店舗独自の「スマホ相談所」 なぜ総務省による設置を待たずに展開?元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(2/2 ページ)

» 2021年05月07日 18時00分 公開
[迎悟ITmedia]
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総務省の相談所は店舗の「脅威」になるかもしれない しかし……

 総務省のスマホ乗り換え相談所は、スーパーマーケットやデパートなど携帯電話の販売機能を持たない場所に設置されることも想定されています。家電量販店や併売店に設置された相談所なら「手続き(購入)はあちらへどうぞ」という誘導も期待できますが、販売機能を持たない場所に設置された相談所では、相談員が自分の店舗に送客してくれるとは限らないというジレンマを抱えることにもなります。

 同省が進めているスマホ乗り換え相談所のことを、店舗スタッフはどう思っているのでしょうか。率直な声を聞いてみました。

 本来の(総務省が設置する)相談所がお客さまに認知され、定着した後に不安を覚えます。店に行く前に相談所に立ち寄ることが習慣化してしまったらどうしよう、って思ってしまうんですよね……。

 私たちにはキャリア(店舗によっては上位の代理店)からプランやオプションサービス、端末販売に関する「ノルマ」を設定されており(参考記事)、当然それに従った提案をします。しかし、総務省の相談所で相談した結果を持ってきたお客さまは、恐らくその通りにオーダー(契約手続き)を行うと思われます。私たちの話を聞かない、という可能性も高まります。となると、今まで通りのノルマ設定では“永遠に未達”となる事態も想定しなくてはなりません。

 キャリアショップなら、契約や販売以外の手続きでも手数料を得ることはできます。一部のサポートも有償化していますから、やりよう次第ではこれからもやっていけると思います。しかし、販売に特化しているチャンネル(家電量販店、併売店、小規模専売店)では、店舗やコーナーの運営が一層厳しくなるかもしれません

 プランはもちろんですが、最近では端末でも「オンライン限定」が出てきています。当たり前ですが、私たちの店舗ではオンライン限定のものを売れません。オンライン販売では各種手数料を取らない(無料としている)キャリアもありますから、私たちの“立つ瀬”はだんだんと少なくなっています。

 販売店の立場からすると、営業や販売のスタイルを抜本的に見直さないとマズいです。

 積極的な営業ができなくなることで、販売目標の達成がより難しくなり、結果としては手数料や販売奨励金(インセンティブ)を獲得しづらくなる――スマホ乗り換え相談所によって営業活動が行いづらくなることへの懸念は少なからずあるようです。総務省の方針を受けて、独自の「相談所」を設ける量販店や併売店が出てきたのも、ある意味で「自己防衛策」の一環ともいえます。

キャリアショップ キャリアショップなら、一般的な販売店よりも手数料や奨励金を得られる機会が多い。ただし、オンラインシフトが一層進むと、キャリアショップも安泰とはいえない状況となる(写真はイメージです)

 ただ先述の通り、独自の「相談所」に対するユーザーの反応は今のところ“薄め”なようです。詳細が不明瞭なこともあり、スマホ乗り換え相談所が販売店にどのような影響与えるのか“読み切れない”というのが実情ともいえます。

 そんな中、こんなスタッフの声が印象に残りました。

 お店独自の「相談所」でも、総務省が置く相談所でも、どこでもいいんですけど、お客さまが満足できるサービスを提供することに重きを置けるような環境作りを進めてほしいと思います。

 現状、販売目標として「大容量プランの獲得」が比較的重めに掛けられています。大してデータ通信を使わないお客さまにも、大容量プランを優先して勧めざるを得ない状況は健全とはいえません。僕らも、心が痛みます……。

 お客さまの満足を優先すると、短期的には手数料や奨励金の減少で売り場面積の縮小や人員の削減といったマイナスの影響が起こる可能性は否定できません。自分の仕事が失われる可能性もあります。

 それでも、総務省が最近やっている取り組みは、ムリのありすぎる販売目標設定や、それにひも付く手数料や奨励金の体制が生み出したゆがんだ販売体制を一掃するチャンスでもあると思います。キャリアや販売代理店は「抜け道」を探すのではなくて、これを機に知恵を出し合って“真っ当な商売”ができる仕組みを構築してほしいと思っています。

 どのような形であれ、総務省が設置するスマホ乗り換え相談所は、携帯電話販売店に大きな影響を与えることは避けられそうにありません。その影響をポジティブに捉えるのかネガティブに捉えるのか、スタッフによって見方はさまざまです。

 相談所の登場で、どのように販売現場が変化していくのか――しばらく目が離せません。

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