2020年6月末まで実施されたキャッシュレス・消費者還元事業では、加盟店手数料の上限規制と補助、キャッシュレス決済対応機器導入の補助が行われ、ここで多くの店舗がキャッシュレス決済を導入した。今回の調査でも還元事業に対応するために導入したという回答が3割に達した。
還元事業では、加盟店手数料3.25%以下であれば3分の1が補助されたが、Squareは手数料を3.24%に下げ、補助を使えば実質2.16%という数字になっていた。この結果、「現金でも入金、小銭の用意などのコストがあり、2.16%なら現金を上回るメリットがある」という店舗の声がSquareにも寄せられたそうで、このあたりは1つの目安となりそうだ。
手数料が下がらないと、店舗によってはキャッシュレス決済比率増加に伴う手数料増を利益でカバーできなくなる例も出てくる。キャッシュレス決済導入で客単価の増加も期待されるが、今回の調査では客単価が上昇したとの回答は17.2%で、変化なしが5割近かった。
それに加えて、キャッシュレス決済が増えると手元現金が減り、翌日の仕入れに支障が出る、という声も根強い。調査でも24.8%がその点を問題視しており、こうした仕入れのキャッシュレス化も課題だろう。キャッシュレス決済導入におけるレジ更新などの初期導入費用も問題だ。仮に4〜5万円程度といえども中小・個店の利益へのインパクトは大きい。
解決の難しい問題もあるが、Squareでは「決済手数料3.25%に見合う価値を提供し、店舗にも価値を感じてもらうことが業界には必要」と指摘。決済サービスでの店舗に対する機能の拡充だけでなく、売上管理、ネットショップ対応、事務作業の軽減といったメリットを店舗側に伝え、手数料分の価値があると感じてもらえるように努力する、としている。
「キャッスレス決済未導入店舗なので来店を見合わせたことがある」人が31.5%いるという調査結果を見た上で店舗側に感想を尋ねると、導入を検討しようと考えた店舗オーナーが増え、危機感が増したようだ。
そうした店舗側の危機感に対して、どのように課題を解消していくか。例えばこれまで課題とされていたキャッシュレス決済の入金サイクルは、従来の2週間から1カ月に1回といった例から、毎週や最短翌日といった早期の入金が実現してきている。
相対的に日本より手数料の低い米国でももっと下げるよう求める声も多く、インターチェンジフィーの上限を規制する国も多い。国によってはインターチェンジフィーを公開して、その結果フィーが低下した例もある。ただ、それに伴うサービス悪化の例があるともされている。他にもオーストラリアではクレジットカードの手数料を客側から徴収することも認められているなど、加盟店手数料をどのように位置付けるかは、その国の事情によってさまざまだ。
手数料問題はインターチェンジフィーだけが問題ではなく、複数の課題がある。クレジットカード以外にも電子マネー、コード決済と決済手段が多岐にわたる点も議論を難しくさせる。しかし、政府のキャッシュレス化推進と昨今の公共インフラに対する値下げ圧力を踏まえると、業界側には値下げに向けたさまざまな取り組みが求められるだろう。
コロナ禍による世の中のリモート化で、店舗側にはオンライン対応や非接触の持ち帰りといった対応が強いられ、キャッシュレス決済対応によるコスト負担も厳しさを増す。
店舗オーナーへの調査では、キャッシュレス決済導入で「特に感じたデメリットはない」という声が35.2%となっていた。Squareでは「希望の持てる数字」としており、手数料の問題などで二の足を踏んでいる店舗も、同様にデメリットがない可能性はある。ただ、6割以上が何らかのデメリットを感じているともいえ、キャッシュレス決済を推進するのであれば、こうしたデメリットを解消する取り組みを、業界だけでなく社会全体として取り組む必要があるだろう。
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