店舗を変えるモバイル決済

楽天ペイ、中小店舗の決済手数料を1年間無料に 楽天ポイントが集客の強みに

» 2021年08月25日 21時15分 公開
[田中聡ITmedia]

 楽天ペイメントは、年商10億円以下の新規加盟店を対象に、「楽天ペイ」のコード決済の手数料を、2021年10月1日から2022年9月末まで実質0円とするキャンペーンを展開する。対象店舗が8月25日以降に申し込むと、コード決済の手数料を上限なしで1年間、全額キャッシュバックする。

 あわせて、キャンペーンを適用した店舗に対し、2022年9月分まで、月1回自動入金される売上金の振込手数料を実質無料とするキャンペーンも実施する。これまで、楽天銀行以外の口座を振込先にしていた場合、振込のたびに手数料が発生していたが、キャンペーンでは他の銀行でも手数料が発生しない。

楽天ペイ 新規で申し込んだ中小店舗のコード決済手数料を、2021年10月から1年間無料とする

 同じく2021年10月1日から2022年9月末まで、コンシューマー向けのキャンペーンも展開する。楽天ペイアプリを使っていてキャンペーンにエントリーすると、楽天ペイで実店舗にて支払った1カ月分の支払い額を、抽選で500人に全額ポイント還元する。還元額の上限は1人あたり1万ポイント。

 楽天モバイルとの共同キャンペーンも実施する。楽天ペイアプリ利用者がキャンペーンにエントリーした後、楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT VI」に新規で申し込み、「Rakuten Link」アプリを利用すると、申し込み当月と翌月の楽天ペイ支払い額から20%分のポイント還元を受けられる。こちらの上限は1000ポイント。

楽天ペイ 楽天ペイアプリのコンシューマー向けキャンペーンも実施する

 加盟店とコンシューマー向けのキャンペーンを同時に展開することで、キャッシュレス決済の普及を促進しつつ、中小店舗の加盟店開拓を強化していく。

 楽天の決済サービスで同社が強みに挙げるのが「楽天ポイント」だ。年間ポイント発行数は約4700億に上り、「ほとんどのユーザーが楽天のサービスを並行して使っている」と楽天ペイメント 楽天ペイ事業本部 本部長の小林重信氏は言う。ポイントの利用率は「100あるとしたら90以上は使われている」(小林氏)というほど高い。もちろん楽天ペイアプリとも連動しており、アプリから楽天ポイントのバーコードを提示してポイントをためたり、決済画面からワンタッチでポイントを払ったりできる。

楽天ペイ 楽天ペイアプリからポイントをためたり使ったりできる。決済画面で「すべてのポイント/キャッシュを使う」にチェックを入れると、楽天ポイントと合算して支払える

 楽天の決済サービスは楽天IDという会員基盤を軸に、原資となる支払い手段はクレジットカード、銀行、電子マネーなどを採用、認証方法もバーコードやFeliCaを採用するなど、オープンな戦略を取っている。

楽天ペイ 決済に使う原資や手段は、オープンの戦略で幅広い選択肢を用意する

 楽天ポイントが利用できる加盟店は500万カ所に上り、楽天ペイから発行できるSuicaの加盟店として100万店が加わる。楽天ペイ/ポイントの加盟店開拓では生活動線を意識しており、Suicaと連携したのもその一環となる。そんな中でまだ開拓の余地があるのが中小店舗であり、今回の手数料無料キャンペーンにつながった。

 楽天インサイトの調査によると、楽天ペイが使えるようになったことで、来店頻度が増えたユーザーは44%に上る。また、楽天ペイが使えることがきっかけで初めて訪れた店舗があるユーザーは26%に上る。こうした「ロイヤリティーの高い新規ユーザーを取り込むお手伝いをしたい」と小林氏は言う。

楽天ペイ 楽天ペイが使えることで来店頻度が増えたユーザーが一定数いる

 一方、楽天ペイの決済手数料は現在3.24%だが、競合のPayPayが10月以降に導入すると1.6%または1.98%の手数料と比較すると高い。決済手数料無料キャンペーン終了後に3.24%に戻すかは「そのときの状況を踏まえて検討する」(小林氏)とのことだが、「キャッシュレス決済は発展途上なので、まず1年間(便利さを)実感してほしい」との考え。

 「楽天ポイントの年間4700億ポイントは無料でばらまいているものではなく、購買行動の結果、取得している」ことから、加盟店になることで購買意欲の高いユーザーが来店し、売り上げのアップが期待される。「(手数料)負担に対する対価としてご納得いただけるよう内部で話している」(同氏)

 加盟店の獲得目標は開示していないが、「年商10億円以下だと中小店舗の約90%をカバーできる。全ての店舗に申し込んでもらえるよう全力を尽くす」と楽天ペイメント 楽天ペイ事業本部 副本部長の諸伏勇人氏は話す。

 他社が手数料無料を打ち出す中で、楽天ペイでは手数料を有料としてきたが、なぜこのタイミングで無料化を打ち出したのか。小林氏によると、「持続可能な、地に足をついた決済サービスを展開していく」という方針は変わらないものの、他社が手数料を有料化するタイミングであえて無料にすることで、これまで取り切れていなかった中小店舗を獲得したいという狙いが見え隠れする。ただ、そこに大きなコストをかけることはしない。

 2021年度第2四半期における楽天ペイメントの営業利益は−5億円だが、今回のキャンペーンで獲得活動は加速させるものの、「売り上げやコストのレベル感は大きく変化しない」(小林氏)とのこと。これは、営業活動もオンラインに軸足を置いているため。中小店舗の開拓に何千人という営業スタッフを投下する考えはなく、楽天グループの各サービスで今回のキャンペーンを告知していく。

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