―― 次にRakuten BIGのお話を伺いたいのですが、各メーカーとも5Gスマートフォンの開発には積極的で、ミドルレンジモデルも増えてきています。あえて自社開発する必要性はどこにあったのでしょうか。
小野木氏 5Gを始めるにあたってのローンチモデルが必要でした。その中でも、ビジネス側の観点として気にするのは、やはりプライスポイントです。他社のものは、軒並みそれなりの価格になっていたので、同じプライスポイントで出してどれだけ売れるのか。どれだけ価格を下げられるのかを考えました。また、楽天モバイルは、Sub-6とミリ波を同時に展開しているので、両方に対応することを模索しました。その結果、独自ブランドで出すことが最適となりました。
塚本氏 小野木の強い要望で、何とか安い5G端末を出せないかを考えました。ミリ波搭載は絶対として、4GもBand 3の4×4 MIMOなどのネットワーク機能は十分実現した上で、なるべく安く開発するというのがコンセプトです。
―― やはりミリ波はマストだったんですね。
塚本氏 ミリ波は絶対に搭載するということで、当初から仕様を検討していました。ネットワーク側にも、絶対にミリ波をやるという思いがあったからです。
―― Rakuten MiniやRakuten Handとは違い、メーカーがZTEで、しかもZTEの「AXON 20 5G」に近いようにも見えます。これはなぜでしょうか。
塚本氏 技術面で言うと、ミリ波はまだ特殊で、ベンダーを選ぶ際に、より技術力が高いところということでZTEとお話ししました。どういうアセットを持ち、どういう技術でどういう端末を作れるのかというのはメーカー次第です。ミリ波対応を実現できるメーカーを探し、それをベースにカスタマイズをしていきました。
―― ベースモデルをそのまま持ってくるという判断はなかったのでしょうか。
塚本氏 ミリ波が絶対に必要だったというところ(AXON 20 5GはSub-6のみの対応)と、FeliCaやeSIMもわれわれがこだわっているところです。仮にAXONとしての提案があり、検討したとしても、そういったカスタマイズは入れていたと思います。
―― なるほど。独自ブランド端末を投入する上で、FeliCaやeSIMもマストなんですね。
小野木氏 eSIMやFeliCaと、難易度は上がりますが防水、防塵(じん)はマーケティング側が定義して、開発側に(必須仕様として)渡しています。eSIMは、業界のトレンドとしてやらなければいけない機運になってきました。楽天モバイルは、良く悪くも、そのトレンドを先取りできています。
―― 確かに、eSIMオンリーのスマートフォンは、まだ日本では珍しいと思います。
小野木氏 eSIMに関しては、鶏と卵の問題だと思っているからです。われわれからすると、卵から鶏に孵化させるために、まずはやらないといけない。とにもかくにもで始めています。その他のOEMパートナーモデルにも搭載していただき、卵から孵化させる機運を作っています。追い風として、総務省が環境を推進していることもあり、業界の共通認識として(eSIMが)広がっています。eSIMの基盤が広がれば、顧客流動性を高めるファクターの1つになり、いろいろな端末を選びやすい環境になります。
―― ミリ波対応で苦労はありましたか。
塚本氏 機能を実現すること自体に大きなハードルはありませんでしたが、やはりパフォーマンスをどう出せるかが重要です。ネットワークと突き合わせていく中で、いかにパフォーマンスを出せるかのチューニングはしていきました。ここは、思ったよりうまく立ち上がったと思います。
また、ミリ波対応はメーカーにとっても1つのチャレンジでした。通信速度もそうですし、発熱もそうです。ですから、設計や機構も含め、一緒に考えてきました。結果的にスムーズに立ち上げることができたと思います。
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