オウガ・ジャパン河野氏に聞くOPPOの日本戦略 “惨敗”からSIMフリーAndroidでトップに上り詰めた要因は?SIMロックフリースマホメーカーに聞く(1/3 ページ)

» 2021年07月05日 11時21分 公開
[石野純也ITmedia]

 日本のSIMフリー市場でAndroid端末のシェアトップに躍り出たOPPO。Reno Aシリーズのように日本市場に特化した専用モデルが好評な他、廉価なエントリーモデルを求めるユーザー向けにはAシリーズを用意している。一方で、フラグシップモデルのFindシリーズも、2019年の「Find X」から3年連続で投入。販売台数は限定的だが、カメラやディスプレイなどに凝縮された技術力の高さで、OPPOの存在感を高める役割を果たしている。

 そんなOPPOが、2021年の夏モデルとして投入するのが、フラグシップモデルの「Find X3 Pro」と、日本専用モデルの「Reno5 A」だ。また、5月にはエントリーモデルとして日本で初めて5Gに対応した「A54 5G」を発表しており、キャリア各社やMVNOが取り扱っている。2020年に発売した「Find X2 Pro 5G」はau専売だったが、Find X3 Proはauに加え、SIMロックフリーモデルとしてOPPO自身でも販売を行う。

OPPO フラグシップモデルの「Find X3 Pro」と日本専用のミッドレンジモデル「Reno5 A」を投入するOPPO

 新規参入を果たした2018年から徐々にシェアを伸ばし、販路を広げているOPPOだが、同社はどのような戦略で日本市場に臨んでいるのか。OPPOのスマートフォンを日本で展開するオウガ・ジャパン専務取締役の河野謙三氏に話を聞いた。

Find X3 Proの顕微鏡カメラで知的好奇心をかき立てる

―― 新モデルとして、Find X3 Pro、Reno5 A、A54 5Gの3機種を投入しています。それぞれの狙いを教えてください。

OPPO オウガ・ジャパン専務取締役の河野謙三氏

河野氏 3ラインアップ構成は以前から続いていましたが、今年(2021年)もそれを踏襲しています。一番上がFind、真ん中がReno、一番下がAシリーズで、それぞれ価格帯が全く違います。Findは11万円を超えていますが、Renoは4万円台前半、Aシリーズは2万円台、3万台のものです。ただ、特に価格帯で分けているというわけではなく、それぞれに必要な機能を入れたら、結果的にこの価格になったということです。

 まずFindシリーズですが、OPPOが有する知的財産や特許を詰め込んだ、テクノロジーのショーケース的な役割を担っています。Findが欲しい方は、最先端の技術や最新OS、最新のソフトウェアに触れてみたい方が多い。知的探求心が旺盛な層に選んでいただけています。Find X3 ProはFindシリーズ10周年ということもあり、デザインに力を入れ、角が取れたぬめっとした宇宙船のようなデザインになっています。

OPPO OPPOが持つ最新テクノロジーを盛り込んだFind X3 Pro

 特徴は10bitのフルパスです。Find X2 Pro 5Gでも10億色の表示はできましたが、今回は撮影の入り口から表示の出口まで、全てをフルパスの10bitでつないでいます。背面のカメラは、広角と標準の両方にソニー製の全く同じセンサーを採用しました。一般の消費者がどこまで気付くかは分かりませんが、センサーが異なっている場合、若干色味が変わってしまうんです。Findをお使いの方は、そういうところにこだわる方が多い。そこで、同じセンサーを使って、同じ色表現を楽しめるようにしています。

 顕微鏡も世界で初めて搭載した機能で、30倍から60倍まで拡大できます。もうすぐ季節が夏に入ってきますが、例えば夏休みの宿題として朝顔を観察したいといったときに売りになる機能です。他社を見ると、高倍率ズームにこだわるところも多いのですが、われわれは今回、ミクロの世界に目を向けてみようと思いました。望遠は目がいいは人なら肉眼で見えますし、想像もできますが、ナノの世界は肉眼で見えません。デバイスを使って初めて見えてくる世界で、好奇心をかき立てられますし、Findをお使いの好奇心旺盛な方とも相性がいいと思っています。

OPPO 他のスマートフォンにはない機能として顕微鏡カメラを搭載している

日本初号機のR11sは惨敗、日本市場撤退の危機も

―― では、Reno Aシリーズはいかがですか。

河野氏 私どもが初代の「Reno A」を発表したのが2年前のことです。昨年(2020年)は「Reno3 A」が続き、今年はReno5 Aを用意しました。この3機種は、日本でしか販売していないモデルで、ゼロベースで開発した日本専用のスマートフォンです。OPPOはグローバルなメーカーで、さまざまなラインアップが本国にあります。その中から特定の市場に合いそうなものをピッと持ってきて、ローカライズをしてアンテナ設計を変えるというのはグローバルメーカーがよくやることです。ですが、Reno5 Aは、世界のどこに行っても売っていません。日本でしか販売しないモデルだからです。

 どうしてこんなことをやっているのかというと、話は2017年に日本市場に進出したときにさかのぼります。最初の発表会は2018年1月に開き、そこで「R11s」を投入しました。R11sは、当時、東南アジアで“爆売れ”していたモデルです。アジアの人がみんな使っているR11sを日本に持ってくれば、日本でも爆売れ間違いなし――そう思っていたら、結果は惨敗でした。そこで、日本にお住まいの方は、どんな動機でスマートフォンを買うのかを調査しました。

 市場調査の結果によると、iPhoneを買っている方は6割から8割が次もiPhoneを買います。AQUOSやXperiaも4割ぐらいはその傾向がありますが、これがGalaxyになると特性が変わります。つまり、アメリカから来たiPhoneと、日本のメーカーが作ったAQUOS、Xperia以外は、割とコロコロとメーカーを変えている。とすると、何をフックにスマートフォンを変えるのか。ここからわれわれの顧客探しの旅が始まりました。

 「R15 Pro」では、おサイフケータイと防水をつけ、これがニーズだと思い発売しましたが、値段が7万円とSIMフリーのスマートフォンとしては高く、これもまた売れませんでした。ここでOPPO Japan(現オウガ・ジャパン)は経営危機を迎えます。このままだと、日本市場から撤退になってしまう。真のニーズを捉えていないのではないかと自問自答した結果生まれたのが、Reno Aでした。防水におサイフケータイをつけ、なおかつ本体が薄くて軽い。価格も破格で、税別で3万6800円に設定しました。

 当時はSIMフリーがほとんどだったにもかかわらず、テレビCMも打ちました。これもやけくそになったわけではなく、市場調査の中でお客さまが安心や安全を欲していたことが分かったからです。よく見かけるものが欲しいというニーズが、絶対的にあった。その際に、幸いにも名前が一緒だった指原莉乃さんにご登壇いただきました。取引先やお客さまから、Renoはコスパがいいと言われますが、われわれとしては安いとは思っていません。日本のスマホが、基本的に高いからです。われわれが行き着くのは経営理念の「本分」で、自らに与えられた責任を全うするというのが本分の理念です。

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