オウガ・ジャパン河野氏に聞くOPPOの日本戦略 “惨敗”からSIMフリーAndroidでトップに上り詰めた要因は?SIMロックフリースマホメーカーに聞く(2/3 ページ)

» 2021年07月05日 11時21分 公開
[石野純也ITmedia]

使用率20%弱でもおサイフケータイは必須

―― 売れ筋の価格帯のミドルレンジモデルがおサイフケータイや防水・防塵(じん)に対応し、しかも日本専用モデルというところには驚きました。

河野氏 お客さまが本当に欲しい製品かどうかは必ず検証しています。例えばおサイフケータイもそうで、利用率は20%弱というデータがあります。R15 Proを開発するときにも、この利用率は議題に出ました。私は、「5人に1人しか使わないでも、おサイフケータイを搭載しない限り活路はない」と言ったのですが、当然反対意見も出てきます。「1週間で言えば1日しか使わない機能なんていらない」と言われてしまう。そういったことをグローバルでかんかんがくがくとやっています。

 おサイフケータイについては、頭でっかちにデータだけ見れば確かにいらないという結論になるかもしれません。ですが、日本の真のニーズは、それがあることで長く使えると思えることや、家族に勧められというところにあります。これがあって、初めて安心安全の土俵に上がれるということなんです。20%しか使わないかもしれないが、それでもマストであるという説明をして、ようやくおサイフケータイと防水を入れることができました。

―― そんなポジショニングで登場したReno Aシリーズですが、3世代目になるReno5 Aでは、どのような点を主に強化したのでしょうか。

OPPO コロナ禍のライフスタイルを意識して開発したというReno5 A

河野氏 ハードウェアの進化はスペック表を見ていただければ分かりますが、数字で伝わりにくいソフト面での話をすると、コロナ禍になり、本当のニーズとは何なのか、本分はどこにあるのかを探求したとき、2つの答えがありました。1つは健康意識の高まり、もう1つはおうち時間の視聴環境の充実へのニーズが浮かび上がってきました。

 コロナで地元に帰れていない。年に数回、実家に帰っていたときなら、LINEでスマホの写真を送ればよかったのですが、コロナで帰れないと、「子どもの写真だけでなく、お前の顔もみたい」となります。それを解決するため、アウトとインで同時に撮影できる機能を搭載しています。この機能、ブロガーの方にいいと言われますが、どちらかと言うと、コロナ禍で距離を置かざるを得ない状況で何ができるのかを考えた結果です。

 カメラではネオンポートレートも推しています。人に会えないからこそフォトジェニックにしたい。よく、記憶色や表現色という言い方がありますが、記憶色でフォトジェニックに一瞬一瞬を切り取ったものを思い出にしたい。そのために、ネオンポートレートという機能を盛り込んでいます。

 OPPOは、「人間のための技術で、世界をもっとあたたかく」というブランド理念をあえて言葉で説明しています。グローバルでOPPOはなぜスマートフォンを作っているのかを議論しました。アウト・イン同時撮影機能やネオンポートレートは技術ですが、この機能を搭載したからといって、爆売れするわけではありません。コロナ禍でニーズが高まっているから入れる。技術は人のためのもの、人のための技術に温度があるとすれば温かいというところから定義したブランド理念です。後付けかもしれませんが、これらはそこから外れることがない機能だと思っています。

今後、OPPOのスマートフォンは全て5G対応に

―― では、3機種目のA54 5Gはいかがですか。

河野氏 ぶっちゃけると、あまりしゃべることがありません(笑)。Aシリーズは堅実な方向けの端末で、そこはA54 5Gも変わっていません。今回のReno5 Aは、6万円台の端末に載せるようなカメラを4万円台のスマートフォンに入れていますが、そこまで使わないという方や、おサイフケータイや防水もいらないという方は一定数います。基本のスペックさえしっかりしていればいいという方ですね。そういう質実剛健な方に向けた端末です。

―― あまり語ることがないということですが、Aシリーズとしては初めて5Gに対応しています。今後は、このクラスも5G対応はマストになっていくのでしょうか。

河野氏 そうです。今後、われわれが出すスマートフォンは全て5G対応です。どうしてかというと、以前の発表会でお話ししたように、われわれは5Gの規格が制定される前からコンソーシアムに入っていた、アルファメンバーの1社です。A54 5Gには「Snapdragon 480」が搭載されていますが、他のメーカーが提供を始めるのは秋で、アルファベンダーということもあり、この時期の投入が許されました。それが示すように、Qualcommとは親密に開発をしていますし、初期から5Gの開発にも携わっています。われわれだからこその5G端末で、先行者利益はしっかり取っていくつもりです。

―― 他のメーカーだと、5Gを外してコストダウンを図るところもありますが、そういった戦略は取らないということですね。

河野氏 会社としてはあまりやりたくないですね。OPPOがなぜ日本でビジネスを始めたのかというと、もちろん営利企業なので利益は取りにいきますが、あえてお客さまが欲しいと思っているものを外してまで、製品を出す意味はないと考えています。結果として、A54 5Gも5Gに対応しています。

 他社から見るとズルいと思われてしまうかもしれませんが、サプライチェーンは非常に強力です。世界4位のメーカーなので、Qualcommと共同開発もできます。実際に、タッグを組んで開発してデリバリーして実装するところまでを、一気通貫でやっています。チップベンダーとの強力なタッグもあり、地政学リスクが極めて低い供給体制を確立しています。

―― 3シリーズある中で、ボリュームが大きいのはやはりRenoシリーズでしょうか。

河野氏 Reno5 Aはまだ発売してから2週間しかたっていない(インタビューは6月17日に実施)ので、まだデータが出ていませんが、Reno3 Aに関しては、他モデルも含めて前年比で3倍に成長しています。結果として、BCNの調査で3四半期連続1位という結果になりました。これは、自分探しの旅を今までやってきた結果だと考えています。

―― 海外には、Renoの種類も多く、バリエーションが豊富です。日本ではこの3シリーズ以外に広げていくことはあるのでしょうか。

河野氏 まずは3つだと思っています。これを増やしたところで、真のニーズにたどり着けるのか。確かに、中国ではめちゃくちゃ数が出ていますが、中国はそもそも人口が多い。単純計算で日本の10倍だとすると、10倍のラインアップがあってもいいわけです。また、好みの数は人間の数だけありますが、こと日本に関して言えば、好みが偏りやすい傾向もあります。これがいいというものに、ダーッと一斉に行くことがあります。

 われわれとしてもスケールメリットは出したい。数が増えてしまうとスケールメリットが出しづらくなってしまうので、最適な価格帯で最適な端末を届けるために、3機種ぐらいがいいという経営判断になっています。

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