500Wh/kgを超える600Wh/kgになると、従来は液体の電解質を固体に変えて、正極活物質の素材も変更する。従来は重元素がメインで原料には高価なレアメタルが使われているが、まずは無機物でコバルトを使わない正極活物質によって実現する。
800Wh/kgに向けては、正極側で次世代アルミ箔を採用し、水素や窒素などの有機正極を採用する。これによってコストも安価にできる。1000Wh/kgになると、残る正極の多孔度25%を減らすことを目指し、セルの面方向から電流を通す「バイポーラ構造」を採用することで達成するという。
これによって高密度化は実現できるが、実用化には長寿命化や安全性、コスト効率も高める必要がある。レアメタルフリーにすることで低コスト化を図れるし、電解質を固定電解質にすれば安全性も向上する上、高電圧化も可能になる。
こうして開発を進める次世代電池は、「HAPSやドローンなどに合うのではないか」と西山氏。EVに導入するにはどうしても「寿命重視」になるが、HAPSの場合は「半年飛べばいいので、(充放電サイクルが)200サイクルで十分」(西山氏)。エネルギー密度が向上すると、同じバッテリーサイズならバッテリー容量が大きくなり、同じ容量ならサイズが小さくなる。家庭用蓄電池も従来120kgだったものが30kgまで小型化できるなど、街のあらゆるところに次世代電池を置いてエネルギーマネジメントする、といった未来も想定する。
ソフトバンクでは、HAPSが想定している2023年のサービス開始を見据えて次世代電池(400Wh/kgクラス)を実現したい考えだが、それがなくても既存の携帯基地局向けのバックアップ電源として軽量化したバッテリーが使えないかの検討も行っているという。
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