なぜ楽天モバイルがiPhoneを扱えるようになったのか? そのインパクトを解説する石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2021年04月24日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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アップグレードプログラムなど、サービス面では大手3キャリアへのキャッチアップも必要か

 他社と横並びになるなか、楽天モバイルは価格で勝負した。楽天 常務執行役員兼CMOの河野奈保氏が「楽天モバイルが取り扱うからには、どのキャリアよりも安くする」と語った通り、iPhone 12シリーズと第2世代のiPhone SEは、ドコモ、au、ソフトバンクの3社より安い。現時点では、それぞれの端末の最低容量の価格しか明かされていないが、他も他社より抑えてくるはずだ。Apple自身が取り扱うSIMロックフリー版よりは高いものの、キャンペーンでのポイント還元を加味すれば、楽天モバイルの方が割安になる。

楽天モバイル 4キャリアで本体価格最安を打ち出した
楽天モバイル SIMロックフリー版よりは高いが、キャンペーンを駆使すれば割安になる

 一方で、iPhoneの販売体制は、まだ大手3キャリアほどには整備されていないことも伺える。1つは、リアルな店舗での販売だ。楽天モバイルはオンラインと合わせて、店舗でもiPhoneを取り扱うが、全店舗に広がるわけではない。恐らく、これはiPhoneを販売する上での展示などに必要なレギュレーションが満たせない小規模な店舗があるためだ。

 また、楽天モバイルにはアップグレードプログラムに相当するような施策が、現時点では存在しない。河野氏が「本体価格で最安」を強調していたのは、恐らくそのためだろう。楽天モバイルにも、スマートフォンを下取りするプログラムは用意されているが、他社のアップグレードプログラムの利点は、2年後に免除される残債の額が、購入時点で明確なところにある。一定期間利用した際の負担額が見えやすいのが、アップグレードプログラムの魅力だ。

楽天モバイル 購入の負担を抑えるアップグレードプログラムは未提供。写真はKDDIの「かえトクプログラム」

 リーズナブルなiPhoneが足りないのも、課題の1つといえる。iPhone 12シリーズと合わせ、価格の安い第2世代のiPhone SEも取り扱っているのはいいが、iPhoneは最新モデルだけでなく、旧モデルを現役として価格を下げて販売するのが通例になっている。やみくもにミドルレンジのラインアップを増やすのではなく、1年前、2年前の最新モデルを値下げしながら価格レンジを広げるのが、Appleの戦略だ。型落ちモデルがないのは、大手3社と比較した際の弱点といえる。

 このように、まだまだ万全の構えとはいえないものの、iPhoneの取り扱い開始は、楽天モバイルにとって大きな最初の一歩になることは間違いない。少なくとも、iPhoneがないという理由で契約をちゅうちょしていたユーザーの背中を押す効果はある。UN-LIMIT VIの導入で新規契約者獲得が大きく伸びている楽天モバイルだが、その勢いに弾みをつけることになりそうだ。

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