MVNOで“専用アプリ不要の通話定額”はいつ定着するのか? 直近の動向を整理する(2/2 ページ)

» 2021年03月25日 06時00分 公開
[佐野正弘ITmedia]
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「プレフィックス番号自動付与」が通話定額の本命

 ただ先にも触れた通り、各社の新料金プランは通話料そのものは下がっておらず、20円/30秒のままとなっている。卸料金の基本料が下がることを見込んでいるのであれば、通話料も同様に大きく下げてもよさそうなものだが、日本通信に追随して通話料を引き下げたり、通話定額サービスを提供したりする動きはまだ見られない。

 それは今後、プレフィックス番号を自動付与する仕組みをMNO側が提供することを見込んでおり、そちらを活用した通話定額サービスを提供したい狙いがあるためと考えられる。これは総務省の有識者会議「接続料の算定等に関する研究会」の議論の中でドコモから提案があったもので、KDDI、ソフトバンクも同様の機能を提供するとしている。

通話定額 「接続料の算定等に関する研究会」第28回会合のNTTドコモ提出資料より。同社は音声通話のネットワークの中でプレフィックス番号を自動付与することで、専用アプリ不要でMVNO独自の通話サービスを提供できる仕組みを開発するとしていた

 プレフィックス番号をネットワーク側で自動的に付与できるようになれば、MVNOが提供する音声定額サービスの利用に専用アプリを使う必要がなくなる。中継サービスを利用する点は変わらず、通話品質がVoLTE並みに向上するわけではないが、アプリなどが不要になれば先の着信履歴の“かけ間違い”のような問題が生じなくなるため、サービスの利便性が大幅に高まることは間違いない。

 ただこの場合、MNO側でプレフィックス番号を付与した後、中継電話サービスを提供する事業者の機器と相互に「接続」して音声通話を実現する形になることから、ネットワークの利用が卸役務から接続に変わってしまう。それに伴い契約をはじめさまざまな部分での変更が求められることから、導入するにしても一定の準備期間が必要と考えられる。

 だがMVNO側としては、ドコモの「ahamo」など2021年3月に投入されるMNOの低価格プランに急いで対抗しなければ競争力が失われてしまうという危機感があった。時間的にもプレフィックス番号付与の提供を待って新料金プランを提供するという選択肢を取れず、従来通り卸で新料金プランを組み立てるに至った結果、通話料が大きく変わるには至らなかったといえそうだ。

通話定額 フリービットのプレスリリースより。プレフィックス番号の自動付与をするには“卸”ではなく“接続”となるため、契約をはじめさまざまな部分で変化が生じると考えられる

 ただ、既にフリービットが2021年2月25日に、ドコモにプレフィックス番号自動付与に関する相互接続の申し込みを完了し、同社のMVNO支援パッケージ「freebit MVNO Pack」に、それを活用した音声サービスを3月から提供する予定だと発表している。そうしたことから今後、プレフィックス番号自動付与の活用が拡大することで、MVNOでも不便なく音声通話定額が利用できることが一般的になっていくかもしれない。

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