、武田総務大臣は「家計負担の軽減につながるもの」と評価する一方で、「MVNOを含むモバイル市場の競争環境に重大な影響を与える可能性があり、接続料の適正性がこれまで以上に重要になる」と指摘した。
その上で、2月8日の会合において「MNOとMVNOの公正な競争環境を確保するためには、データ接続料の更なる低廉化が必要」との意見が構成員から出たことも受けて、MNOに対して2021年度以降のデータ接続料を速やかに算定し、さらなる低廉化を行うように要請するように指示したという。
MNO各社は2月末までに2021年度から2023年度までの予測接続料を提示する予定となっている。武田大臣の「要請」に応えて、2020年に示した予測よりもさらに値下げするかどうかに注目が集まりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.