店舗を変えるモバイル決済
インタビュー
» 2020年10月12日 15時30分 公開

モバイル決済で店舗改革:老舗銭湯「小杉湯」がキャッシュレス化で変わったこと 密を避けるために活用したツールとは? (1/2)

コロナ禍で、接触機会を減らせると改めて注目されているキャッシュレス決済。東京・高円寺で昭和8年から続く老舗銭湯「小杉湯」での取り組みを取材した。

[房野麻子,ITmedia]

 コロナ禍で、接触機会を減らせると改めて注目されているキャッシュレス決済。それを導入して、サービスの利用者に安心感を与えるとともに業績を上げている企業がある。

 東京都の高円寺で昭和8年から続く老舗銭湯「小杉湯」だ。普段、銭湯を使わない人間には、銭湯でキャッシュレス決済ができることが意外だったのだが、実は銭湯のキャッシュレス決済導入は早くから進んでおり、「小杉湯のキャッシュレス導入は業界内では遅い方」と、小杉湯の“CSO(チーフストーリーテラー)”である菅原理之氏はいう。

小杉湯 東京・高円寺にある老舗銭湯「小杉湯」とスタッフの方々(写真提供:リクルートライフスタイル)
小杉湯 小杉湯の“CSO(チーフストーリーテラー)”菅原理之氏。12年間勤めた外資系広告代理店から小杉湯に転職し、ブランディングからファイナンスまでさまざまな分野を担当している(写真提供:リクルートライフスタイル)

5000円の高級タオルがキャッシュレスだと売れやすくなった

 小杉湯がキャッシュレス決済システムとして、リクルートライフスタイルの「Airペイ」を導入したのは2020年7月。コロナ禍の緊急事態宣言下で、お客さんが安心して銭湯を利用できるように、現金の接触機会を減らす目的で導入した。クレジットカード、Suicaなどの交通系ICカード、iD、QUICPayなどの非接触電子マネー、QRコード決済など、主要なキャッシュレス決済に対応している。

 Airペイは、さまざまな種類の決済が使えることから選んだという。「銭湯はいろいろな人が来るパブリックな場所なので、いろいろな決済手段を用意した方がいい。ただ、ソリューション事業者それぞれに話をするのは大変だと思いました。Airペイはまとめて申し込めるのがよかった」(菅原氏)。決済事業者との手続きを、まとめてリクルートが代行してくれることに魅力を感じたという。

小杉湯 主要なキャッシュレス決済に対応。9月28日からAirペイが対応したことによりタッチ決済(NFC)も可能に(写真提供:リクルートライフスタイル)

 小杉湯で使われるキャッシュレス決済の半分以上が交通系ICカード。次にQRコード決済、非接触と続く。クレジットカードはそれほど使われないそうだ。年齢層は60代以上を除けば幅広いという。「20〜30代はQRコード決済、それ以上はSuicaですね」(菅原氏)

 キャッシュレス決済の割合は全体の2割程度だが、「導入後1カ月くらいは1割だったので、だんだん増えてきています」とのことだ。

 キャッシュレス決済で気になるのが手数料。これについては「売り上げの全てがキャッシュレスに置き換わるわけじゃないと思っていた。多くて3割キャッシュレスになっても、その手数料くらいだったら影響は小さい」(菅原氏)と納得している。小杉湯は入浴料の他に、アイスクリームやドリンク、タオルなどの物販も行っているが、5000円もする高級タオルがキャッシュレスだと売れるようになってきているという。それらの売り上げで手数料を回収でき、客単価も上げやすくなったという印象を持っているそうだ。

 「銭湯は日常だけと特別な体験だと思うので、小杉湯でしか売っていないアイスクリーム、700〜800円のクラフトビールなど、コンビニでは売っていないものを扱っています。キャッシュレスの導入と同時に扱う商品ラインアップを変えたので、売り上げの動きが全てキャッシュレス導入の影響とはいえません。ただ、少なくとも、200円のアイスが2週間で600本も売れることは、以前は起こり得なかったこと。キャッシュレスの相乗効果はあると思います」(菅原氏)。

「Airレジ」の画面を見せて混雑状況を可視化

 小杉湯では、売り上げ管理にAirペイと同じシリーズの「Airレジ」を2019年から採用している。Airレジ導入以前は手作業で管理していたが、Airレジで売り上げがしっかりデータとして蓄積され、どの時間帯にどれくらいお客さんが来るかが分かるようになったというメリットがあった。

 また、このAirレジの来客数データをSNSで発信することで、小杉湯の混雑状況をお客さんに知らせる取り組みもしている。

 「緊急事態宣言下で、密を避けながらも銭湯を使いたいという人がいました。小杉湯はいつも混雑しているというイメージがあって、どれくらい空いているか、いつだったら空いているかという電話がめちゃめちゃ掛かってきた。1つ1つ対応するのが非常に大変に感じる一方、お客さんが不安に思っていることも分かりました」(菅原氏)。

 混雑状況を可視化して公表する必要を認識し、最初はセンサーを付けて来客数をカウントすることも考えたという。しかし「売り上げ状況を見ていたとき、Airレジの来客数データの画面を出すのが一番早いと思って、1日前の画面のスクリーンショットを出すようにしました」(菅原氏)。

小杉湯
小杉湯 Airレジの売り上げと来客数データの画面を「#オフピーク銭湯」としてSNSで発信

 小杉湯の営業時間は、平日は15時30分から深夜1時45分まで。土日は8時から深夜1時45分まで。木曜日は定休日だ。開店の15時半直後は常連さんでかなり混む。17〜19時は夕食時なので少し空くが、20時頃からどんどん混雑し、深夜12時にピークが来る。来客数データの画面を出したことで、来客数が完全に平準化することはなかったが、「本当に不安に思った人は時間をずらして来てくれていたようです。空いている時間に行ってみよう、少し安心できるという声もTwitterで見かけました」(菅原氏)。

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