NTTドコモの決済サービスは、これまでdカードとdポイントが中心だったが、コード決済を導入することで「d払い」に注力している。コード決済はソフトバンク系列のPayPayが急速に拡大しており、d払いはそこへの追従も含めてさまざまな施策を打ち出している。物量作戦で利用可能店舗を拡大するPayPayに対し、ドコモはどういった戦略を打ち出しているのか? プラットフォームビジネス推進部 ウォレットビジネス推進室長の田原務氏に話を聞いた。
ドコモの決済サービスは、dカードやd払いの決済と、dポイントの2種類に大別される。d払いだけでなく、dポイントも同社の決済サービスでは重要な位置付けだ。もともと「ドコモプレミアムクラブ」という名称で、ドコモの回線ユーザーのみに提供されてきたが、オープン化してドコモ以外のユーザーにも開放。共通ポイントとしてプレミアムクラブ時代の約5800万ユーザーから約7400万ユーザーにまで拡大した(※2015年12月から、「ドコモプレミアクラブ」は「dポイントクラブ」に変更した)。
マクドナルドやローソンといった大手チェーン店が加盟店となったことで、リアル店舗での利用者拡大が多いという。現在は大手チェーン店が多いdポイント。リアル店舗の加盟店は6万7400まで拡大しており、「時代の流れがマルチポイントとなっている」と田原氏は指摘する。1つの共通ポイントに絞るのではなく、複数の共通ポイントを採用するチェーンが増えたことで、加盟店の拡大にもつながっている。
大手や中規模のチェーンが中心だったdポイントだが、中小・個店に対してもdポイントを拡大する戦略だ。田原氏は、d払いとセットで展開していく方向性を示しているが、現時点では「本格的な展開には至っていない」という状況だ。
こうした戦略の一環で、リクルートとの提携が実現した。この提携では、リクルートの共通ポイントとしてdポイントを採用することも含まれているが、中小・個店での導入が増えているモバイルPOSサービスの「Airペイ」に対し、dポイントの取り扱いを開始する。d払い単独での導入に加え、Airペイへのdポイントのサポートを拡大することで、dポイント加盟店の拡大を目指す。
では、中小・個店はdポイントを導入する意味があるのか。これに対して田原氏は、dポイントの半数以上がリアル店舗で使われている点を強調する。dポイントは2000億ポイント以上となっており、そうしたポイントをリアル店舗で使う人が多いというわけだ。このため、dポイントの導入によってリアル店舗の利用拡大につながるというのが田原氏の考えだ。
例えば「楽天ポイントは、楽天市場で使われることが多い」(田原氏)が、ドコモの携帯利用で獲得したdポイントをリアル店舗で使う人が多いという特徴があるという。店舗側にとっては、dポイントの付与コストをかけずに、dポイントの利用者が店舗で買い物に使ってくれるというのはメリットだという。
また田原氏は、「dポイントはたまりやすい」ことをメリットに挙げる。そのため、多くのポイントをためて家電量販店で比較的高額なものを購入する人もいるそうだ。
これに加えて「販促手段にもつながる」と田原氏。中小・個店などでは、「新聞の折り込み広告が減って店舗近隣の居住者などにセールなどの告知をするためにいい媒体がない」という悩みがあるという。dポイント加盟店に対しては、近隣住民や過去の来店者にキャンペーン告知ができる機能を作っていきたいという。
特にリクルートとの提携で「Airシリーズ for docomo(仮称)」を用意する計画だ。これで過去の来店者にクーポンを配布するといった手段を提供できる。dポイントアプリやd払いアプリと連携したサービスも検討していく。
dポイント加盟店はポイントの利用に加えてポイントの付与も担うが、その場合、指定したポイント率分のポイントをドコモから加盟店が購入し、それを付与する形になる。基本的にはdポイントの付与率は1%となるため、1000円で10ポイントが付与されるが、加盟店はこの10ポイントをドコモから10円以上で購入する。これが手数料という位置付けだ。
この手数料を、加盟店が許容できるかが導入の分かれ目の1つで、「加盟店は費用対効果をよく見るので、送客がキチンとされたかどうかなどをきちんとデータで示す」と田原氏。これによって手数料以上のメリットがある点をアピールしていきたい考えだ。
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