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» 2021年08月28日 06時00分 公開

手数料だけでは成り立たないスマホ決済 それでも各社が注力する理由とは?石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

スマホ決済が転換期を迎えている。PayPayは2022年10月から決済手数料の有料化に踏み切る。対する楽天グループの楽天ペイは、PayPayの有料化に乗じた形で中小店舗に対する手数料を1年間無料化する。KDDIはグループの金融事業との連携を強化する方針を示した。

[石野純也,ITmedia]

 スマートフォンの画面に表示したQRコードやバーコードで決済を行う「スマホ決済」が、転換期を迎えている。引き金を引いたのは、ソフトバンクのグループ会社でもあるPayPayだ。同社は、中小店舗の導入を促進するため、サービス開始時からユーザーがコードを読み取る方式を導入した店舗の手数料を無料にしていたが、9月からついに有料化に踏み切る。

 対する楽天グループの楽天ペイは、PayPayの有料化に乗じた形で中小店舗に対する手数料を1年間無料化する。KDDIのau PAYや、ドコモのd払いは手数料改定の動きを静観しているが、KDDIはグループの金融事業との連携を強化する方針を示した。ここでは、PayPayの手数料改定から続く一連の動きをおさらいしつつ、各社のスマホ決済が目指す将来像や、その課題を読み解いていきたい。

ついに中小店舗への手数料を導入するPayPay、対する楽天ペイは無料化で拡大を狙う

 PayPayは、10月1日から中小店舗に対する決済手数料を導入する。同社の副社長、馬場一氏が「クレジットカードの約半分で、国際水準で見ても引けを取らない」と強調するように、手数料水準は業界最低水準を打ち出した。通常時の手数料1.98%、店舗運営用ツールの「PayPayマイストア ライトプラン」(月額2178円、税込み)を利用すると、手数料率は1.6%まで下がる。同じスマホ決済では、ドコモのd払いやKDDIのau PAYが2.6%、楽天の楽天ペイが3.24%。有料化に伴い、一足先にリーズナブルな手数料体系を発表した格好だ。

PayPay 10月から、ついに中小加盟店の手数料を有料化するPayPay。その料率は1.6%か1.98%になる
PayPay 2.6%のd払い、au PAYや、3.24%の楽天ペイより格段に低く設定されていることが分かる

 もっとも、手数料導入に伴いキャンペーンも始まるため、最大6カ月間は実質的に無料になる中小規模の店舗は少なくない。期間中に上記のPayPayマイストア ライトプランに加入した場合、決済額の3%が店舗側に戻されるためだ。1法人あたりの上限が100万円で、およそ3333万円の売り上げまではカバーされる。手数料率が1.6%の場合、6250万円の売上にかかる手数料がちょうど100万円。ザックリ言えば、PayPayでの売り上げが月1000万円以下であれば、あと6カ月は無料キャンペーン中と変わらず利用できる。中小店舗の離脱を抑えつつ、PayPayマイストア ライトプランへの加入を促すキャンペーンといえそうだ。

PayPay 10月から6カ月間、決済額の3%が振り込まれる。売り上げ次第では、PayPayに支払う手数料を上回るキャッシュバックを受けられるキャンペーンだ

 もともと、手数料の有料化は公言していたPayPayだが、サービス開始から約3年で中小店舗の開拓が十分進んだことが背景にありそうだ。ユーザー数は累計で4100万にまで拡大。加盟店数も340万カ所を超え、決済取扱高は四半期で1.2兆円、決済回数は7.9億回と順調に伸び続けている。スマホ決済単独での取扱高や決済回数を開示している事業者が少ないため、厳密な比較はできないが、ドコモのd払いが取扱高2660億円のため、利用可能な店舗数以上の差が開いていることが分かる。こうした数値を公表できるのも、スマホ決済のシェアで首位になった自信の表れといえる。

PayPay サービス開始から約3年でユーザー数は4100万、利用可能な店舗は340万カ所まで拡大した
PayPay 決済額、決済回数ともに、21年に入ってから大きく拡大している

 PayPayの手数料導入に伴い、競合他社も改定に乗り出した。先陣を切ったのが楽天ペイメントの運営する楽天ペイ。同社は、中小の新規加盟店の決済手数料を実質0円にするキャンペーンを10月1日から開始する。「まず1年間、楽天ペイのよさをしっかり実感していただきたい」(楽天ペイメント 楽天ペイ事業本部 副本部長 諸伏勇人氏)というのが、その狙いだ。

PayPay 楽天ペイも、中小店舗の決済手数料を実質0円にするキャンペーンを開始する

 楽天ペイの利用可能カ所は500万と多いが、ここには楽天Edyや楽天ポイントカードのみの店舗も含まれる。サービス開始当初から大規模な営業部隊を投入しつつ、手数料無料を武器に中小加盟店を積極的に開拓していたPayPayとは異なり、楽天ペイの導入先は比率で言えば大手が多い印象を受ける。楽天ペイ事業本部 本部長の小林重信氏が「このタイミングだからこそ効率的に増やせる土壌がある」と語っていたように、有料化に伴って離脱するPayPay加盟店を狙い撃ちにすることで、手薄だった中小加盟店を増やす思惑もありそうだ。

PayPay 楽天ペイ、楽天Edyや楽天ポイントを含めた決済可能な店舗は500万。ただし、どちらかと言うと、中小店舗はPayPayに及んでいない印象も受ける

 一方で、キャンペーン以外の手数料は3.24%から変えておらず、「1年後以降のことは、そのときの状況を踏まえて検討したい」(小林氏)と述べるにとどまった。楽天ペイは、以前から「持続可能な、地に足の着いたインフラとしてやっていく」ことを公言しており、他社の手数料改定には追随していなかった。キャンペーン終了後の動向次第だが、PayPay並みの手数料引き下げは実施しない可能性も残る。

 同様に、auじぶん銀行をはじめとする自社の金融サービスとの連携を強化したKDDIのau PAYも、手数料競争には何らかの対策を講じていく方針だ。KDDIの金融決済ビジネス部長 長野敦史氏は、「現状はコロナの影響も続き、加盟店はご苦労されている。対策は検討しているので、詳細が決まり次第早期に発表したい」と語る。au PAYはPayPayやd払いに合わせ、9月末まで中小店舗の手数料を無料にしているため、終了までの間に何らかの発表があると見ていいだろう。

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